頑張らないと
カキンッ。
金属音が響き、ドサリと何かが地面に叩きつけられる音がした。
「ーー!?」
私はまだ温かい布団から飛び起きた。二度寝したくなるほどのちょうどいい心地よさに包まれながら、思わず言葉が漏れた。
「な、なにごと」
「アレンとあの女が修行しているのよ」
「……ふぇ?」
メーアが窓の外を眺めながらそう言った。アレンとあの女?……あぁ、なんだ師匠のことか。
「しーーーしょーーーうーー」
私は布団から飛び出し、外に猛ダッシュした。朝起きた体で、転ばなかったのは奇跡だと思う。
広い草むらで師匠とアレンが、多分本物の剣を握って戦っている。
「おっ、ノアおは「師匠! 修行を中止してください」
「はぁ?!」
師匠の言葉を遮ったのはヤバかったかもしれないけれど、師匠は無表情だ。言いくるめればいけそう、チョロいし。そしてアレンのまぬけな声が森に響き渡った。
子どものように駄々をこねる私に呆れたのか、師匠はこんな提案をしてきた。
「ノア、仕事してみる気はないか?」
「ないです。私が仕事してる間にアレンに手取り足取り教えるつもりですよね!? ダメです! 師匠は私のです」
「ふむ。お金がないと、これから旅をするのに困るのはお前たちだろう」
「私はアレンより強いッ! だからどんな敵にも勝てます」
「寝言ほざくな。私に勝てるのか?」
あと金ないと生きてけないぞと言われ、ぐうの音も出ない。
「う、ぐっ」
「うっ、うう、いきたく、ないです」
「師匠、俺も一緒に行きます。ノアだけじゃ不安で……その」
「そこにドールがいるだろう? 平気さ」
師匠が指差す先には、やる気満々のメーアがいた。三つの爪も出している。危ないからやめなさい。
「他の誰にもノアの髪の毛一本も触らせないから安心するのよ」
落ち着いて! メーア。
「なんでアレンは師匠と修行をしているのですか?」
「ノアの昔の話で、剣の扱いが一番上手い幼馴染がいると言っていただろう。その話をアレンにしたら、それは自分だと言うからな」
アレンの方を見ると、熱があるのかってほど顔が赤い。照れ隠しなのか明後日の方向を向いている。
「ノアの幼馴染はお、俺しかいないだろ!? べつに一番上手いのは俺だ! みたいな感じで自分だと思ったわけじゃねーから」
「誰もそんなこと思ってないのよ。墓穴を掘ったのね、アレン。ププププ」
「このッ、ド、ドールめ」
と、こんな感じで話が流され、結局行くことになってしまったんだ。行きたくない、行きたくないよー。
でも頑張らないと、アイツらに復讐するにはそうとう強くならないとそのためにも、お金が必要。
だってお腹空いたら勝てないもんね!
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