第6話 双方の思い
学校から戻ったエレンたちは、急いで司令官室へ向かった。重々しい雰囲気の扉が見えてきたところで、ちょうどリッチがその部屋から出てきたところに遭遇した。
「リッチさん!」
「あぁ、皆様おかえりなさいませ。丁度セラヴィ様に、大方のことを報告し終えたところです。後の詳細や今後の対策については、皆様とお話がしたいとのことですので」
「ありがとうございます」
「どうぞ、最高司令官がお待ちです」
そう言って、リッチが扉を開き、全員に中へ入るよう促す。エレンを先頭に、司令官室へ入っていく。部屋に入ると、奥で一人の女性が待っていた。透き通るような水色にも似た銀髪に、ローズピンクの瞳を持つ、落ち着いた雰囲気の女性。
彼女こそ、このガーデンを率いるリーダー、最高司令官のセラヴィだ。セラヴィは、学校から帰ってきたメンバーを見ると、安心した表情で迎えた。
「…待ってたわみんな、おかえり。リッチから大体の話は聞いたけど、大変だったわね…セーラとファニーまで…」
「はい…まさか学校まで襲撃されるとは、思ってもいませんでした」
「学校全体じゃなく、『Sクラスだけ』だったのが救いでした」
「本当よねぇ…これが全校規模だったら、いくらガーデンに所属している学生がいると言っても、とても手に負えなかった」
「クラスどころか、狙いはエレン姉ピンポイントやで!絶っっ対許せへんわ!」
「うーん…でも結局あたしたちも襲われてるから、最終的にはクラスだよね…?」
「ん?……あ、そか!」
「あはは…」
「それと助かったのは、あと数日で長期(夏休み)に入るってことね」
「そうだ!もうすぐ長期じゃん!」
「…ターボ、なんでそれが救いになるかわかってる?」
「え?学校休みじゃ…ぐふぅっ!!」
「確かに休みだけれど、そうすれば、この施設でみんなを保護できるからよ。特にエレンは」
「……はい…」
「つか、なんでエレンがこんなに狙われるんだ? 前も任務先で拉致られそうになったこと、あったよな?」
「あんた本っ当にわかってないわね!エレンが美人だからに決まってるでしょう!?」
「シェリー…そんな堂々と恥ずかしいこと言わないで……」
「…本当の理由は──…だからなんだけどね…」
「「「え?」」」
「あぁ…なんでもないわ。それより、みんな疲れてるでしょう?ゆっくり休みなさい」
そう微笑んで、セラヴィは報告書を預かり、エレンたちが部屋を出ていくところを見送った。しかし、セーラだけは残して。
「…セーラ、あなたはエレンの秘密を知っているのね? 出来る限り教えてほしいのだけれど…いいかしら?」
「全部は…話せないです……でも、お姉ちゃんが『写し子』なのは、ちゃんと理解しています。今日襲われたことは、本当にびっくりしたけど…」
「えぇ、そうね……セーラ、あなたも怖かったでしょう…?」
「私は大丈夫です!…私より…一番不安になってるのは、きっとお姉ちゃんですから…」
「…そうね……ありがとう。また話せるようになったら聞かせてね。今日はあなたもゆっくり休みなさい」
「はい、失礼します」
セーラも部屋からいなくなった後、司令官室に繋がっている隣の部屋から、一人の男が入ってきた。ベージュに近い灰色のさっぱりした短髪で、真面目そうな青年。彼はガーデンの副司令官で、セラヴィのサポートを務めているセイロン。
誰かと通信していたのか、ちょうど花盤をしまっているところだった。
「あら、お疲れさま、セイロン」
「もうすぐで帰ってくるよ。あいつら」
「そう……何か掴めたかしら…?」
「あんまり…ってところだな。これといった報告が無いから」
「やっぱり、難しいところ…ね。エレンのこともあるから、できれば最悪の事態にならないといいわね…」
「そうだな…エレンについては、恐らく"あいつ"がよくわかってるだろうし、一番心配しているから、少しは任せた方がいいかもな。俺とセラヴィの二人じゃあ、今の件だけでも手がいっぱいだろう」
「…そうね……」
セラヴィは不安そうにうなずくと、パノラマのように大きく開けた窓の外を眺めた。下を見ると、施設に向かって歩いてくる数人の影。その先頭を歩いている黒髪の青年を、心配そうに見つめた。
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