第5話 受け継がれるモノ
魔法陣の飛び込んだ後、シェリアは床に転がった姿勢で青一色の世界と浮遊感を味わっていた。
「うまくいったの……か?」
そう頭を上げて呟いていると、浮遊感が終わり視界は新たな世界を捉えた。
そこに広がっているのは、地下とは思えないほどの広大な空間だった。遥か上の方にはアオイロソウが発する光が暗い天井に点々と存在しており、まるで夜空に浮かぶ星のような印象を受ける。
目の前には石畳の小さな道がある。それに沿うようにして、魔法石が内部に入っている手持ちランプのようなものが吊り下げられた細い柱が置かれ、放たれる光が道を照らしている。
その道の先には湖があり、中央の島に向かって橋が架けられている。その島と橋にも照明が取り付けられており、その周辺だけが非常に明るくなっていた。
その島には一つの建物があり、円形のドームのような大きな屋根が特徴の白色の建物が存在している。それらの様子から無事にあそこを突破したことは明らかだった。
「や、やっと終わったー」
精魂疲れ果てたような声を出しながら、彼女はその場で大の字に寝転がった。しかしそれも無理もないことで、次々に起こった危機的状況は彼女の精神を大きく削っていた。
『お疲れ様、よくやったわね』
「もう、二度とごめんだけどね。それにしても、粒子砲が効かないとはね。こりゃ早々に改良が必要だ、あまりにも堅い目標に対して弱すぎる」
彼女の切り札である荷電粒子砲を除けば、最も強力な攻撃手段である粒子砲であるが、それが威力不足であることは致命的である。堅い目標が出てくるたびに切り札を使うなど、そんな間抜けなことは出来ない。
「火力アップが必要だな。具体的には荷電粒子砲を応用して強力なものを作るとかかな? あの機構を小型化し組み込めば威力は上がるはずだ。後はそれに伴う魔力供給のバランスを考えて……」
『シェリアちゃん、そのくらいにして先に進んだら? 向こうに見えるあの建物が目的地だと思うわ』
「そうだね、行こうか」
そう言ってシェリアはだるそうに立ち上がると、魔法陣から続く道を歩き始めた。所々にあるアーティファクトと思われる街灯のおかけで道は明るく、でこぼこした石畳の道でもつまずくようなことはなかった。
やがて橋の近くにまで辿り着く。左右に設けられた白い手すりも道と同じような素材で出来ており、全てが白く輝いているかのようだ。道を歩いて行くとやがて湖に差し掛かる。橋の上から下を見てみると、湖の底が簡単に透けて見えるほどの透明度があった。さらに水の中にアオイロソウの茎のようなものがあり、そこから青色の光が発せられ、まるで湖自体が青く光っているように見えた。そんな神秘的な光景を堪能しながら、シェリアは建物に辿り着いた。
大きさの異なる四角形の石材を大きい順に重ね合わせたような階段の先には木材で作られた扉が設けられている。左右には4つの四角いガラスをはめ込んだ窓が付けらおり、建物の素材は大理石のように白く、橋の素材と同じもののように思えた。
シェリアは扉に近づくとゆっくりそれを開けて中をのぞき込むように顔だけをその扉の奥に入れる。そこから見えた光景にシェリスは目を見開いた。
そこは一言で言えば応接室だ。中は多くの照明によって明るく、中央に大きな長方形のテーブルに左右には座るためのソファのような家具が置かれている。床にはフワフワした絨毯が敷かれ、部屋の奥には階段が設置されている。その階段の横には大きな宝箱のようなものが置かれていた。
そして彼女が何よりも驚いているのはそこにいる二人の人物である。左右それぞれのソファに座り、杖を傍らに置いて左手でコースター、右手でカップを持ち、それを傾けては何かを飲んでいる。部屋に漂っている香りから紅茶であることは間違いないが、今の彼女にそんなことはどうでもよかった。
シェリアは部屋の中に入ると声をかけた。
「こんなところで一体何をしているんですか、オスマンさん、アンジェさん」
彼女の目の前にいたのはアリオンのギルドマスターであるオスマンと師匠であるアンジェだった。その声で気がついたのか、両方ともシェリスの方を向いた。
「おお、無事にここまで辿り着いたか。さすがじゃな」
「それは当然よ、オスマン。だって私には勿体ないくらいの弟子なんだから」
そう笑い合いながら持っていたカップとコースターをテーブルに置く。とてもゆったりとした空気であったが、シェリスの脳内は混乱していた。何故、二人がここにいるのか、いつの間に来ていたのか、等とそんな考えがぐるぐると回る。
『シェリア、落ち着きなさい。今は冷静になるときよ』
アイリスの少々呆れた声を聞いたからか、シェリアの混乱は少々落ち着く。
「あの、なんで二人はここに……」
「おう、そうじゃったな。まぁ立ち話は何じゃ、アンジェの隣にでも座ってくれ」
「あ、はい」
シェリアはアンジェのいるソファに移動すると、失礼しますと挨拶をしてその隣に座った。そしてオスマンをまっすぐ見た。
「ではまず儂がここにいる理由なのじゃが、そもそもこのアトリエは儂のアトリエなんじゃよ」
「オスマンさんのですか?」
「うむ。儂の師匠から受け継いだ場所でな。研究ではほとんど使ったことはないが、ここは景色が最高に良いからの、考えをまとめたりするときに外を眺めならじっくりとするのじゃ」
「確かにそうですね。それで一体どこからここに入ったんですか?オスマンさんは前日に入っていれば不思議ではないんですけど、アンジェさんはどうやってここまで来たんです?」
シェリアが迷宮に入ってから、自分を追い越すものを見たことがなかった。もしアンジェが彼女と同じ道を辿ってここまで来たのであるならば、必ず彼女の後でないとおかしかった。
「ああ、それね。実はあの迷宮の入り口には隠し通路があって、その先にある魔方陣を使ってここに来たのよ」
それを聞いて唖然とした気持ちにシェリアはなった。もしそれを見つけることが出来ていたらあのドームで苦労することはなかっただろう。しかし、それを見つけていても彼女の中にいる保護者がそれを許すことはないだろうが。
「さて、後は儂がここにいる理由なのじゃが、実は儂は明日にはアリオンを発たなければならんのじゃ」
「アリオンを……、何故です?」
「実はこの時期はギルドの定例会があっての。おおよそ1ヶ月半の間、留守にしなければならないのじゃ。だからこそ、儂はお主がどのぐらい成長したのか、行く前に見ておきたかったのじゃよ」
「そうだったんですね。それでその、判定はどうなんですか?」
「もちろん合格よ。ここまでこれたのがその証。それでここに来る前にゴーレムに襲われたでしょ。あれはどうやって対処したの?」
「対処……ですか? とりあえず追いつかれては逃げ、追いつかれては逃げの繰り返しでしたよ。粒子砲も効かなかったですし。 ていうか何ですかあれ、死ぬかと思いましたよ!」
と抗議の声をあげるシェリアであったが、オスマンもアンジェも表情は変わらない。
「ごめんなさいね、でもあなたなら絶対に超えられると思ってたから。それに最初に出てきたゴーレムは簡単だったでしょ?」
「まぁ、そっちの方は……。粒子砲で簡単に貫いて倒せましたし」
「でしょ? それを何体も出してもあなたの相手にはならないだろうから、試練にならないし、自身を成長させることが出来ない。 だからこそ、私のとっておきを置いておいたのよ」
そう言われ、シェリアは黙るしかなかった。
確かにそれが大量に出てきたところで単なる的が増えただけであり、障壁を張りながら地道に倒していけば何の苦労もなく終わるだろう。そんな物は試練ではない。
「それで、何か成長は出来たかしら?」
「成長というか、課題のような物は出来ました。とりあえずアレはまだまだ火力不足なので、強化したいと思います。具体的にはあのゴーレムを一撃で貫けるぐらいですか」
「あらあら、これは頼もしいわ。オリハルコンで出来たゴーレムを貫けるようにするなんて。どう思う、オスマン?」
そう問いかけられたオスマンは腕を組み、考えるように目をつむって背もたれに体を預ける。しばらくそうしていると、目を薄く開ける。
「どうも言えん。無理と思っておるが、アンジェの報告書に書かれていたあの魔法のことを考えると、不可能でもないと思っておる自分もおる。故にこれからに期待、と行ったところじゃの。どの道、シェリアの魔法に関する評価を改めなければならんのう……。それでお主はこれからどうするのじゃ?討伐クエストなどを受けていくのか?」
「それに関しては今まで通り雑用クエストを受けたいですね。私としてはのんびり生きられればそれでいいですし、それに町の人たちの役に立つのは私自身も嬉しいので」
そうシェリアはまっすぐに、そして自信を持って答えた。まだ一年も経っていないが、すでに彼女はあの町に愛着が湧いていた。そしてその町に住む一人の住人として役に立ちたいと、そう思うようになっていた。
「そうか。その答えをギルドの職員達に伝えよう。皆、涙を出して喜ぶじゃろうな。さて、これで儂の話は終わりじゃが、アンジェからお主に渡したいものがあるそうじゃ」
「ええ、ちょっとだけ待ってね」
そう言ってアンジェは階段の横にあった宝箱に近づくと、そこから1本の杖を取り出す。
金色の棒に銀色の蔓の意匠が付けられ、先端は鋭く槍のようになっており、その周りには銀色の台座のようなものが取り付けられていた。そしてその台座の両端には錫杖のように細い金属製の輪が付けられていた。全体の大きさはシェリスの身長より少し小さい程度だ。
『そ、その杖は・・・、何でそこに・・・!』
「アイリス姉?」
頭の中にアイリスの動揺する声が響き、シェリアは杖から視線を外してそう声をかけるが返事は帰ってこない。その杖に何かあるのかと思った彼女はアンジェの方を向く。
「あの、その杖は一体何ですか?見たところ凄い杖なのかなと思いますけど・・・」
「ふふっ、この杖はね、遙か昔に英雄の一人が使っていたと言われている杖なの。私がエルフの里を出るときに餞別として貰ったのだけど、私では使いこなせなかったの」
「使いこなせない? あの私、杖を使ったことがないんで、使いこなすというのが分からないですけど。一体どういうことなんですか?」
「そうね、杖というのは精霊魔法を使うときに触媒として使うことになるもの。そしてそれを使うときには相性があるの。その相性が合わないと杖はその真価を発揮してくれない。私がそれを使ったとき、一切魔法が使えなかった」
「使えない?相性が悪かったって事ですか?」
「おそらくそうでしょうね。でも、私の里にいた人たちも誰も使えなかった。だから厄介払いで私に渡されたと思っていたんだけど……。もしかしたら、これは運命だったのかも知れないわね」
そう言いながらその杖も持ちながらシェリアの前に立つ。そしてそれを両手の平に乗せるように持ち直すと渡してきた。
彼女はゆっくりとそれに手を伸ばして、掴んだ。瞬間、杖に白い光がる、まるで回路を描くように広がっていく。それと同時に杖から猛烈な白い魔力の嵐が起こる。その勢いにテーブルの上に置かれていたカップが飛び、床に落ちて割れる。
オスマンも、アンジェも、そしてそれを持っている彼女自身もその嵐に目を瞑って耐える。
やがてそれが収まり、シェリアが目を開いて杖を見る。杖は白い回路が描かれ、淡い光がまるで脈動するように放たれている。
「えっと、どうなったのでしょうか……」
「……分からないわ。でも私がこの杖を持ったときはこんなことは一切起こらなかった。おそらく今のが相性を示すものだったのかも知れないわ。もしかしたらあなた自身にも何らかの変化が起こっているかも知れない」
「そう……でしょうか」
彼女自身もよく分からなかったが、その杖を見ていると何でも出来そうな、そんな感じがしていた。
「うーむ、ただ杖を渡すだけだったのがとんでもないことになったのう。とにかく、シェリアよ。お主はその杖に選ばれたようじゃ。今後もかつての英雄に負けない活躍を期待しておるぞ」
「は、はい!お任せください!」
シェリアがはっきり、そして元気よく答えるとオスマンは満足げに笑う。そして彼は視線をアンジェに移す。
「ところでアンジェよ、ウィルの様子はどうじゃ?サボらずに練習しておるか?」
「もちろん、魔法もいろいろ使えるようになっているわ」
アンジェの言葉に最近のウィルを思い出す。自分の隣で同じようにどんどん魔法を使って、そして強くなっていた。その時の彼は腕を構え、そこから次から次へと魔法を繰り出し……。
「あれ?」
そこまで思い出した時、彼女は妙な違和感を抱いた。ウィルのその姿に何かが足りないのだ。二人が彼の事を話している最中に考えていく。そして気がついたのだ、アレが足りないのだと。
「あの、ちょっと良いですか?一つ疑問に思ったことがあるんですけど……」
「あら、何かしらシェリア?」
「精霊魔法を使う魔法使いにとって、杖は必要不可欠なものですよね。以前、本を読んだとき、杖などのなんらかの媒体が無いと魔法の威力が下がってしまうってあったんですけど……間違いないですか?」
「そうね、その認識で間違いないわ」
「でもウィルさん、媒体が無い状態でバンバン魔法を使っていたんですけど。しかも結構威力のあるもののように思えるんですが……」
シェリアの指摘に二人はニコニコと笑うだけ。それがどのような答えなのか、彼女には十分理解できた。そもそも二人とも各地で伝説を作ったと言われている程の魔法使いなのだ。そんな二人の孫が普通の人間の訳が無い。
(なるほど、オスマンさんがウィルさんに魔法を教えようとするわけだ)
そうシェリアは心の中で納得したのであった。
オスマンと別れてアトリエを出た後、シェリアはアンジェと一緒にある場所に向かっていた。そこはここに入ってきた場所とは反対側、建物の裏にある、もう一つの小島だ。魔方陣が描かれた台座が二つ並んで置かれている。
「ここがこのアトリエへの近道に繋がる魔方陣ね。片方は迷宮の入り口に続いていて、もう片方はアリオン近郊に繋がっているわ」
「なるほど。じゃあオスマンさんはここから駆けつけたと言うことですね」
「それじゃあ、帰りましょうか」
そう言って、二人は魔方陣に入り、帰路についた。
**
「お、戻ってきたか」
アトリエ前でいつも通り腕を構えて魔法の練習をしていたウィルは、帰ってきた二人にそう声をかける。
「ただいま、ウィル。今日もしっかりと練習していたわね。どうかしら、調子は?」
「良い感じだ。さっきはファイヤバレットで正確に木を打ち抜けるようになった。で、そっちはどうだ?」
そう言ってウィルはシェリスに視線を向ける。
「はい、無事に試験合格です」
「そうか。それはよかった。俺はいつまで掛かるか分からないけどよ」
「そのことだけど……。ウィル、ちょっとこの杖を持って魔法を使ってくれないかしら?」
「突然何だよ、婆さん。まぁ、良いけどよ」
ウィルはアンジェの杖を受け取ると、適当な場所に向ける。
「力と破壊の象徴たる火の精霊よ、紅弾となりて鋭く貫け、"ファイヤバレット"」
発射されたのは過去シェリスが防いだ炎弾だが、その鋭さが増しているように思えた。そして複数が発射され、手頃な木に着弾する。次に発せられたのは直径3メートルほどの爆発だ。それが次々に命中しては起こり、煙が晴れた後に残っていたのは、バラバラになった木の残骸だった。先ほどまで打ち抜ける程度だったのが、杖を持っただけでこの威力になった。呆然とし、持っていた手が緩み、杖が地面に落ちる。その状態のウィルにアンジェが嬉しそうな表情で彼に近づくと彼の頭を撫でながら言った。
「よくやったわ、ウィル。これであなたも試験に合格ね」
「……は?」
状況が飲み込めていないウィルはただただそう返すのが限界だった。
「これで二人とも試験合格ね。今日はそれを祝って料理は豪勢にしなきゃね」
そう言ってアンジェは地面に落ちていた杖を手に取ると、そのままアトリエに入っていった。
「一体何が起こったんだ?な、なあ、お前は何か知っているか?」
「そうですね。私から言えることはただ一つ。ウィルさんはチートキャラだったんですね」
「……何だその、ちーとって言葉は?お前の世界の言葉か?」
「そうですね。でも、後でアンジェさんに聞けば何が起こったのか教えてくれますよ、多分」
「多分じゃ困るんだが……」
夜、試験合格祝いの豪勢な食事を堪能し、ご満悦なシェリアはベッドに寝転がっていた。
その席であの一件のネタ晴らしがウィルに成された。不満げな表情であったが、それが彼の魔法の修行になっていたため、彼はそれ以上何も言わなかった。とは言え、彼の本業は剣士であるため、新たな力となった魔法をどのように運用していくかは彼に掛かっている。
(魔法を使うには杖のような触媒が必要。なら剣にそれを組み込めれば魔法も両立できるようになるかもな)
そう考えるシェリスだったが、その考えをウィルやアンジェに伝えることはなかった。何せ装備に関する事は今まで利用してこなかった自分よりも知っていると思ったからだ。ならば素人は口を出すべきじゃないと、そう考えた。
『シェリア』
その声と共にアイリスが姿を現した。その表情はいつものように優しげな表情であったが、シェリアにはどこか影があるようなそんな感じがした彼女は、上半身を起こして彼女に向き合う。
「アイリス姉、どうしたの。そんな顔して……」
『うん、ちょっとその杖の事でね』
そう言いながらアイリスは部屋の隅を指差す。
そこに置かれていたのは、シェリアが持っていないためか、浮かび上がっていた白い回路模様、そして脈動するように発していた光が消えている、あの杖だ。
「あの杖がどうしたの? そういえばアレを初めて見たとき、なんか動揺しているような様子だったけど、何か知っているのか?」
『うん、あの杖はね、私がかつて使っていた杖なの』
その言葉にシェリアの頭は一瞬フリーズした。そして思考が戻ると若干動揺した様子で問いかける。
「えっと、どういうこと?」
『その杖はね、私の家に代々伝わっていた家宝だったの。どこで手に入れたのかは聞いていなかったけど、とても強力な杖だった。私が魔法使いとしている事が出来たのはその杖のおかげなの』
そこでアイリスは言葉を一旦切る。どこを説明すれば良いのか考えているのだろう。少し時間をおいて再び話し始めた。
『私は世に出ている普通の杖だと、魔法が満足に使えなかった。私には魔力はあったけど、属性がなかったから。でもその杖だけは例外だった。その杖を使えば私でも魔法が使えるようになったの。しかも強力な……。私が最高の魔法使いでいられたのはその杖があったから、最高でいられたの』
「じゃあ、その杖を使っていた英雄って、アイリス姉のこと?」
『それについては私にも分からない。確かに私は仲間達と一緒に、世界の命運を左右する戦いに身を投じていたわ。でもそれを知る前に死んじゃったから……』
「そう……か。ちなみにさっき属性がなかったって言ってたけど、アイリス姉も同じだったんだ」
『ええ。小さい頃は悩んだわ。なんで私には属性が無いんだろうって。でもそれを持った私には自信が付いたんだと思う。まさか私が使っていた杖をシェリアが使うことになるなんてね。これも運命って言うのかしら?』
今自分が姉と呼ぶ人が使っていた杖を今自分が使うようになっている。それも500年前の人物が使っていたものだ。確かに運命を感じざるを得ないだろう。シェリアはベッドから立ち上がると杖の所に向かい、そして手に取る。瞬時に回路が描かれ、再び光が脈動する。
『うん、私が使っていたときと同じような感じだわ。もしかしたら普通の魔法を使えるようになっているのかもね』
「もしそうだったら嬉しいな」
そう笑いながらシェリアは彼女に顔を向ける。
『私が大切にしていた杖よ。大事に使ってね』
言われるまでもない、と彼女はそれにそう返すのだった。
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