第27話 虐殺-04
愚痴りながらも担当となった大部屋に第10班は入った。
他の部屋の倍の大きさの部屋だ。
底辺故に一番大変そうな部屋を押し付けられたのだ。
大部屋の扉を開けて入るとすぐにまた頑丈そうな扉があり、更にそれを開けて中に入ると皆は一様に驚いた。
「おい、ここって・・・」
「武器庫・・・なのか?」
奥の壁には多数の小火器が掛けられていた。
レーザー突撃銃、短機関銃タイプのコイルガン、レーザー短銃が12丁ずつあった。
そして、下側の台の上には端末のようなものが置かれている。
シオが思わず駆け寄り手に取った。
「これは・・・軍用・・・いや、治安部隊の・・・」
「どうしたんだシオ?」
「すまない、しばらく調べてもいいか?実は俺は隠れミリオタなんだ。」
余談だが、本人は隠れミリオタのつもりだが、隠し切れていない。
会話の端々から第十班の皆には筒抜けだった。
「あぁ、別に構わない。じゃあ俺達は先にMETを探しておくよ。」
右側のロッカーには戦闘服やヘルメットなどの装備品が収められており、左側のキャビネットには小火器用METの他にコイルガンの弾丸とドラム型300連弾倉が収納されていた。
「おっ!すごい量のMETじゃん!」
「俺たちが一番お手柄じゃね?」
「・・・なぁ、みんな。」
「どうしたんだ、シオ?」
「俺はこいつらの使い方を知っている。」
「それがどうか・・・まさか!」
「そのまさかだよ。こいつらさえあれば、チャラ男どもを見返せる・・・」
その場を暗い欲望が支配していく。
「いや、駄目だ!」
「どうしたんだケル?あいつらにムカついてないのか?」
「クフ、俺はな、チャラ男に媚びを売ってる女どもにもムカついているんだよ。」
「くくくくく・・・くははははは・・・・」
「サク、おかしくなったのか?」
「ちげーよ、俺たち王にならないか?」
「いいかもしれんな。」
「そうだな。」
「やるか?」
「おう!」
彼ら、第10班のメンバー、は既に狂気に囚われていた。
「とは言っても撃てなきゃ話にならない。」
「だな。試射できる場所があればいいんだが・・・」
「そこの部屋が多分射撃場だぞ。奥の方に的があった。」
分厚いドアを開けると射撃場があった。
6つのブースに分かれており、標的も6つセット出来るようになっている。
「防音っぽいな。サク、念の為に中で大声出してみてくれ。」
サクが中に入ってからドアを閉めたが、ドアに耳を当てても全く何の音も聞こえなかった。
しばらくすると、肩で息をしながらサクが出てきた。
「はぁはぁ・・・どうだった?」
「いや、全く聞こえなかった。」
「よし、じゃあMETを起動しよう。先に戦術端末のセッティングをしたいから、ボタン型METの起動が先だな。その後に単5METにしよう。」
「分かった。けど・・・単5METって小さくないか?アクション映画だともっと大きいのを使ってたと思うんだが?」
「そりゃ軍用のはな。ここにあるのは治安部隊用だから。」
「げっ!ちゃんと威力あるのか?」
「軍用みたいに1か月無補給で使ったり、コンクリートを撃ち抜く訳じゃないからな。対人用なら威力は十分さ。」
大昔も、パーツを流用している為に見た目はそっくりだが軍用はライフル弾、警察用は拳銃弾と作り分けられている火薬式の銃があったらしい。
「そういうものなのか。」
「あぁ。じゃあ、METを起動している間に着替えようぜ!」
「え?なんでだ?」
「治安部隊の戦闘服を着た10人に銃を向けられたらビビるだろ?あいつらの情けない面を見て笑ってやろうぜ!」
「そりゃいいや!ははははは!」
シオは起動したボタン型METを戦術端末に、単5METを小火器にセットして起動すると設定を行った。
最初に行うのは戦術端末と小火器のリンクだ。
リンクさせずにスタンドアロンで使用する事もできるが、戦術端末からの支援や他の隊員とのデータ共有ができなくなってしまう。
次に行ったのは、隊長権限を持つ戦術端末を探す事だった。
隊長権限さえあれば、他の端末を自由に操れるのだ。
この星では軍でも警察でも6名で1個分隊を構成する事、12セットの武器があった事から、シオは2つの隊長権限の戦術端末があると予想していたが、その読みは当たった。
シオは先任隊長用の戦術端末を自分用とし、もう1つの隊長用は誤操作を防ぐためにボタン型METを外しておいた。
そして早速、誤射されないように、全ての小火器の安全装置を強制的に掛けておく。
次にレーザー銃の威力を対人殺害モードとし、自動照準補正がデフォルト設定の有効となっている事を確認すると、続いてコイルガンも威力を対人殺害モードとし、無駄玉をなるべく減らす為に連射には時毎秒5発となるように設定した。
「着替え終わったぜ!」
「じゃあ、サイズの合うヘルメットを探しておいてくれ。セッティングするから、まだ被らなくていいぞ。」
シオは手早く治安部隊の制服に着替えた。
軍の戦闘服と基本的には同じなので手慣れたものだった。
「じゃあ、一人ずつ射撃訓練するぞ!」
結果は惨憺たるものだった。
レーザー突撃銃は、戦術端末による自動照準補正のおかげで全弾センターを撃ち抜いてはいる。
しかし、短機関銃の方は単射にもかかわらず弾着はバラバラだった。
連射の場合は言わずもがなだ。
ただ、大昔の火薬式と違って、カウンターウェイトを電気的に駆動しているので連射をしても銃口が天井を向くといった事は起きなかった。
そして、レーザー短銃に至っては壊滅的で、標的紙にすら当たらない事が珍しくなかった。
最後の護身用で大きさも小さい事から、戦術端末からコントロールする機能がほとんど無いので、持たせるのは危険だろう。
「こりゃ、レーザー突撃銃以外は使えないな・・・」
「いや、そうでもない。実体弾のコイルガンは衝撃波で音が出るから威嚇には向いている。」
「なるほどな。」
「ただ・・・レーザー短銃は使うのは止めておこう。フレンドリファイアは御免だ。」
「フレンドリファイアって何だ?」
「同士討ちの事だ。あぁ、そうだ。弾は使いきれない位あるから、コイルガンの掃射の練習だけしておいてくれ。」
「分かった。どんな風にすればいい?」
「そうだな・・・連射で左右に薙ぎ払うように撃って、弾倉が空になったら交換かな。マガジンポーチに10本入るから、合計11本も撃てば慣れるだろ。そうだ、念の為に最初に空マガジンで弾倉交換がスムーズに出来るように練習しておいた方がいいな。」
「じゃあ、練習してくる。終わったら戻ってくるよ。」
「よろしくな。弾倉への再装填もしておいてくれ。それが終わったら作戦会議だ。」
仲間が射撃場に入るのを見送り、シオはレーザー短銃から単5METを抜き取っていった。
ただ、ミリオタのプライドなのか、自分だけは上手く使えると信じており、一丁だけは抜き取らずに自分のホルスターにしまっている。
「さて・・・と。」
シオは隊長権限の戦術端末を用いて皆のカメラ映像を確認した。
横方向に弾をばら撒くだけなら何とかなりそうだ。
弾倉の交換はぎこちないが、その隙を突いて反撃してくるようなプロが相手ではないので及第点だろう。
「よしよし、みんな守ってるな。」
モニターには、皆が弾倉への再装填を行い最後に弾倉でテーブルを軽く叩いている様子が映し出されていた。
現代のコイルガンではそんな事をする必要性は無いのだが、シオの拘りでそうするように言っておいたのだ。
やがて作業が終わると皆は射撃場から出て来た。
「よし、準備できたな。これから作戦を伝える。」
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