第4話 ハイエナ

有希ゆきの祖父が亡くなってから、49日も立たない内に祖父の友人と名乗る人が何人も訪ねて来るようになった。別に線香を上げに来た訳ではなく、祖父の生前、祖父が亡くなったら、バイクを譲ってもらう約束をしてたと言うのである。


祖父のバイクを引き継いでくれるなら、祖父も喜ぶだろうと有希の父と母も喜んで多少は安くてもいいかと思っていたのだが、形見としてタダで貰えると約束していたとねじ込まれて困ってしまった。そういう遺言や証書がある訳でもないし断っていたのだが、あまりにしつこい人には代わりにこれも祖父のコレクションであったバイク関係の本などを渡して帰ってもらったりした。


そういう人たちが事前の約束もなしに、平日の日中でも夜間でもやって来るので、有希の母がまいってしまい、生前祖父が出入りしていたバイク屋に全部処分してもらうことにしたのである。


バイク屋は大きなトラックでやって来て、30台以上あったバイクもガレージや祖父の部屋にあったバイク関係の物も根こそぎ全部持っていった。だが、払っていったのは、50万円程度であった。


いわく、祖父は5年程寝たきり状態だったので、その間にバイクが不動状態になっている。買って置いているだけだったので、このままでは売り物にならない。バイクはみな古い外車で、そんな価値がある訳ではない、トラックを借りてきて、手伝いの人手にも費用がかかっている、などなど。


有希の父ももううんざりしていたので、とっととバイク屋を帰してしまった。バイクには興味がなかったし、生活に不自由している訳でもなかったからである。


だが、しばらくして気になり、そのお店のホームページを見てみると価値がなく、すぐには売り物にならないはずの祖父のバイクが、高い値段で売りに出されていた。


有希の父が電話で苦情を入れると、吐き捨てるように言い返された。


「うちが買ったバイクをいくらで売ろうが、うちの勝手だ!」

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