女神との再会

 結局ご好意に甘えて、乗らせてもらうことにした。乗り心地は良く、思っていたよりも全然揺れない。


 不思議だなー、魔法でもかかっているのかな。



「二人も乗って大丈夫かな……馬さん重くない?」


「平気平気さ。なんだってこの馬さんがお前さん達を乗せてやりたいと、勝手に戻ってきちまったんだぜ。ほんと賢いよな〜」



 嬉しそうに馬型を自慢するおじさんは前を向いてて、どんな表情なのかわからなかったけど、きっといい笑顔をしているんだと思う。


 ドールを自慢したい、その気持ちはすごく分かる。メーアは世界一可愛いもんね!



「しかしお嬢ちゃんは凄いね。ドール医師になるためには試験に合格しなきゃいけないのに、それに受かっちゃうなんて」


「まぁ、運が良かったんじゃないですかね」


「バカ言っちゃいけないさ、受かるの百人受けて一人か二人なんだろ?」


「っていう噂ですよ。実際はもっと受かってるんだと思います」



 試験の大変さを思い出してしまい、ちょっぴり苦笑いが浮かんでしまう。



「メーアも知らないのよ。どんなことをしたのか」


 メーアも興味津々みたいで、私に輝いた目を向けてくる。


 試験場はドールも入ることが出来ない所。そういえばメーアはちょっと前は応援してくれてたのに、ドールは入れないと知ると凄い暴れまくったんだっけ。



「さぁ? 秘密だよ〜」


「むむむむ、教えるぐらい悪いことじゃないのよ!」






「はは、ダメだよ。試験の内容は誰にも言ってはいけないんだ」


 ポツリ。おじさんはそうポツリと呟いた。馬車のスピードが徐々に上がっていくのを、外の景色の移り変わりで分かる。




「キミは魔女に質問を投げかけられたんだい?」


「………………」


 私は何も答えず、ただただ外を眺めていた。




 そしてゆっくりと迫ってくる眠気に身を委ねるのであった。







 *****




 これは夢。


 自分ですぐに理解する。私は真っ白な空間に浮かんでいる。



 ――どーもです、ノアさん。元気でした?



 頭の中に陽気な声が響いた。なんかこの前と雰囲気が違う。



「女神さん? 雰囲気違いますね」



 ――ちょっと嬉しいことがありましてね。で、本題なんですけど〜良いですか?



「ど、どうぞ」



 ――まずは手始めにメーアさんの願いを聞いて、叶えてください。



 メーアの願い? それは私を守ることなんじゃないのかな。



 ――それは違いますよ。あっ、それもそうですが……えーと。



「人の気持ちを読まないでくださいッ!」



 ――ふふ。聞くだけじゃなく、叶えるんですよ?


「でもどうしてそれが、私の願いを叶えてくれるに繋がるんですか?」



 ――さぁ? 内緒です……ではっ




 女神の一言で夢なのに、また意識が遠のいていくのが分かる。……夢なのに。

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ドールの旅〜愛されるのも悪くない〜 子羊 @kamm1214

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