第2話 ペストマスクの鳥怪人

ギィギイ、カタカタ、機械仕掛けの鳥人形、レザーのクチバシ震わせて、少女に挨拶ゴキゲンヨウ。


「こ、こんにちわ。あの、私、なんでここにいるのかわからなくて。ここは何処ですか?」

少女は軽く会釈をして、鳥人形達から少しでも情報を得ようとした。


「ココハ永遠ノ黄昏」

「終ワリナキ幻想ノ夕暮レ」

「我々ノ幻想ト君ノ意識ガリンクシテシマッタラシイネ。」


少女は鳥人形達の言っている事が理解できなかった。しかし、自己の置かれた異常な状況だけは分かった。


「君ハ現実ニ還ラナクテハナラナイ。ソノ鍵ヲサガセ。都市部ヘト向カウ橋ヲワタレバキット見ツカルハズダ。」


「ダガ気ヲ付ケロ。君ノ瑞々シイ生命力ヲ羨ム影達ガ襲ッテクルダロウ。」


「コノ世界ハ君ノ意識ニ深ク直結シテイル。君ノ意識ガ悪夢性ヲ帯ビルト世界ハ黄昏カラ夜ヘト変質スル」


「ソウダ。夜ハ影達ノ世界」

「黄昏時ニ奴等ハ動ケナイ。シカシ、闇ガ世界ヲ覆ウト奴等ハ動キダス。生命二群ガルオートマータ。」


「ちょっとまってよ。貴方達の言ってること理解できないよ。お化けがでるの?」


「無理モナイネ。永遠ノ黄昏ノ中ニトドマルカ?」

夢なら醒めてと少女は頬をつねってみたが現実的な痛みが残るだけだった。


「ケタケタケタ。分カッタダロウ?ココニイテモ永遠ノ時間ノ檻二閉ジ込メラレルダケダ。」

「我々カラ心バカリノプレゼントヲアゲヨウ。夜ノ世界ヲ歩クノニ役ダツ。ソコノクローゼットヲ開ケナサイ。」


錆び付いた音をさせながら鳥人形の片割れが片手を持ち上げフロアの端にあるクローゼットを指差した。その油切れの音は鳥人形達が本当に人間ではないことを示していた。

少女は促されるままに歩きクローゼットを開けた。

木製のクローゼットを開くと一着の黒い革のドレスが掛けてあった。その下には蝶のデザインがされたハンドル付きのアンティークなオペラグラスと肩掛けの小さなバッグ。金属製の懐中電灯、黒いヒール。そして、物騒な軍用モーゼル拳銃が置かれていた。


「ソレハ全部君ヘノプレゼントダ。外ニ一歩デモ出レバ君ノ命ハ危険二晒サレル。取リ敢エズドレスヲ着タマヘ。レディガソンナ格好デハイケナイ。」


少女はシュミーズとショーツしか身につけていなかったのだ。

不思議と恥ずかしさはなかった。人間の男性でもいれば違うのだろうが目の前にいるのは機械仕掛けの鳥人形なのだ。


少女はドレスを着た。

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