手紙


『これを読んだ時、私はこの世にはいないでしょう。亡くなる前に見てしまったら感動なんかないでしょうから、ちょっとした魔法をかけさせてもらったわ。まあ、もしかしたらノアは大雑把だから、お守りをどこかで無くしてしまって読めないかもしれない、それはそれで構わないの。


 ここで全てを書いてもいいのかもしれないけれど、それだと何も解決しないと思うの。ごめんなさい、貴女と共に死ぬことは出来なかった。村全体で話し合いをしたの。「今日、村が襲われる。逃げたい人は逃げなさい」と。



 誰も出て行ってはくれないみたい。サクラちゃんや幼い子ども達にはしっかりと事情を伝えたのにね。


 貴女に生きて欲しかった。って言っても貴女は納得してくれなさそうね。でもね、それが、私の気持ち。これで今までの罪が償えたとは思ってない、


 ノアごめんなさいね。騙すような形になってしまって、そうでもしないと出て行ってくれないと思ったから。メーアからあの時、ノア達が話し合いの場にいると聞いて疑われるように演技してみたけど、上手くいったかしらね。上手くいったなら、ノアは生きている。どうかしらね、元気でこれを読んでくれていたら嬉しいことはないわ。すごく複雑だけど。


 ノア、愛してるわ』



「………………っ」


 お守りの中身は手紙。


 あとでゆっくり見ようと、一人になって読み始めた内容は衝撃的なものだった。



「酷い人だなぁ」


 ごめんなさいっていうなら手紙なんか寄越さなくても良かったのに。……私も連れて行って欲しかった。




「本当に酷い人……っ」


 知らないうちに涙が溢れ、止めることはできなかった。

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