第129話 決戦-05
ルキフェルの方は片付いたようなのでキセルを仕舞い玉座に向かった。
「あんた、凄ぇな。」
「何がだ?」
「あんだけの高レベル魔法使いを一瞬で再生できんのか?」
「当たり前だろう?俺は神と呼ばれてるんだぞ?」
理由になっているのかいないのか・・・
「いくつか聞きたい事があるんだが、いいか?」
「別に構わんぞ。」
「あんたが作ったにしちゃあ、デヴィはずいぶん欠陥品だったみたいだが、何故だ?」
「そりゃ、お前ら人間が欠陥品だからだ。」
「はぁ?」
「あれは、ヘヴ星に昔生息していた猿人種、つまりお前らと同じタイプの人間の人格を良くも悪くも完全再現したもんだ。スペックは上げてあるがな。」
「ふむ・・・あいつは何だったんだ?」
「神LOVEを拗らせすぎたメンヘラ女だ。」
「なんじゃそりゃ!」
意外過ぎる答えに思わず叫んでしまった。
「俺は人間観察が趣味なんだよ。だが、あいつはそれが気にくわなかったって事だ。」
「自分だけを見て欲しいってやつか?」
「そうだ。」
「そりゃ確かにメンヘラだな。」
「だろ?で、全宇宙の知的生命体を全滅させりゃいいっていうアホな結論に至ったって事だ。」
「もうちょっとマシな奴をモデルにしろよ・・・」
「いや、ああいったタイプの方が見てて面白いぞ?」
「面白いってなぁ・・・どれだけの人間が死んだと思ってんだ?」
「まぁ、そこは俺とお前の認識の差ってやつだ。」
「どう違うんだ?」
「もし、自分の玩具が蟻を踏みつぶしていたら、お前は心の底から蟻に申し訳なく思うのか?」
おそらく悪意でも何でもなく、こいつにとっては本当にそういう感覚なのだろう。
それに、俺も敵対勢力を害虫駆除の感覚で殺しまくっていたのだから、倫理がどうのこうのと偉そうな事は言えない。
「蟻ね・・・ま、確かに無心に眺めてると面白いって感覚は分からんでもない。」
「だろ?ただ、蟻と違って人間ってのは多少の知能を持ってるくせに、おそろしく非合理的な事をやらかす事があるのは知ってるよな?」
「否定はできんな・・・」
「そこが俺には理解できん。」
「だからデヴィを作ったのか?」
「そうだ。人間の言葉が話せる蟻みたいなもんだ。」
「んなもん作るより、人間社会で暮らす方がよっぽど理解できると思うんだがなぁ・・・」
「いや、作るの簡単だったからな。」
「その簡単な機械に封じられるってのはどうかと思うぞ。俺達が倒せたから良かったようなものの、負けてたらどうすんだよ?」
「あんなもんいくらでも解除できるぞ?いい加減飽きてたから、お前らが失敗したら強制解除するつもりだったしな。」
「はあっ?」
「いや、神だし。」
強がりを言っているようには見えない。
つまり、俺が死にかけてる時も、こいつは興味津々で眺めてたって事か?
怒りが湧きかけたが、何を言っても蟻が暴れてるくらいにしか思われないだろう。
「はぁ・・・」
「溜息ついてどうした?」
「神って便利な言葉だな。」
「まぁ、お前たちの概念の神とは違うがな。」
「どのへんが?」
「この宇宙を創造した全知全能の存在って訳じゃない。俺はこの星で誕生した生命体だし、ある時点以降の実界での出来事しか全知じゃない。」
「全知だと?」
「あぁ、これの意味も知ってたぞ。」
神もどきは、地星の特務隊のハンドサインを解説しながらいくつも披露し始めた。
「いや、確かに地星のハンドサインだが、お前が俺の記憶を盗み見た可能性もあるだろ?」
「疑り深い奴だな・・・じゃあ、お前の知らない事を教えてやる。後でその通りだったら信じろよ!」
「分かったよ。で、何を教えてくれるんだ?」
「お前の両親の事だ。ちょっと耳貸せ。」
「なにっ!さっさと教えろ!」
「お前は・・・と・・・の・・・」
「マジか?フツヌシも教えてくれりゃいいものを・・・」
「お前らの星じゃデリケートな問題なんだろ?お前に言っても問題無いかフツヌシには判断できなかったんだよ。」
両親に関しては全く情報が無かったが、そういう事なら納得できる。
今の情報を元に調査すれば尻尾はつかめるだろう。
いや、神王命で聞き出せばすぐだな。
「ふぅ・・・話は変わるが、なんでそんな”神様っぽい恰好”なんだ?」
「この星の猿人種が勝手に擬人化したから、それに合わせてやったんだよ。」
「神っぽさっていうのは万国・・・いや万星共通なのか?」
「同じ種だからな。」
「はあっ?ヘヴ星の人間とも遺伝子が同じなのか?」
「そりゃコピペだしな。」
「ちょっと待て!今、さらっととんでもない事言わなかったか?」
「コピペの事か?」
「そうだ!教えろ!」
「人間観察が趣味だからな。やっぱり色んなシチュエーションが見たいんだよ。だから猿人類が誕生した頃のこの恒星系を色んな宙域でコピペしてる。もちろん、俺の痕跡は消してるし、多少の例外はあるけどな。」
「じゃ、じゃあ、地星とスメラも?」
「当たり前だろ?でなきゃ、事象の地平面より離れた星で交配可能なレベルで同じ生命体が存在するか?」
偶然にしちゃ出来過ぎだと思っていたが、偶然じゃなかったのか・・・
そりゃあ、コピペなら化石なんかも同じだろうよ。
「完コピの割には人類史やら価値観がずいぶん違うんだが・・・」
「お前も最初に気付いただろ、星の配置が違うって。占いの結果が変わったり、暦の発明が進んだり遅れたり、進むべき方角を見つけたり見失ったり、そういう細かい事が積み重なって違いが出てくるんだよ。」
「まぁ、分からんでもない。ちなみにここの人間はどうなったんだ?」
「大量の小惑星が降り注いで、生物は極一部の細菌類を除いて全滅した。」
「おいおい、助けてやらなかったのか?」
「当たり前だろ?俺は色んな種が現れるのが楽しみなんだ。それに、大量絶滅ごとに助けてやってたら、お前ら存在してないぞ?」
確かに恐竜が絶滅してなきゃ、俺達はネズミみたいな姿のままだったかもな・・・
「ま、そんな感じでこの数十億年の間に色んな種族を見て来たぜ。もっとも、最初の猿人種が一番面白いけどな。」
「あの、ちょっとよろしいでしょうか?」
珍しくキッカが割り込んできた。
「構わんぞ、キッカ。」
「人類誕生から数十億年も経つと、日星は赤色巨星になり始めると思うのですが・・・」
「放っておけばそうなるな。俺は別に平気なんだが、この星から生命が居なくなるのは面白くないんでな。定期メンテはちゃんとしてるんだよ。」
「定期メンテ・・・ですか?」
「あぁ、一億年ごとに恒星は元に戻してる。お前らの国でも年末大掃除とかしてただろ?」
「は、はぁ・・・さすがですね・・・」
「神だからな。」
「ありがとうございました。話の腰を折ってしまい、申し訳ありませんでした。」
「気にするな。お前はなかなか面白い機人種だから気に入っているんだ。」
恒星を一億年ごとに元に戻すという事は、最低でも一億年の間に放出された莫大なエネルギー分の魔力が必要となる。
それを年末大掃除の電球交換と同レベルに語られたキッカは何とも言えない表情をしながら再び俺の後ろに下がった。
「機人種?」
「そりゃ、機械から進化したからな。スメラも本来は機人種の星になってたんだがなぁ・・・」
「いや、でも、機械だろ?ってか、残念そうに言うな!」
「お前らだって有機機械だし、思考は電気信号じゃねぇか。」
「確かにそうだが・・・」
「お前は忘れたのか?」
「・・・いや、そうだな。何で出来てようが、命だよな。」
「そういう事だ。」
「ちなみに、神軍ってのは何種になるんだ?」
「ただの玩具だ。」
「ひでぇ・・・」
「俺が気に入った種をベースに作ったんだ。おかしいか?」
「それにしても、命令に絶対服従ってのは可哀想じゃないか?」
「何を言っているんだ?お前たちの星にもボイアっていうペットロボットを売ってるだろ、あれと同じだ。」
「は?」
「まず犬っていうベースの種が居て、それに似たボディを作っている。知能だってお前らより更に低いが一応人工的に作ったのが搭載されていて人間には逆らわないように作られている。」
「まぁ、そうだな・・・」
「人を神、犬を人に置き換えて考えてみろ。」
「同じ・・・だな。だけど人間だろ?」
「そりゃ、お前が無意識に人間至上主義に陥ってるからそう感じるんだ。」
「うっ・・・否定はできん。」
「ん?」
神もどきが微妙な表情をした。
「どうした?」
「いや、お前の仲間にちょっと連絡してみろよ。」
「まぁ、構わんが・・・」
『コウだけど、今いいか?』
『閣下、ちょうど良かったです。議会で褒美の案がまとまりました。』
『そうか、教えてくれ。』
『気象条件への影響が大きいので、ガラスの平原を元に戻してもらいたいという結論になりました。』
『分かった。また連絡する。』
「お前なら分かると思うが、俺にして見りゃアホみたいに簡単なリクエストだ。」
「そうだろうな。」
「ただでさえ、キッカへの褒美が簡単すぎたんだ。もっと難しいのにしろ。」
「変わった事言うやつだな。」
「神の面子ってやつだ。」
「分かったよ。じゃあ、スメラに戻ってからでもいいか?」
「あぁ、急ぎはしない。」
「そう言えば、オモさんは機人種としてはどうなんだ?」
「あれは機人種じゃねえぞ。猿人種型のインターフェイスを持つただの機械だ。」
「いまいち違いが分からんな・・・」
「つまりクオリアを持たない哲学的ゾンビだ。」
「聞いた事がある言葉だが・・・分からん。何だっけ?」
「人に分かる事を神に聞くなよ。」
「それもそうだな。後でキッカにでも聞いておく。」
「それでいい。」
「最後の質問なんだが、魔法使いと一般人ってどこに違いがあるんだ?」
「それももう分かっている筈だ。ちゃんと調べろ。」
「マジか?」
「マジだ。」
「そうか・・・じゃあ、とりあえず聞きたい事は聞けたし、そろそろ帰るよ。」
「ルキフェルに挨拶はしないのか?」
「縁が有ったらまた会うだろ。」
「そうだな。」
「じゃあな!」
「おう!」
俺はキッカを連れてスメラへと瞬間移動した。
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