第3話 物憂げな朝

レイリル王宮

エルア視点


 その少女、エルアは夢を見た。


 一つはプラチナブロンドともいえる髪を後ろで簡単に結び、真紅の瞳を持った齢10ほどの少女が王宮の門で憲兵と話し込んでいる夢。


 一つはエルアが王宮の一室で大勢に向かい抗議をしている夢。


 一つは何処かに向けて王国軍が大規模侵攻をしている夢。


 その夢の中で、エルアは願う。最後の夢は実現してくれるな、と。


 エルアは目を覚ました。


 時は7時を過ぎた辺りか、心地よい朝日が部屋を照らす。


 今日の夢は…。


 エルアもとい、レイリル王国第4王女エルア・レイリルは代々引き継がれている能力、『予知夢ジュラメント』があった。

 先に生まれた者から順に力が強くなっていく能力ジュラメントは、エルアのものはだいぶ弱くなっていた。

 先代国王は全ての出来事を予言していたそうなのだが、エルアは良くて確率は2分の1だった。


 でも、あの子は可愛いなぁ…。


 エルアは夢に出てきたあの少女を想い、微かに頬を染めていた。


 コンコンコンッ。


「エルア王女、御朝食をお持ちしました」


 キィというドアの開閉音と共に、何人かの従者がエルアの部屋へ入ってきた。


「ありがとう」


「本日の朝食はダージリンティーと木苺のクッキー、シリアルのブルーベリーソースがけでございます」

「それと、アルファー第3王子からこれを」


 1人の従者が差し出したそれは、日記帳だった。レイリル王族は予知夢ジュラメントがあるため、その内容を日々日記帳に記していた。


 エルアは今日の夢の内容を”昨日と同じでした。”と書き記し、朝食を食べ始める。

 例の少女のことは記さなかった。また、アルファー兄様にこれはお前の想像じゃないと叱られそうだったから。


「朝食、美味しかったわ、それでは」


 朝食を終えたエルアは用意されていた衣服に着替え、髪型を整えた。


 鏡の前に立ち、自分の姿を見つめる。


 レイリル王族特有の銀髪と珍しい深緑の瞳が目に映る。

 別に自分の姿は嫌いではない。ただ、瞳の色は好きではないけれど。


 部屋を出て、アルファー兄様の執務室へ行く為に王宮の廊下を歩く。


 今日の王都は雲五割といったところ。いまいちパッとしない天気だ。


 少し物憂げな顔で廊下を歩いているとライフルを肩にかけた王国軍人と目が合った。


「おはようございますッエルア第4王女様」


「おはよう」


 背筋を地面に対して直角に伸ばし全身を板のように張った完璧な敬礼。


 エルアは彼を一瞥し、内心ため息をついた。

 最近の王国軍人は少し苦手だ。見てるこっちが緊張しそうで。


 …王族になりなくてなった訳じゃないのに。


 最近のエルアの心の中は、これが口癖だった。






追記

場所と視点を書き忘れていましたね。


…本作は二視点並立が特徴であってほしいというのにorz

 

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