02

「えっ、また?」


 宇野君が呆れた顔をした。


「…うん」


 あたしが頷くと


「よう我慢してるなあ。俺ならパンチの一発でもくらわしてるで」


 浅井君が右手を握り締めて言った。


「でも、あのDeep Redのマノンだもんなあ。忙しい人だし、仕方ないって言えば仕方ないんだよな」


 瀬崎君がそう言うと、二人は腕組みして『うーん』なんて唸ってる。



 お昼休み。

 あたし達は、いつものように図書室で密談中。


 男三人、女一人。

 普通なら、いじめの標的にされそうなシチュエーションなのかもしれないけど、なぜかあたし達は『仲良し四人組』なんて言われてしまってる。


 それより何より…

 あれだけ男の人が苦手だったのに。

 あたし、今はこの三人としか一緒にいない。


 …決して女友達がいないわけじゃな…

 こうして密談に付き合ってくれそうな人は…いないかも…

 今でもあたしの相談役のトップは、頼子だ。

 そして、その頼子と親友関係だった宇野君と瀬崎君は、後は引き受けた!!と言わんばかりに…あたしを気遣ってくれる。



「あたし、ちょっと贅沢になっちゃってるのかも…」


 小さくそう言うと


「全然贅沢なんかやないやん。それが普通やって。付き合うてるのに何も望まん方がおかしいやん?」


 浅井君は唇を尖らせた。


「でもまあ、来週にはクリスマスってイベントもあるし」


 瀬崎君が明るい声で言ってくれたけど…


「あるけど、会えないかもしれないし…」


 あたしは、うつむいてしまった。


 クリスマスの予定…本当は、真音から誘って欲しいのに。

 真音はきっと…バンドの事で頭がいっぱいで。

 女の子がその日を特別に思ってる事なんて、気付いてないと思う。


 でもなあ…

 あたしも、自分から誘って…また断られたら…って。

 それも、クリスマスを。

 …心折れちゃうよ…



「プ、プレゼントとか、考えた?」


「ううん…何も浮かばなくて」



 彼氏が出来て、初めてのクリスマス…

 本当なら、もっと…ウキウキしていいはずなのに。

 映画デートを五回もキャンセルされてるあたしは…

 ……ウキウキなんて、出来ないよ~……



「……」


「……」


 ふと気付くと、あたしの暗い表情に、みんなが黙ってしまってた。


「あ…あ、ごめん。そうー、ね。プレゼント、考えてみる」


 とりあえず笑ってみせると


「ま、物やなくてもええ思うけどな」


 って浅井君が言って


「何?」


 あたしが聞き返すと


「そりゃあ、から」


「何でもないよ~」


 宇野君と瀬崎君は、浅井君の口を押さえて苦笑いした。

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