第4話 りゅうくんのこと

 初めてりゅうくんを見た時から、「あ、私はこの子と結婚するんだ」という直感みたいなものがあった。彼はどう思っていたかは知らないが、「大好き」などというぐらいなのだからきっとそういうことだろう。

 私を仕事に専念させるという親の思惑で東京へ引っ越したあとは、手紙ぐらいでしかやりとりがなかった。それも時が経ち、仕事が増えるにつれ私から送る手紙は少なくなっていき、年賀状とバースデーカードぐらいが精いっぱいになっていた。

 一方で、彼の方からは事あるごとに手紙が届いた。彼自身の手紙の情報から、私は彼が受験した高校に入ったのだった。知らなかったのは彼のオタク趣味とこじらせ具合だけだった。


「なんで黙ってたの?」

「驚かせたかったから」


 そんなやりとりを帰り道にした。驚きを通り越して心配になったわ!

 ただ、われながら彼を一目見て彼だと認識した私自身にも驚いていた。


 りゅうくん、背すっごい伸びてたんだなぁ。


 あれだと可愛い系アイドルよりカッコイイ系の方が似合うんだろうけどなぁ。


 彼のリクエスト的には前者で、しかも女装させてプロデュースしなければならないんだろうけど。どうなりたいのか、いろいろヒアリングしてみよう。

 そんなことを考えているうちに自宅に着いた。今は色々あって一人暮らしだ。家は無駄に広いせいか、外よりも寒い気がする。食べきれなかったあんまんを温め直している間にお風呂のお湯を入れる。テレビをつければちょうど歌番組で、アイドルが踊っていた。彼も見て研究しているのだろうか?

 ……そういえばメールアドレスも知らなかったんだった。明日会ったら聞いとこう。

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