第128話 決戦-04

装甲機動戦闘服の頭部ユニットを跳ね上げ、ぐったりしているコウに話し掛けた。


「コウ、コウ、しっかりして下さい!」

「ん・・・あぁ、キッカか・・・よく・・・やった。さすが・・・俺の・・・剣・・・だ。」

「早く治癒魔法を!」

「無理・・・だ・・・」

「どうしてですっ!」

「構成・・・情報・・・は・・・消えた・・・」

「じゃあ、じゃあ、せめて止血を・・・」

「出血・・・が・・・ひどくて・・・イメー・・・ジング・・・できん・・・」

「救急キットで応急処置します。」

「待・・・て・・・もう・・・無理だ・・・」

「大丈夫です!助けてみせます!」

「予想・・・生存・・・時間を・・・教えろ・・・命令・・・だ。」

「・・・意識喪失まで3分、死亡まで5分です。」

「キセルを・・・頼む・・・」

「はい・・・」


大急ぎでキセルの火皿にカゴメを詰めて火を点けようとしたけれど、わたしは紅葉草を吸った事がないから上手くいかない。

手間取りながらも何とか火を点けてキセルをコウに咥えさせると、コウは弱々しく一口吸って、満足そうな表情をしながらわずかに煙を吐いた。


「美味いなぁ・・・ナホに・・・愛・・・して・・・い・・・」


コウの頭が力なく傾いた。


「コウ!コウ!!!」


嫌だ・・・

生きていて欲しい。

神様・・・神様・・・神・・・様・・・?




玉座の方向に振り向くといつの間にか神様が目の前にいた。


「神様!お願いです!コウを、コウを死なせないで下さい。」

「なかなか面白い戦いだった。褒美に願いを叶えてやろう。」

「え?」


一瞬でコウの身体が再生され、血液も再生されたのか血色も良くなっている。

お腹に刺さっていたオウカもいつの間にか鞘に収まっていて、装甲機動戦闘服もついでに直してくれたみたいだ。


「ん?ここは黄泉の国か?」

「コウ!」


思わず抱き着いた。

疑似涙腺制御回路が暴走して涙が止まらない。


「どうやら、まだ生きてるみたいだな。」

「神様が、神様が・・・」

「そういう事か。礼を言っておきたい。ちょっと離れてくれるか?」

「あ・・・」


思わず赤面してコウから飛び退いた。


「あんたが治してくれたのか?」

「あぁ、そうだ。」

「そうか、礼を言う。ありがとう。」

「面白い物を見せてもらった褒美だ、気にするな。」

「しかし・・・」

「どうした?」

「神様感の無い話し方だな。」

「そういう話し方の方がいいか?」

「いや、こっちの方が気楽でいい。」

「だったら言うなよ。さて、ルキフェルの方も復活させるか・・・」

「そうか。じゃあ俺はみんなに連絡してくる。」

「あぁ、そうだ。お前にも褒美をやろう。何がいい?」

「考えとくよ。」


コウは相変わらずだなぁ。

神様相手に図太いにも程があるよ。


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避難用一番艦内には重苦しい空気が漂っていた。

モニターに表示されている作戦予定時間はとっくに過ぎているにもかかわらず、何の連絡も入っていないからだ。

それどころか、キッカの予備戦術端末の画面には”同期信号喪失”という不吉な文字が表示されていたのだ。


『ナホ!』

『コウ!無事なの?』

『あぁ、今はピンピンしてる。』

『良かったぁ。』

『とりあえず倒せたよ。今から皆にも連絡するよ。』

『うん。早く教えてあげなくちゃね。』

『じゃあ、切り替えるよ。』


通信魔法の出力先が避難艦の館内放送へと切り替えられた。


「こちらコウ。状況終了、勝ったぞ!」

「わぁーーーっ!」

「やったーーー!」

「討ち取ったりーーー!」


艦内に歓声が響き渡った。

絶滅の恐怖から解放された喜びと、仇討ちを成し遂げられた事への歓びが入り混じっているようだ。

歓声が収まるのを待ち、話を続けた。


「とりあえず安全は確保されたから、スメラに戻っても大丈夫だ。」

「「閣下はいつお戻りですか?」」


一番艦と二番艦のオモさんが見事にハモッた。


「ちょっと”神”と話したい事もあるしな・・・そうだ、褒美をくれるらしいから、そっちでも考えてみてくれ。」

「「承知しました。スメラで合流し議会に諮る形でよろしいですか?」」

「そうしてくれ。じゃあ、後でまた連絡する。」


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避難艦との通話を終えてキッカと共にホバースラスターで玉座の前へ移動すると、ルキフェルが片膝を付き臣下の礼を取っていた。

まだ時間がかかりそうなのでキセルに火を点けなおし、一服する事にした。

一瞬、キッカが慌てて止めようとしたが、諦めの表情を浮かべると何も言わなかった。


「ルキフェルよ、大儀であった。」

「もったいなき御言葉です。」

「貴様が命懸けであの剣を抜いたからこその勝利だ。褒美は何が良い?」

「褒美など必要ありません。永遠にお仕えさせて下されば、それに勝る喜びなどございません。」

「そう遠慮するな。望みを言え。」

「い、いえ、望みなど・・・」

「めんどくさい奴だな。もういい、ほれ!」


いきなり上空に800万の魔法気配が現れた。


「これは・・・」

「貴様の望みくらい聞かんでも分かる。事情は説明済みの状態で再生したから敵意は無い。さっさと行ってこい。」

「誠に・・・誠にありがたき幸せにございます。」


ルキフェルは瞬間移動で仲間たちの元へ移動したらしい。

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