第3話 グッチーノ

「モトグッツィのグッチーノですね。」


画像を見たバイク屋の店主が言った。モトグッツィはイタリアで現存する最古のバイクメーカーであり、ドゥカティよりも長い歴史がある。


そして、グッチーノは戦後すぐの時代に作られた2ストローク65ccのバイクだった。グッチーノというのは、『グッツィの小さいの』みたいな意味の愛称であるらしい。このグッチーノも当時のイタリアでは人気があって、多くの車両が現存している。


店主の説明を、美生みおけい有希ゆきは興味深く聞いていた。


「修理をお願いすることはできますか?」


「車両のコンディションによっては、時間がかかりますが大丈夫です。」


有希の実家は群馬県高崎市の郊外らしい。店主が引き揚げに行く時間がないということで、レンタカーを借りて引き揚げに行くことになった。レンタカーにバイクを載せるためのラダーレール(渡し板)とバイクを固定するためのタイダウンベルトは、店主が貸してくれると言う。


ここで店主が美生と佳も疑問に思っていたことを聞いた。


「おじいさんがお世話になっていたお店にお願いした方がよくないですか?」


有希の人の良さそうな顔が曇った。眉がハの字に下がって俯きながら言った。


「前に他のバイクの処分をお願いした時に、トラブルになったんです。」


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