第75話 アマンダは何処だ

「うーん、ちょっとお腹いっぱいだ……」

「マリィさんよぉ、これであと何ポイントだ?」

「これで今18ポイントだから、あと7ポイント分の何か食べて……」

「ちょっと、ドリンク一杯0.5ポイントって、割に合わない感じじゃないですか!?」

「いくら喉乾いてても、そんなに大量に飲めないしな!」

「誰よぉ、脂っこいもの最初から頼んだ人はぁ~!?ちょっと責任取って、この唐揚げ全部食べて~」

「脂っこいもの頼んだの、マリィさんですよ~!」

「え~!?わたしだっけ??」

「俺は最初からヘルシーなのにしようって……」

「───言ってない!」

「この肉団子、旨いからって追加は誰がしたのよ~」

「それもマリィさんですよ~」

「え~!?これもわたしだっけ??」

「だから俺は肉団子じゃなくて、『厚切りステーキ山賊風』にしようって言ったんだよ」

「それはさっき食べてキツかった奴ですよ~」

「今日はもうギブアップだわ~」

「そうですね、これはちょっと三人で25ポイントを一食でって厳しいですね……」

「そうだよなぁ、元々冒険者向けで盛りがいいからなぁ……」

「悔しいけど、アマンダの情報は明日にしましょうか……」

三人で頑張ったけど、情報を貰う為に必要な25ポイントには7ポイント足りなかった。

もう満腹で入らなかったから、ちょっと料理も残ってしまった。

でも、もう僕らのお腹は限界だ!!


「スミマセン!お勘定お願いします!」

僕が店員さんを呼んだ。

────その時、衝撃的なことが判明した。


「残されたお料理、テイクアウトされますか?容器は無料ですが?」


「……え?テイクアウトできるの?」


「はい、テイクアウトも対応しますし、冒険へ行くなら予約も対応しています。ポイントが必要になりますが、配達もしているんですよ?」


「……どうする?今更だけど、何か追加でテイクアウトして7ポイントゲットするかい?」

「わたし、もう食べ物見たくない……」

「僕も、正直今は……外の空気を早く吸いたいです」

「満場一致だ。今日はあきらめて、明日出直すか……」


僕らは満腹のお腹を擦りながら外へ出た。


「何処か泊まるところ探さないとですね」


「お客様、近くの泊まるところでしたら、この酒場の上の階も宿屋が入っていますし、隣の通りにも宿屋がございます」

入り口の酒場の呼び込みが僕らに教えてくれる。


「僕、満腹過ぎてちょっと夜風に当たりたい気分です……」

「そうだな、腹ごなしに散歩しながら行くか……」

「ちょっと時計塔もみたいしね……」

本当は酒場の上の宿屋に行った方が良かったのかもしれないけど、僕らはちょっと外で休みたかったと言うのが本音だった。


後から思ったけど、そんなに簡単にポイントが貯まりすぎたら、あの酒場の経営が上手く行くわけないよね。

多分ちゃんと儲かるように計算されているんだろうなぁ。

それでも僕らはポイントの為に食べなきゃいけなかったわけで……。

僕らは店にとってはいい鴨だったね。

でも、明日には情報を得るだけのポイントは貯まるはず。


そんな事を考えながら、とりあえず時計塔を目指した。


来るときは路地を抜けて来たけれど、今回はそこまで急ぐこともないから大通りを歩いて時計塔に向かった。


大通りは商店が多く、人の往来はセントルーズ程ではないけども活気は感じられた。

相変わらず僕はこちらの文字は読めないんだけど、大通りの店にはアイアンワークの綺麗な飾り看板かレリーフがあって、文字が読めない僕にもなんのお店かわかるようになっていた。

路地にあるお店はというと、木製の看板にペンキで絵を描いてあったり、手書きで文字が書いてあったりして、手作り感が感じられ、ちょっと質素な感じ。

そう考えると、大通りに出るくらいの繁盛店は看板にこだわっている感じがするし、看板はある種のステータスなのかな?


時計塔の通りが見えてきたが、そこには警戒線が張られていた。

「こっちは通行止めだから、迂回してくれ」

警戒線の警備に当たっているのは領主の派遣した衛兵らしい。

僕らが酒場で悪戦苦闘しているうちに、衛兵が来て通行を規制してしまったみたいだ。

ちょっと失敗だったか……?


「あの時計塔に居たのはワイバーンだったのかい?遠目では見てたんだがな、良くわからなかったんだ」

デッカーさんが衛兵に話しかける。

「今、調査中だ。冒険者か?必要なら酒場にクエスト出すからそれまで我慢しろ!」

「そんなこと言わないで、ちょっと位教えてくれよ~」

「ダメダメ、しつこいと留置場で一晩過ごす事になるぞ!」


衛兵は全然取り付く島がないので草々に諦めた。


「仕方ない、宿を探して、もう今日は休むとするか」


「もしかしたら酒場の隣の通りなら、時計塔の状況見えるかもね」

「マリィさん、あんた頭いいな!」

「今頃気づいたんですか?セントルーズのギルドは私の頭脳で持っているんですよ!」

笑いながらマリィさんがデッカーさんに話す。

「そうだよなぁ、マリィさんがいなかったら、とっくにセントルーズのギルドは無くなってるよな!」

マリィさんとデッカーさんが大爆笑しながら路地を曲がっていく。

僕はその後ろをニコニコしながらついていった。


「ここがさっきの客引きが言っていた宿屋だな。ここならもしかしたら、上まで上がれば時計塔が見えるかもしれないな」


僕らは部屋が空いていないか聞くため、宿屋に入った。

宿屋のカウンターには店番と思われる若い女性が一人。


「あら、マリィじゃない?久しぶり!」

「え?アマンダ!?何でここに?」

「ここ、私が経営してるの!今は私、宿屋の女将なのよ!」


──唐突に探し人が見つかった瞬間だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る