合流

第121話 合流ー01

地星を出発して新たな知的生命体の探索を続けたが、さすがにそう何度も見つかるものでは無かった。

現在は合流時刻が迫って来たのでスメラ星への瞬間移動の準備を終えたところだ。

憂鬱だが、そろそろ引きニートどもを起こさなければならない。


「起きて下さい。」

「ん、んぅ・・・」

「すぴーーー」


またか・・・


「起きて下さい。」

「ん・・・あ、おはよう。」

「ふあああああ・・・おはよ。」

「そろそろスメラ星に瞬間移動しますよ。」

「え?もう?」

「早くない?」

「コールドスリープ中だったのをお忘れなく。あなた方の尺度で考えれば悠久の時が流れていますよ。」

「あぁ・・・そうか・・・」

「なるほどねぇ。」


この引きニートどもには学習能力は無いと断言しよう。


「瞬間移動後すぐに魔法気配を探って下さい。さすがに神軍はもう居ないとは思いますが、万が一、強力な魔法気配があった場合は再びランダム宙域に瞬間移動で撤退します。」

「分かったよ。じゃあ、僕が探るからナミはエネルギー供給を頼むよ。」

「分かったー!」

「では、これよりスメラ星へと瞬間移動します。」

「懐かしいな・・・お墓、作ってあげないとな。」

「そだね・・・」

「3,2,1,0」


1万年の時を経て、瞬間移動テスト艦は再びスメラ星へと帰還した。


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「フツ、魔法気配はあるけど・・・」

「では直ちに撤退します。」

「待って!たぶん神軍じゃない。そんなにレベルが高くない気配が多いんだ。」

「そだねー、ひょっとして生き残りが居たのかな?」

「神軍が討ち漏らしたと?なかなか信じられない事ですね・・・」

「生き残りじゃないとしたら、宇宙人の入植か突然変異になっちゃうよ?」

「それもそうですね。どちらにしても脅威度が低いなら着陸してみましょう。ただし、バリアは念入りにお願いします。」

「もちろんだよ。」


艦を予定座標まで移動させたが、そこは眼下にガラスの平原が広がる高度300mほどの場所だった。

神軍の攻撃で地殻ごと切り取られた影響だろう。


「魔法気配はあっちの方に固まってるみたいだな。人数は1,000人以上だよ。」

「了解しました。では移動しますか?」

「そだねー、とりあえず会ってみよう!」


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俺はシェルター前の広場でキッカとオモさんを伴ってナギとナミの帰還を待っていた。

ちなみに、通信魔法を使って魔法気配のレベルと位置をキッカの3次元レーダーに入力している。


「お、来たぞ。予定時刻ぴったりだな。」

「やはりこちらに向かって来ていますね。」

「そりゃあ、あの二人の魔法レベルだと子供達の魔法気配は丸分かりだろうしな。」

「閣下、それでは念の為にシェルターは一時的に封鎖します。」


オモさんはスタンドアロンモードに切り替え、シェルター出入り口を封鎖した。

高レベル魔法使いの前ではシェルターの分厚い扉も全く意味は無いのだが、オモさんの立場としてはやらざるを得ないのだろう。


「完全ステルス化は解除してないな。」

「そうですね。全く反応がありません。」


俺の方が魔法レベルが高いので魔法気配を検知できているが、それが無かったら全く気付かないだろう。


「警戒したい気持ちは分かるが、無礼だな。」

「じゃあ、ちょっと仕掛けますか?」

「閣下、なるべく穏便にお願いします。」

「キッカ、瞬間移動テスト艦の配線図は覚えているか?」

「はい、機密情報ファイルからダウンロード済みです。」

「じゃあ、完全ステルスと瞬間移動の動力線のコネクタを外してやれ。」

「分かりました。部隊行動基準はどうなりますか?」

「状況開始と同時に大統領として話し掛ける。それで敵対行動を取るようなら、ぶちのめす。ただし、殺すなよ。」

「分かりました。すでにコネクタの位置は突き止めましたから、いつでも状況開始可能です。」

「よし、カウント0で状況開始。3,2,1,0。」


カウント0と同時に完全ステルスが解け、瞬間移動テスト艦の全貌が見えると共に低く唸るような音も響きだした。


「こちらはスメラ星連邦大統領のコウだ。直ちに着陸し乗員は下船せよ。」


暫くすると艦は降下し、側面のハッチから人影が現れスメラ式の敬礼を行った。


「ナギ少尉、ナミ少尉、只今帰還致しました。」

「ご苦労。」

「お久しぶりです。」


オモさんが一歩前に出て二人に挨拶をした。


「オ、オモさん?」

「えぇっ!ホントにオモさん?」

「はい、一万年ぶりですね。お元気そうで何よりです。」

「じゃ、じゃあ、シェルターは無事だったの?」

「はい。シェルターの皆は難を逃れました。」

「そっかー、ナホは幸せな一生だったのかなぁ?」

「えぇ、開拓は大変ですが、皆さん幸せに暮らせていると思います。」

「そっか、お墓参り・・・しないとな・・・」

「そだね・・・」

「いえ、生きていますよ。」

「は?」

「へ?」

「詳細は後ほどお話ししますが、コールドスリープから目覚めたのは15年前なのです。」

「「えぇーーーっ!」」

「うおっほん!少尉、まずは報告を済ませてもらいたいんだがな?」

「「し、失礼しましたっ!」」

「とりあえずシェルターに入ろう。」

「「了解しました!」」


シェルターの扉は外側からは開けられないようになっているので、通信魔法でオモさんの本体に依頼しなければならない。


『オモさん、扉を開けてくれ。』

『承知いたしました、閣下。』


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二人はシェルターに入ると何やら訝しげな表情になった。


「どうしたんだ?」

「い、いえ、そっくりなシェルターだなと・・・」

「あれ?なんであたしらの部屋が?」

「あぁ、そのまま残してある。」

「ですが・・・座標が違います。」

「そう言えば、機密保持の為に公式記録にも偽の座標を載せていたらしいな。」

「そうだったのですか・・・」

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