第4話
月の見えない夜だった。銀の眼が閉じて、人を盲目にする朔。風の死んだ、つめたい空だった。
睿、
銃声が響いた。次いで弾丸が肉にめり込む音。僵尸の腐った頭蓋に届く、濃縮された殺意の須臾。
滅茶苦茶な形をした
彼は唯、
銃弾は
一瞬、
建物の隙間にわたされた
「……
彼の低くて穏やかな声に、
「人を狩ってはいけないと、前に云いましたね」
彼の足許に、血がぽたりと垂れた。編んだ髪に染み込んだ仇の血と、裂けた肩と貫かれた腹から滴る血だった。熱い。生きている血だ。彼は息を吐いて、奪われていく体温に低く呻いた。
「金髪の人間だけは別です。別なのです。舒舒。──私の舒舒」
「光る、髪の人間」
「そうです。貴女の云う、光る髪の人間」
月光を遮る
「貴女に銃を向ける者を、私は二度と赦しはしない。……」
影に引き入れられ、抱きしめられた。象牙の肌に、わずか黒い尾が残った銀の髪。
「いいですね、舒舒。私たちは常に追われている。戦わねばならぬのです。金色の髪、白い肌、淡い瞳。此れは私たちを脅かす者。私たちを引き裂く者。異邦人は崩壊の
彼の傷ついた躰にくちづけ、
おとなう・ものは・しの・ししゃ。
だれのための?
あわせた胸元を熱い血が伝い落ちていった。血をわけあいながら抱きあって、夜明けを待つ。ふたり、生死の境がわからなくなる。伽藍のなかのように、彼の囁く声が響く。合歓のごとく身のうちが侵食されて融け合うなか、睿の
「舒舒。私は貴女への愛を証明します。そうしなくてはならない。そうしなければ、何もかもおしまいです。
ねえ、舒舒。
貴女の名前が意味する、あの高貴な色と同じあの眼を、貴女に贈ります。それがより貴女の魂を強固にする。
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