第105話 空気をスカウト
僕たちが食事を終えて宿に戻ってもまだアマンダさんは宿には戻ってきていなかった。
僕たちが宿に着くと奥座敷に通されたのでお腹いっぱいになっていたこともあって、少し長椅子でくつろがせてもらった。
その時は少し待っていたらアマンダさんが宿に戻ってくると思っていたんだ。
でも、かなり時間がたって日が暮れてきたというのにアマンダさんは宿に戻ってこなかった。
「どうします?ギルドに一度戻りますか?それとも尋問が終わっているかもしれないし、館に行ってみますか?」
しびれを切らした僕がマリィさんとデッカーさんに話しかけた。
「どちらかと言うと館よりはギルドに戻った方がいいと俺は思うぜ。あそこなら少くとも髭マスターはいるしな」
「まぁ普通ならそうよね。ギルドに一度戻るのも悪くはないわ。……でもわざわざ人払いしてまで東の魔女とノマドさんは館で何をしてるのか、それも気になるところよね」
「でも、よく考えてみたら、元々の目的だったメルヘング三世さんとまともに話をしてないような……?」
「──────よく考えてみたらそうですね」
「メルヘング三世をスカウトに来たのに、一番の目的すっかり忘れて俺らだけ飯食いに行ってちゃ世話ねーな」
「助け出したあとは完全に空気でしたね」
「マリィさん、空気だなんてあんまりですよ……僕は気づいてましたよ。あの二人は救出された人達に囲まれて談笑っていうか社交っていうか……なんか貴族~って感じの華やかさって言うか、僕には近づけないオーラが出てたので……」
「あー、東の魔女の出したお菓子食べながらなんかしゃべくってた塊のなかにあの二人も居たわけですね」
「そうです。あの塊の中心にいましたね」
「じゃあとりあえずギルドに顔だしてメルヘング三世をスカウトする方向でいいか?」
「今回はメルとは交渉する必要はないでしょう」
「え?スカウトしないんですか??」
「いえ、そうではなく……。今回、我々は彼女にとって命の恩人と言っても過言ではないはずです。交渉なんて生温いです。嫌だと言っても連れていきましょう」
「ただし、杖持ってないメルはただの役立たずですので杖は調達しなきゃいけないかも知れないですが……ギルドに行けば杖の二、三本在庫で転がってますから心配ないでしょう。……さて、輝様、ギルドに繋がっている扉をくぐってメルの所に向かいましょうか」
なんかどんどんマリィさんが男らしくなっていくような気がします。
最初は凄く綺麗な受付の人ってイメージだったのだけど、なんだか最近は決断力っていうか、判断力が男の人より男らしいっていうか……
でも頭でそんな事を思ってしまっても、そんな事を口にしたら、多分すごく怒られるので僕は絶対口にはしませんけど……ね?
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