手紙
『これを読んだ時、私はこの世にはいないでしょう。亡くなる前に見てしまったら感動なんかないでしょうから、ちょっとした魔法をかけさせてもらったわ。まあ、もしかしたらノアは大雑把だから、お守りをどこかで無くしてしまって読めないかもしれない、それはそれで構わないの。
ここで全てを書いてもいいのかもしれないけれど、それだと何も解決しないと思うの。ごめんなさい、貴女と共に死ぬことは出来なかった。村全体で話し合いをしたの。「今日、村が襲われる。逃げたい人は逃げなさい」と。
誰も出て行ってはくれないみたい。サクラちゃんや幼い子ども達にはしっかりと事情を伝えたのにね。
貴女に生きて欲しかった。って言っても貴女は納得してくれなさそうね。でもね、それが、私の気持ち。これで今までの罪が償えたとは思ってない、
ノアごめんなさいね。騙すような形になってしまって、そうでもしないと出て行ってくれないと思ったから。メーアからあの時、ノア達が話し合いの場にいると聞いて疑われるように演技してみたけど、上手くいったかしらね。上手くいったなら、ノアは生きている。どうかしらね、元気でこれを読んでくれていたら嬉しいことはないわ。すごく複雑だけど。
ノア、愛してるわ』
「………………っ」
お守りの中身は手紙。
あとでゆっくり見ようと、一人になって読み始めた内容は衝撃的なものだった。
「酷い人だなぁ」
ごめんなさいっていうなら手紙なんか寄越さなくても良かったのに。……私も連れて行って欲しかった。
「本当に酷い人……っ」
知らないうちに涙が溢れ、止めることはできなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます