第122話 合流-02
俺達は大講義室へと向かった。
そこには既に連邦議員が着席していた。
もっとも、連邦議員と言っても要は大人の事だ。
なお、子供達は年長者が面倒を見ている。
「お姉ちゃん!」
「「ナホっ!」」
ナホが飛び出しナミに抱き着いた。
「良かった・・・良かったよぉ・・・お姉ちゃんが生きてた・・・」
「ナホこそ・・・生きていてくれたんだね・・・」
感動的な姉妹の再会だ。
ちなみにナギはフルシカトされている。
「あぁ、済まないが両少尉には先に報告をしてもらいたいんだが?」
「そっか、そうだったよね。ごめんね。」
ナホはそう言うとナミから離れ、自分の席へと戻って行った。
「さて、じゃあ報告をしてもらおうか。あぁ、そうだ。ここでは軍事機密も含めて全て話してもらっていい。」
「了解しました。」
その後、二人は都合よく脚色した報告を行ったのだが、ボロが出まくりだった。
「い、以上です!」
「報告ご苦労。ところで、この報告が虚偽だと判明した場合、それなりの懲罰を受けてもらう事になるが訂正等はあるか?」
「いえ、ありません!」
「そうか・・・わたし、いや、俺の知ってる話とは随分違うんだがなぁ?」
俺は二人が地星で行った非道な行為をスクリーンに映し出すと、通信魔法で瞬間移動テスト艦のフツに接続し、音声をスピーカーに接続した。
「フツをナギ少尉、ナミ少尉の部下から大統領直属に配置転換する。俺が映し出している内容は真実か?」
「はい、真実です。両少尉は数千年に渡り原住民に洗脳処置を施して、自らを神と崇めさせていました。」
「う、裏切り者っ!」
「わーわーわーわーーーー!」
「黙れっ!」
「「は、はっ!」」
大講義室の500名から二人に険しい視線が投げかけられている。
スメラ人にとっても、数千年もの長期間に渡り代々ずっと洗脳し続けて自由意志を奪うというのは極悪非道な所業なのだから当然だ。
「しかも、実務はフツに丸投げして当人達は食っちゃ寝の引きニートだったらしいな?」
「「・・・」」
「実はな、俺は地星の日出国からやって来たんだよ。」
「え?」
「えぇっ!」
「しかも俺の苗字は”山王”だ。」
「か、神が命ずる!我らを敬え!」
「そーだ、そーだっ!」
「・・・アホか?俺が洗脳済みなら最初から平伏してるだろうが!」
「「あ・・・」」
「まぁ、今のセリフで裏が取れたな。」
「「あうあうあ・・・」」
「つーことで・・・だ。」
二人がゴクリと唾を飲んだ。
「今からお仕置きだ。まぁ、ナホに頼まれたから一発ずつで勘弁してやる。」
『ナ、ナギ、どうしよう?』
『だ、大丈夫だよ。魔法気配も感じないし、バリア張っておけば痛くない。』
『あっ、そっかー!楽勝じゃん!痛がるフリだけしよっと!』
「じゃあ、まずナミの方からだな。」
俺はデコピンの構えを取ると一瞬で間合いを詰めナミの額に打ち込んだ。
そしてナミが重心を中心に回転を始めた時には、ナギの顔面に右ストレートを叩きこんでいた。
もちろんフルパワーでは無い。
そんな事をすれば間違いなく顔面核融合が起きてしまう。
「お姉ちゃんっ!」
ナホが痙攣するナミに駆け寄って介抱を始めた。
「キッカ、ナギの方も起こしてやってくれ。」
「分かりました。特務隊式覚醒法ですか?」
「勿論だ。」
キッカはナギに近付くと特務隊式覚醒法、即ち、超高速往復ビンタを行った。
もちろん、キッカには俺の魔力を貸しているのでバリアがあろうとダメージは入る。
暫くすると二人とも意識を取り戻した。
「い、いひゃい・・・」
「な、なんで・・・」
「やっぱりアホだな。どうせ俺に魔法気配が無いから、バリア張っておけば大丈夫とでも考えてたんだろ?」
「「うっ・・・」」
「あのなぁ・・・魔法気配を感じないって事は、とんでもなくヤバい相手かもしれない事ぐらい理解しておけよ?」
「ましゃか・・・」
「あたしたちより・・・」
「そういう事だ。せこい事を考えなけりゃ、もう少し軽めにしてやるつもりだったんだがな。自業自得だ。」
「「うぅ・・・」」
「あぁ、それと・・・」
目が笑っていない笑顔を向けると、二人がビクッと体を震わせた。
「今はまだ厳しい開拓の最中なんだ。軍人たる者、食料は民間人に優先的に回すべきだと思う。よって、これからの二人の食事は三食全て非常用保存食だ。」
「うぅ・・・」
「ひどい・・・」
「これは大統領、つまり軍の最高司令官としての”命令”だ。」
「りょ、りょうひゃいしましひゃ・・・」
「りょ、了解しました・・・」
「ちなみに、二人には上官の命令に逆らえないよう洗脳が施されているらしい。」
「ひどひっ!」
「人権侵害だぁーーー!」
「や・か・ま・し・い!お前らが何千年もやってきた事だろうがっ!」
「くっ・・・」
「うぅ・・・」
二人は救いを求めるように辺りを見回したが、1,000の冷たい瞳に射抜かれて観念したようだ。
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ナホが冷やしたタオルをナミに手渡しながらジト目で見つめた。
「うぅ・・・いひゃい・・・」
「あいたたた・・・酷い目に会ったよー。」
「もう、コウのご先祖様に変な事するからだよぉ。」
「ニャホ・・・ぼふのは・・・」
ナホは道端のゲロを見るような目つきでナギをチラ見すると、すぐにナミへと目を移した。
「でも、必死にお願いしたからデコピンで許してもらえたんだからね?」
「うぅっ、ナホ、ありがとう!でも、あんなに思い切りやらなくても・・・」
「ううん、思い切り手加減したんだって。」
『ナホ、なんで僕の方は・・・』
「そっかー!通信魔法なら普通に喋れるんだ!」
「虫でもいるのかなぁ?なんだか耳障りな音が聞こえるなぁ・・・」
『ナホ、無視しないでくれよぉ・・・』
「殺虫剤もってこようかな?」
ちなみに、現在はまだ黒いヤツを復活はさせていないので絶滅したままのはずだ。
しかしヤツに対して抱く恐怖はスメラでも同じであり、精神的お守り替わりに殺虫剤は常備されている。
『ナミ、フォローしてくれっ!』
「ね、ねぇ、ナホ。なんであたしの方が軽い罰で済んだのかなぁ?」
「んっとね。わたしの説得もあったけど、お姉ちゃんみたいなS級引きニートだと主犯とは見做せないだろうっていう理由らしいよ。」
「さぼってて良かったーーーっ!」
「でも、お姉ちゃんのアゴとか二の腕たるんでるよ?頬もふっくらしてるし・・・」
ナミの身体がビクッと震えた。
「ま、まさかぁ・・・ちゃんと命令通り訓練してたよ?」
「食べる量は一緒だったの?」
「現地のご飯がどんどん美味しくなっていったから・・・ちょっと食べすぎたかも?」
「もう・・・でも、大丈夫!明日から特務隊特殊筋力トレーニングなんだって。」
「うげぇ・・・」
『ナホ、こんな身体じゃ無理だよ!』
プシューーー!
ナホは無言で殺虫剤を噴射した。
『止めてくれーーー!』
「そう言えば、男子学生は何してるの?」
「・・・みんな・・・みんな死んじゃったんだ。」
「え?」
ナホはこれまでの経緯を説明した。
「えぇっ!じゃあ大統領のハーレム状態ってこと?」
『僕のナホを毒牙にかけるとはっ!』
今度は殺虫剤が空になるまで噴射が続いた。
もちろんバリアで防ぐ事は簡単なのだが、”ナホに更に嫌われる恐怖”からナギは無抵抗のままだった。
「でも、絶滅しない為だったから仕方ないよ。コウもすごく大変そうだったし。」
「ま、種馬扱いだしね。あー、あたしもいつか子供作りたいなぁ。」
「無理だと思うよ?あれだけ悪評が広まってたら・・・」
「うぅっ・・・」
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