10
「えー……できないよ…」
あたし、超困った顔。
「そこを何とかっ!!」
目の前で、浅井君を始めとして。
ボーカルの
ベースの
ドラムの
どうしてか…と言うと…
「めっちゃかっこええって。俺のギターとるーのバイオリンでのソロ」
「…かっこよくても、あたしにはできないの」
「なんでやねん。やってみな分かれへんやん」
『FACE』しか所属していない同好会なのに、空いてる教室を部室として貸してもらえてるあたし達。
そこには、八木君が家から持って来たというドラムセットと、浅井君と臼井君がそれぞれ持って来たアンプもある。
あと、ついでのように置いてある…学校のオルガン。
…あたしは…そのオルガンを前に…
「おかん、ピアニストなんやろ?るーも弾けるんちゃうん?」
浅井君にそう言われて。
「…カエルの子はカエルとは限らないのよ…?」
うなだれて答えると。
「えっ、楽器なんも出来へんの?音楽家の娘やのに、なーーーーんも?」
って……。
いつもならスルー出来ちゃいそうなその言葉に、なぜかあたしはムッとして…
「…バイオリンなら、少し」
って言ってしまって…
「ほー。なら、明日持って来て弾いて見してん」
…乗せられた感じもしたけど…
『FACE』のメンバーを前に、ほんの…ほんの少しだけ、弾いてみた。
「だって…人前でバイオリン弾いたことないし…」
「今弾いたやん」
「い…今のこれって…曲って言うより、ただの音階…」
「なら曲弾いてくれよ」
「…やだ…」
あたしが唇を尖らせてうつむき始めると、浅井君が指でちょいちょいってして、あたしを部室の隅っこに。
「…何…?」
「大丈夫やって。いやっちゅうほど練習したら、人前なんかどーっちゅうことなくなるって」
「…あたしには、ちょっと無理だと…」
「変わるんやなかったんか?成長するって言うてへんかったか?」
「う…っ…」
宇野君!?
瀬崎君!?
それとも…浅井君には会った事ないはずだけど、頼子!?
どうして…どうして、あたしの決意を浅井君が知ってるの!?
…って…
あたし、『変わりたい』って決意…ちょっと忘れてたかも。
今、こうして浅井君に言われて…ハッとした。
「たっぷり練習して、ライヴして…それをマノンに報告」
最後の方は小声だったけど。
あたしは見る見る真っ赤になってしまった。
なんでこんな小声で言うのよっ。
かえって恥ずかしいじゃない…!!
「マノンも感激するんやないかなー。るーがバンドしてるっちゅうて」
「…どうして感激?」
「マノンの気持ちわかるようになるやん。ギターのことも、だいぶ覚えてきたし」
「……」
「な?やってみよ?」
「…やっぱ、だめ」
「だーっ、頼むから」
「だって…」
「マノンも、惚れなおすんちゃう?るーにこんな特技がっちゅうて」
「……」
どうも、あたしは真音ネタに弱い。
あたしの中では…一度強制終了させてしまった想いだけど…
真音は、まだ継続させてくれてて…
……それに応えたい…ところなのだけど…
まだまだ臆病なあたし…
「な?」
「……」
しばらく黙ったあと。
「…でも、かなり練習しなきゃ、ついてけないかも…」
あたしが、そうつぶやくと。
「明日から、みんなでスタジオも入ろ」
浅井くんは、みんなを振り返って、そう言った。
…え?
「よし。加入決定な」
丹野君が手を差し出す。
「え…っ…えっ?」
「よろしく」
続いて…臼井君も。
「は…は…?」
「絶対楽しいに決まってるから」
八木君も…
「え…えええと…あたし…は…」
OKなんて言ってなーい!!
あたしがオロオロしてると言うのに、四人は満面の笑みで。
浅井君が無理矢理、あたしの手をみんなの手とギュギュッとつなぎ合わせた…!!
う…っ…
うわああああああああ!!
手…!!
手ーーーーーっ!!
「よーし、めっちゃ盛り上がって来たでー!!」
浅井君は楽しそうに、そう言ったけど…
「……」
あたしは…
「え?あれ?るー、なんで?」
ヘナヘナと、そばにあった椅子に倒れ込むように座って、机に突っ伏したのよ…。
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