第120話 物資-06

俺とキッカは次の世代の為の開拓候補地を調査する為に、スメラ各地を飛び回っている。

ちなみに、このところキッカは毎日のようにMSに搭乗している。

初めてのマイMSという事もあって、操縦が楽しくて仕方がないようだ。

キッカ曰く、”マニュアル操作こそ至高”らしく、K.I.T.T.兵器システムを使っての直接制御はしていないらしい。


『なぁ、キッカ。』

『はい、なんでしょう?』

『何でいつも俺に付いてきてるんだ?』

『・・・コウの背中を守る為です。』

『いや、今の俺なら多脚重戦車の大軍が湧いても平気だろ?』

『うっ・・・』


キッカが言葉を詰まらせた。

MSに搭乗しているので表情は見えないが、困らせてしまったのかもしれない。

俺としては単純に疑問だったので聞いてみただけだったのだが・・・


『ゆ、油断は禁物ですっ!どんなに優れた装備をしていても、一本の剣のおかげで命拾いする事だってあります!わ、わたしはコウの剣になるつもりです!』

『あ、あぁ、そうだな。慢心はいかんよな。』

『そうです!何と言われようと、離れるつもりはありません!』

『分かったよ。じゃあ、これからも背中を預けさせてもらうよ。』

『はいっ!』


しばらく飛んでいると、ガラスの平原が見え始めた。


『ここは開拓には向いてないな・・・』

『そうですね。でも懐かしいです。寄って行きますか?』

『そうだな。時間もあるし行ってみるか!』


オモさんのシミュレーションによると、中緯度帯にできたこの直径2,000kmのガラスの平原に雪が積り固まったせいで巨大な鏡のようになり、大量の太陽光線が反射された事で一気に寒冷化が進んだらしい。

その後、西側の巨大火山が活発化し、温暖化ガスの放出と平原の融雪が進んだことで再び温暖化し始めたという事だった。


「ここだな。」

「ひび割れがありますね。」

「ここから始まったんだよなぁ。」

「そうですね。そして、またここから大きな動きが始まりますね。」

「三日後か・・・」

「どうされますか?」

「ナギはぶん殴る。ナミは・・・ナホに泣いて頼まれたから、デコピンだな・・・」

「その程度で済ますのですか?」

「スメラの刑法じゃ、地星での行動は罰せられないからな。」

「残念です・・・」

「だがっ!」


俺は拳を握り締めた。


「何かいいアイデアがあるのですか?」

「俺は大統領、つまり軍の最高司令官だ。厳しい開拓の最中だから、軍人には止むを得ず三食全てを非常用保存食にするよう命ずる事ができる。そして、あいつらには”安全装置”が掛けられているから、大統領命令に逆らう事はできん。」

「それは・・・あまりに鬼畜の所業ではありませんか?」

「俺は特務局非常勤特別最高顧問だぜ?まぁ、あいつらが自分達のやった洗脳っていうものがどれだけ極悪非道な事かを自覚して本心から反省するなら、二食にしてやってもいいとは思っている。」

「やはり、コウは敵にすると恐ろしいですね。」

「あんまり褒めるなよ。」


フツヌシの情報が正しければ、三日後にはナギとナミが戻ってくる。

つまり、神軍との戦いが近いという事だ。

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