第8話 エンジンチェック

グッチーノは、バイク屋の中に置かれた。店主は、ちょっと離れた位置からグッチーノを全体的に見ると、ガソリンタンクのキャップを開けてペンライトで中を覗いたりしている。


ガソリンの入った病院の点滴のような器具を持って来ると、ホースをキャブレターに繋いだ。キャブレターのティクラーを押してから、キックレバーを何度か蹴ってみる。何の反応もないので、スパークプラグを外してスパークプラグの先端をエンジンに当てて、またキックレバーを蹴ると、先端からパチパチと火花が飛んだ。


店主はプラグを戻して、今度はキャブレターを外すと、分解してパーツクリーナーをスプレーして各部の穴がちゃんと通るようにした。再びキャブレターを取り付けて、またキックする。


何回かキックすると、プスッ、パスッ、ババババンと音がして、あっさりエンジンがかかった。マフラーから白煙がもうもうと吹き出して、店の中が真っ白になる。アイドリングは不安定だが、異音もなくコンディションは良さそうだ。


「元の程度も良かったようですし、保管も良かったようですね。塗装も当時のままですし、ほとんどオリジナルコンディションです。おじいさんは目利きだったんですね。」


店主は満足気に言った。


美生みおがふと有希ゆきを見ると、有希は泣いていた。美生がそっと有希の顔を肩に当てさせてやる。この時ばかりは、けいも何も言わずに見ていたのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る