第10話 不明
カンナと正樹はどこにもいなかった。
陽は山稜に隠れ、街は薄暗闇に包まれている。
二人が最後にいたと思しき場所は探り当てた。しかし驚くほどに、痕跡がなかった。争った形跡はもちろん、誰かがいたことを証明する物証も何もない。
二人ともプロだ、数秒もあれば何かしらの手がかり残せるし、残す。犯人が持ち去ったにしても、あまりにも現場が綺麗すぎた。
何かが進行しているにも関わらず、正体を掴めない、私の一番嫌いな状態だ。
「しかたないね、今日はこれで切り上げよう」
「お二人はどこにいってしまわれたんでしょうか……」
「大丈夫、大丈夫、あいつらも覚悟はしてたさ」
「……ごめんなさい」
「泣くなって、遥香のせいじゃない」
「でも、でも、ふたりが、私さえ助けを呼ばなければ」
「あいつらは問題解決のプロなんだ、何があったにせよ、全部自己責任、なんなら、一番の責任はあいつらを巻き込んだ私にある、私は街を探してるんだよ、セイギの街ていうやつをさ」
「それが、ここなんですか」
「さあな、わからない、昔、私の命を救ってくれた恩人がいて、私は、その人を探してるんだ、その人は、私にセイギの街を目指せって言ってどっかに消えちまった、私はまたあの人と、会いたいんだ」
「……」
「だから、遥香の気持ちはよくわかる、街のみんなは私が見つけてやる、もちろん二人もだ、だから泣き止め、涙は正義を惑わせる」
「…………んん......はい!」
「よし、それじゃあ、遥香の家に案内してくれ、今日は泊まるからさ」
「こっちです、お夕飯作りますね」
遥香は小走りに私を先導する。
普段は元気が取り柄の女の子なのだろう。今は住民が消えた不安で陰りが見えるが、問題が解決すれば今みたいに街を駆け回る姿が見えるに違いない。
やっぱり、どこからどうみても、善良な一市民だ。
二人がいなくなった今、一番危険なのは私。
犯人が誰にせよ、これ以上の好機はないはずだ。
「さて、私は私をベットしたぞ、どう出る?」
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