03

「クリスマス?」


「うん…空いてない?」


 久しぶりの放課後デート。

 さすがに冬場の並木のベンチは。って事で、先月から宇野君のお兄さんのお店『ダリア』に寄り道。


 もう誘うのは嫌だなー…なんて思ってたあたしだけど…


『ちゃんと約束せなあかんって。付き合い始めて最初のクリスマスやろ?大事やんか』


 って…浅井君がしつこく言ってきたし…


『俺なんかは張り切って仕切るタイプだけど、マノンってほら…忙しい人だしさ。むしろ、るーが色々企てて進めたら、感激すると思うぜ?』


 って…宇野君が電話して来たり…


『初めてのクリスマスプロデュース、何か困る事があったら相談乗るし、頑張れ!!』


 って…瀬崎君がノートの端っこに書いて、授業中に回して来たり…


 あたしは、仲良しな三人に背中を押されて、思い切って…真音を誘う事にした。



「イヴの日は、ナッキーがバイトしてる店のパーティーでライヴやらなあかんねん」


「あ………そう…そうなんだ…」


 ガックリ。


 クリスマスなんて大イベントの予定を、翌週に控えてから聞くあたしもあたしだけど…

 やっぱり真音…あたしとクリスマスを過ごす。って頭は…なかったんだなあ…って。

 普通なら怒り心頭になっても不思議じゃないのかもしれないけど…

 真音だから……

 仕方ないよね。



「次の日ならー…」


 えっ?


 次の日……12月25日…?



「空いてる?」


「ああ」


「絶対?」


「ああ」


「じゃ、空けておいてね」


「わぁった」


 やったー…!!

 小さくガッツポーズなんてしてしまうと、真音が笑った。



「いっつも悪いな。約束破って」


 真音が、髪の毛をかきあげながらそう言ったんだけど


「え?仕方ないじゃない。バンドの事なら」


 げんきんなあたし。

 クリスマスの約束ができた途端、これだもの。



「どこ行く?」


「え?」


「クリスマス。るーの行きたいとこ、どこでも付き合う」


「本当?」


「ああ」


 嬉しい〜〜!!!!!!


 どこがいいかなあ。

 映画…は、何となく…またキャンセルになりそうな予感がするから、やめておこう。

 違う所…んー…

 遊園地なんて…いいかも…?

 

 あたしがワクワクを抑えきれない様子で考えてるのを、真音は頬杖ついて、優しい目で見てる。



「いや、ちょい待って」


「え?」


「遊園地は…苦手やな」


 あれ。

 なんで分かったんだろ。


「あ…そうなの?」


「うっ…遊園地がえかったんか?」


「んー…でも寒いから、それは春とか」


「春…」


「何?」


「あ、いや。せやなー、どこ行こかなー」



 ああ…嬉しいな。

 真音が楽しそうに考えてくれてる。



「ナッキーがバイトしてる南国風の飯屋がな?クリスマスは特別メニュー出す言うてて」


 南国風のお店…

 ナッキーさん、似合いそう…


「あー、でもクリスマスは多いやろなあ」


 そっか…

 お店って、どこも多い気がするな…

 とりあえず、待ち合わせは…ここでするとして…


 …はっ…

 …プレゼント!!

 あたし、何も考えてない…っ!!



「音楽屋でもイヴにはちょっとしたパーティーするみたいやけど…25日は通営業やろな…つーか、いつも行く店に行ってどないすんねんって感じか」


 …プレゼント…どうしよう…

 男の人って、何をプレゼントしたら…



「んー…そう考えたら、イヴのがメインやねんな。悪かったなあ」


「……」


「…るー?」


「あっ…ああっ、ううん。いいの」


「……」


「…何?」


 急に真音が首を傾げて小さく笑うから。

 あたしも同じように…首を傾げて問いかける。


「いや…るー、可愛いなあ思って」


「……」


「…俺の彼女、マジでサイコーやん…って、思うてたとこ」


「……」


 ……神様ーーーーー!!


 あたし…あたし…!!



 クリスマス、頑張る…っ!!

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