第106話 ギルドにて

「そう言えば私たちギルドとメルヘングバッハの二手に別れるとか言ってたのに、メルヘングバッハの宿に着いたらなんか忘れてくつろいでしまってましたね」

「あ、本当は僕がギルドに行くはずだったんでしたっけ!宿に来るときに色々話していたから忘れちゃっていました!」

「いや、これはもう全員でギルドに行けって事だと俺は思うぜ。これだけ待って現れないんだから、次の一手を指した方がいい。この場合は当初目的にしてたメルヘング三世のスカウトだな」

「もう……アマンダったら皆に心配かけて!なにやってるんだか!」

「とりあえずギルドに向かいましょう。何か分かるかも知れないですし、少くともメルヘング三世さんと話すことは出来るはずです」


それからすぐに僕たちはそのままギルドに移動した。


「─────お待ちしておりました」

ギルドへの扉を開き、扉だらけの部屋からカウンター奥を通ってフロアに出ると、そこにはギルドマスターの他に東の魔女とノマドさんが居た。

でもなにかフロアの雰囲気が違う。

クエスト依頼を探している冒険者や、いつもはいるはずの受付嬢が今は誰もいないからだろうか。


「なにかいつもと雰囲気が違って静かなもんだな。毎日これなら貴族の坊っちゃん嬢ちゃんに王宮に上がる試験勉強も捗るって宣伝できるぜ」

デッカーさんがおどけながらギルドマスターに話しかけた。

「今はそんな軽口叩いても絡んでやれねぇよ。ここはちょっと人払いをしたんだよ。助けた貴族は少し応接で休んでもらってる」

そう言いながらギルドマスターがノマドさんに目配せする。

「輝様。ご無事で何よりです。お疲れ様でした。あれから色々調べて少しわかったことをお伝えしたいと思います」

「まず最初に、あの宝島の開かずの間……宝物庫は今後立ち入られないようにお気をつけください」

「もしかして、僕が放り込んだあの王冠のせい??」

「はい。あの王冠については詳しくはマーベラから……」

ノマドさんがそう言うと、東の魔女マーベラが話を始めた。

「あの王冠は人数制限や範囲の制限はあるけれど、洗脳の魔法がかかっているわ」

「洗脳!?」

「なかなか嫌な洗脳よ。基本的には本人の性格のままに動くのだけれど、幻覚を見せ使命を与えてそれを第一義とさせ……」


うーん、ちょっと難しい説明になってきた。

つまり、あの王冠があの館にいた人達を洗脳したってこと??それとも王冠が洗脳の魔法がかかったっとこと?第一義??うーん……

そんな事を考えてた僕の表情を読み取って東の魔女が微笑む。

「簡単にいうと、あの王冠を使って悪さを企てた輩がいて、その被害者を輝殿達が解放したということです」

「でも、洗脳された者達が解放された今、あの開かずの間に入れば、たちどころにあの王冠の新たな洗脳の被害者となるでしょう」


……あの王冠の近くに行くと洗脳されちゃうのか。だからあの部屋には入れないってことかな?


「あの王冠を封印する場所に開かずの間を選び、しかも開かずの間に入らずにこれを行ったと言うことは称賛せざるを得ません」

マーベラが僕たちを誉めてくれた。

「あまり深く考えてなかったけど……」

「あの部屋なら宝島の地中深くであり、何人も近づくことは叶わないでしょう」


「それならとりあえず心配ないですね。あとはメルヘング三世さんと話をして、アマンダさんと合流して……ってそう言えば、アマンダさん見ませんでしたか?」


「いえ?見ていませんね……」

マーベラがそう答えた。

その時どこかで鈴の音が聞こえたような気がした。

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