第107話 トントン拍子

「……それで、今回私達がここに来たのは、メルに頼みがあったからなんだけど……」

「良いですよ」

にっこり笑ってマリィさんに答えるメルヘング三世がそこにいた。

「まだ何も言ってないケド……」

「でも良いですよ」

「……いいの?」

「はい!」

話のテンポが早い。


「輝様、良いですって!」

輝く笑顔で振り向くマリィさん。

「よ、よかったですね……で、でも、説明はいりますよね」

怖いマリィさんを知ってるだけに、このギャップには一歩引いてしまうものがある。

でも、これであとアマンダさんと合流出来れば当初の目的は達成だ。


「───ロングバマまでは輝様のお持ちになられているマジックアイテムで移動して、そここらアレハンナで遺骨や遺品を回収してマハタシティの遺族に引き渡す……そういうことですね?……なんて素晴らしい!……素晴らしい慈善事業ですわ!!」

メルヘング三世は、胸の前で手を組んで神に祈るようなポーズをとりながら感激している。


「慈善事業……特に営利目的あるわけじゃないけと……事業って響きは抵抗あるかな……」

あまりの勢いにここでも一歩引いてしまう。


「こんな素晴らしい慈善事業に協力させていただくことが対価になるだなんて!!」


「────え?対価??」


メルヘング三世の口から予想もしていなかった言葉が飛び出した。


「はい、申し遅れましたが東の魔女様からご提案がありまして、輝様達からの依頼を受ける対価として領地の復興に協力して下さると……」


それを聞いて振り替えるとマーベラは微笑を浮かべていた。

東の魔女マーベラが僕達が食事をしている間に手をまわしていてくれたらしい。

「マーベラさんありがとう!」

僕がマーベラの所に歩み寄ろうとするとマーベラは片手でそれを制止するような手付きをした。

「いえいえ、まだ私は貴方に対価を返しきっていませんからね」

そう言ってマーベラはウィンクを返してきた。


「皆さん、今日はお疲れでしょう。今日のところはお休みになられて、旅立つ準備は明日にされては?」

その場にいた皆はマーベラの言うことに賛成して各々の家に戻って準備をして明日またここに集まるということになった。


僕も久しぶりに自宅でのんびり過ごす事にした。

ゆっくりお風呂に入ろうかな!?

そうしてギルドの扉を使って僕らは解散したのだった。



「────私は罪深いな」

最後に一人だけになったマーベラは例のマスクを懐から取り出して見つめながら独り言を言うと呪文を唱えた。

マスクが炎で燃え上がった。

「伝えるべきか、伝えざるべきか……今なら伝えることも出来ただろうに……」

炎を見つめて呟く。

「手のひらで踊っているのは一体誰なのだろうかな……」

しばらくして炎が消えると辺りは真っ暗になり、マーベラの気配も闇と同時にそこから消えたのだった。

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