第74話 暗殺者を探せ
僕らはとにかく急いで矢の放たれたと思われる場所に急いだ。
でも、路地が複雑で真っ直ぐに行けるわけではないから時間がかかってしまった。
「この建物か、もうひとつ向こうの通りの建物の最上階位から弓を射たと思うのだけど……」
「本当は二手に別れて探したいところだけど、アマンダの顔を知っているのは私だけだからね……。でも、変装も得意だったから、その気になれば、私に気づかれないようにする事も彼女には可能よ」
「それなら尚更、今行けば弓を持っているだろうから、二手に別れても僕らでもアマンダさんだとわかるんじゃないですか?」
僕は思ったことを聞いてみた。
「アマンダは元暗殺者って説明したけど、証拠は残さないし、仕事の後はすぐに人混みに紛れるわ。暗器って知ってる?隠し武器の事なんだけど、日用品から衣類とか、アマンダは身体中にそう言った隠し武器を忍ばせているの。弓なんかも、使ったらすぐに解体したり、隠してしまって、弓と判別できないようにしてしまうわ。過去に私が見たことのある弓の隠し場所と言えば……例えば杖だったり、釣竿だったり……それこそすぐに折って焚き火の中にくべてしまったり……」
「僕わかっちゃったかもしれないです……」
マリィさんがアマンダさんの凄さを力説していたけど、僕はアマンダさんがどこにいるかわかってしまったみたいだ。
「え!?」
僕の言葉に驚くマリィさんを尻目に、ひとつ向こうの通りの屋上にいる女性を指差す。
「きっとあの屋上でシーツを干してる女性……このワイバーン騒ぎの中で、平気でシーツを干してる人が居るわけがないと思います……。少なくともアマンダさんかどうかわかりませんが、只者ではないと思います」
マリィさんが目を凝らして見てみるが、距離がありすぎてわからないみたいだ。
「ちょっと待ってくださいね……」
僕は現世から持ってきた、スポーツ観戦用双眼鏡をマリィさんに渡した。
「おお、見える!こんなに小さいのに見えるぞ!!」
昔母が買った30倍の双眼鏡だが、僕がサッカー部を辞めてからは使用する事が無かったみたいなので拝借してきた。
思えば現世から持ってきた物が、初めて役にたったかもしれない。
「雰囲気がちょっと違うかもしれない……あ、気づかれた!?」
「この距離でこちらに気付いたのか?」
デッカーさんが驚くのも無理はない。
まだ距離が有って、マリィさんが双眼鏡でやっと判別できるレベルだったからだ。
「うーん、こっちに気付くとすぐに消えてしまった……とりあえずあの建物に行ってみよう!」
僕らはまた急いで路地を抜けて、さっきの建物を目指した。
「……これって例の酒場?」
行き着いた先は大通りに面した酒場だった。
「とりあえず入ってみるか?」
「そうですね……どのみち手がかりを探しにここへ来るつもりでしたから……」
僕はマリィさんとデッカーさんの後について店内に入った。
店内は昼間にも関わらず大繁盛で、ワイバーン騒ぎの影響は無いように思われた。
「……なぁ、なんかもうここ、冒険者ギルドって名乗っても問題ない雰囲気じゃないか?」
デッカーさんが言うように、冒険者か集まる酒場があり、クエスト募集の掲示板には多くのクエストが並んでいた。
「冒険者ギルドってだけじゃなくて、商人ギルドや鍛冶ギルドで扱うような情報も並んでいるわね……」
現世で言えばハローワークみたいな感じかな?
色んな仕事の募集が多くならんでいるみたい(僕は字が読めないから、詳しくはわからないけども……)
ある意味好立地の酒場の集客力を利用してのギルドの営業妨害とも言えるかもしれない。
ギルドが年間の会費と、ギルドへの依頼からの手数料と酒場の運営でやりくりしているなか、こちらは酒場の飲食代収入だけでやっているらしい。
飲食代に応じてポイントが付き、クエスト依頼や、ギルドが有料でやっている捜索保険なんかもポイントで支払いが可能らしい。
町での滞在中は皆がギルドに行かず、ここで食事をするわけだ。
ギルドで食事するよりも、明らかにこちらで食事した方が得なのだから……。
マリィさんが、カウンターにアマンダさんの事を聞きに行った。
僕とデッカーさんは座れるテーブル席を見つけて腰を落ち着けた。
しばらくするとマリィさんが戻ってきた。
「さぁ、飲み食いするわよ!」
手にはもうすでにメニューを持っている。
「アマンダさんの情報は?」
僕がそう聞くと、マリィさんは少し青筋を立てて怒った口調になった。
「ここの情報は基本的にポイント制なんだって!飲食代で付くポイントじゃないと、支払えないんだって!クエストで捜索願い出すなら無料で掲示板使えるらしいけど、結局はクエストだから情報提供者に報酬が必要になるわけ。それだったら飲んで食べた方が得なんだって!良くできてるわよね!アマンダ探しの情報は25ポイントだって!みんな、気合い入れて飲んで食べるわよ!」
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