第21話 レスリリアの巫女
前回のあらすじ。
五年ぶりに法都レスリリアに帰ってきた俺は、法王に案内されて巫女と再会を果たした。
しかし五年という歳月は俺が思っていた以上に残酷で、巫女は魔物のように変わり果てていたのだった。
まるで鳥のようだった。赤と黄色の派手な羽飾りが全身に張り付いているように見えるけど、もしかしなくても皮膚から鳥みたくなっているのだろうか。
クチバシがなくて人間みたいな形をしているから、なんだろ、半鳥人? クチバシないと気味悪いな。
うーん……、なんだろ。素直に気持ち悪い。
まあいいや。
「久しぶり、元気してた?」
「……ぜん……」
わあ、全然元気なさそう。うつむいてるから表情とかよくわかんないけど。
「で、でも……ま、まおっ……ま、みた……げ、げん…………た……」
「それは良かった」
これをどう連れて歩くか考え付かなくて、俺は全然よくないけど。布被せてみるか?
「魔王様」
「はい」
法王に声をかけられ、巫女の扱い方についての思考を中断する。
振り向いてみれば、法王はなにか仮面のようなものを俺に差し出してきた。
「これで顔を隠していれば、恐らく彼女の正体に気付く者はいないと思います」
「ふーん」
いやしかし正体ってお前……。
法王から受け取った仮面は、それはもう見るからに良く出来た鳥の頭だった。目の部分に穴が開いているけど、それはそれで気持ち悪い。羽の色は巫女に合わせた赤と黄で、試しに巫女の顔に被せてみると、一人の鳥人間が生まれてしまった。
「すごい良く似合ってるけど、なにこれ、手作り?」
「ええ、ゴードンがこのような細かい作業を得意としておりまして」
「へえ」
以外な特技だ。
「今度会ったらお礼しないとな」
「そのように伝えておきます」
言いながら、法王はさらに派手な衣装を持ってくる。やはりこの衣装も赤と黄を基本色としていて、どこからどう見たって巫女のために仕立てられたものだった。
「うわすっげ、これもゴードンが?」
「いえ、これは流石に仕立て屋に……」
なんだ。
いやでも、本当によく出来ている。これを着てしまえば、誰も彼女が巫女とは思わないだろう。
……いや、今もそうか。
まあいいや。
「じゃあほら、これに着替えちゃって。終わったら出ようか」
「は、はい……」
「着替え終わったら降りてきて」
言って俺は法王を手招いて先程の梯子を降りる。
「巫女の服っていくらしたんだ? 金はそれなりに持ってるから」
「いえ、あれは彼女への餞別ですのでお気遣いなど不用ですよ」
「そう」
そういうことなら、これは俺がどうこう言える話ではないということだ。
……て言うか、
「この通路って、教会にしか通じてないんですか?」
「そうですが……どうしてです?」
「あんな大道芸人みたいな格好で孤児院の中歩いてたら……ねえ?」
「ああ……」
妙に納得したような顔をされた。
いや、気が付こうぜ。本格的にボケ始めちゃったかな?
「この上は、小屋の一室です。小屋から外に出れば、誰にも見られることはないですよ」
法王は苦笑混じりに梯子の先に視線を向ける。
ふむ、どうやら、先程の表情は俺の発言に対してのものだったらしい。俺の考えの浅さを指摘しないでくれるところが聖職者らしい。
いや、聖職者というか、大人か。うん、大人だ。
「ま、まお……さま、お、おま、おま……せ……」
大人かー、と
この鳥人間は大人になったらどうな感じになるんだろう。もう大人だったりして。
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