第103話 私達待つわ
「結局アマンダさん現れませんでしたね…」
食事が終わった後もかなり雑談して長居をしていたが、結局アマンダさんはお店には来なかった。
まぁ、食事でもして待ってろとはメモに書いてあったけど、具体的にあの店で待ち合わせをしていたわけではなかったし、時間にしても決めてあったわけではなかった。
「とりあえず我々はどこでアマンダを待つべきなんだろうな?メルヘングバッハか、ギルドか……」
「まぁ、普通に考えたらメルヘングバッハでしょうね。関係者はギルドに避難してますが、元々アマンダと別れたのはメルヘングバッハなんですから」
「でも、二手に別れてアマンダさんが帰ってくるのを待つというてもありますよ!」
「……輝様の提案が一番良い手かも知れないですね。こちらは三人いるのですから」
「そうだなぁ、それならどっちに転んでも合流出来そうだしな……」
「それじゃ、俺はメルヘングバッハで待つから、二人はギルドで待っててくれ!」
「いえ、私もメルヘングバッハで待ちたいと思います」
あえてマリィさんはメルヘングバッハで待つと言う。
「ん?俺一人じゃ心配か?」
デッカーさんとしてはマリィさん的にはきっとギルドで待ちたいと思うだろうと、気を利かせたつもりだつたはずだ。そこをあえてマリィさんはメルヘングバッハで待つという。
「……いえ、ただ単に、ギルドに居るのが気まずいというか……ギルドマスターがどうとかないんですがね、東の魔女の前で平静を保っていられるかな……と」
「その辺は俺と同じだな。俺の場合は、東の魔女は俺にとっての恩人みたいなものだ。今回みたいに仮にも恩人を疑うような状態で、俺はあの人の前に出たくないというのが本音だ」
「……かといって誰もこの状況でギルドにいないというのも如何なものかというところもありますし、尋問の結果など状況は把握しておきたいですよね。できれば、その辺は輝様にお願いしたいのですが……」
「ええ、お二人がそういう感じなら、ぼく構いませんよ。僕は特に東の魔女の前に出ても変な動揺はしないと思いますし……」
「面目無い……年上の俺たちよりよっぽど輝様のおうが肝が据わってるみたいだな」
「いや、そんなことないですよ!」
───実際そんなことはないのだ。ただ単に、僕は前に一度、東の魔女に疑いの目を向けたことがあったから、誤解を恐れず言えば、東の魔女を疑うのには慣れている。
東の魔女を疑うのは二回目であるからこそ、二人から見れば肝が据わってるように見えるのだと思う。
あとは東の魔女はノマドさんが信用している人なのだから大丈夫だという自分の中での信頼の気持ちもあり、平静を保つ自信があるだけなのだ。
「後はアマンダと無事合流出来たら考えましょう。────しかし、アマンダ今なにやってるんだろ?」
ぼくらはそんな話をしながら宿に向かって歩いたのだった。
───この時点では僕らはアマンダさんがピンチに陥っているなんて、これっぽっちも思っていなかったんだ。
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