第16話 砂城ルフユカヘトヌ―1
前回のあらすじ。
怪鳥レブヌスを見事討ち果たした俺達一行は、死をもたらすヘイルウェイ様の前で最後の城を目指して旅を続ける決心を新たにしたのだった。
※
レブヌスが巣食っていた城をチートでトラップキャッスル兼巨大な祭壇に変えた俺達は、
「どこ向かうんだっけ」
「しっかりしたまえ。半月も寝続けて頭がおかしくなったのか?」
「そんなわけないだろ」
俺の物覚えの悪さは生まれつきだ。
「最後の城はユーリュルリュワン皇国の北東にあるルフユカヘトヌ砂漠にある、レンソ盗賊団の根城になっている城ですね」
「盗賊団?」
「人間ということか?」
「そうですね」
今までで一番楽そうなんだけど。
「ふむ……旅の終わりがこうもあっけないと、不満が残りそうであるな」
「なに勝った気になってんだよ。まだ山すら下りてないだろ」
「魔王こそなにを言っている。サキュバスであるリューがこちらにいる時点で勝ったも同然だろう?」
思わずリューを見る。
「どうしました?」
「いや……」
以前レイに教えられたサキュバスの擬態前の姿は、(俺がリューよりも早く寝て遅く起きるため)未だ目にしたことはない。色々な意味で強烈とエィンは言っていたが、でもレイやユニには効いてなかったし……。
「いまいち信頼出来ない……」
「えー?」
レブヌスを我等が神に捧げてから七ヶ月。俺達はルフユカヘトヌ砂漠をさまよっていた。
「まだ着かないの? そろそろ食糧が底を付きそうなんだけど」
「まっすぐ歩けば一日で着くはずなんですけどね……」
「さながら、自然の要塞だな。そもそも城に辿り着けないとは」
「くっそー」
俺達は砂漠で一週間近く右往左往している。
完全に舐めきっていた。魔物じゃないんだから、と油断していたけど、こんな上を見ても下を見ても砂しか見えない土地に拠点を置いているのだ、そう簡単に見つかったら盗賊団なんて続けられる訳がない。
て言うか、砂漠に城なんてどうやって建てるんだよ。土台どうなってんの?
…………、
「多分、どこかに目印があるはずなんだよ」
「どこかとはどこだ?」
「俺が知るわけないだろ」
「だろうな」
わかってんなら聞くなよ。
それで、何処かに目印がないと盗賊も城に帰ることが出来なくなる。だけどあんまり分かりやすい目印だと簡単に城の場所が知られてしまう。
ダミーの目印も含めていくつか用意して、正しい経路を選ばないと絶対に城に辿り着けないような……ん? それだと俺達、城を見つけられなくないか?
「魔王よ、まだ出し惜しみしてる宝があるなら出してみろ。今が使い所ではないのか?」
「あと残ってんのは……腕輪と冠か」
例のごとく欠陥品だけど、腕輪は魔法を無効化して、冠は魔法障壁を生み出す。
「……いやどっちも使えねーな」
「何故だ?」
「魔法無効化するか、魔法の壁作るか」
「む……確かに、どちらも有効利用出来なさそうだ」
砂漠の目印なんて魔法以前の問題だし。ありゃ生き残るための知恵だ。
「どうするか……砂嵐止むまで待ってみる?」
「却下だ。少ない食糧でそれは悪手だろう」
「この砂嵐がいつ止むのか、どれくらい止むのかもわかりませんしね」
ですよねー。
しかし、来た道を帰ろうにも、そのための食糧がない。
「魔王よ、なにか手はないのか?」
「試してないけど、ひとつだけ」
「それは食糧が尽きる直前までとっておくべきだろうな」
「お? なにか考えがあるみたいだな?」
「魔王頼みなのだがな」
どういうこっちゃ?
「なに、我等が魔王様の直感に私達の運命を託そうというだけだ」
「死ぬ気?」
俺の勘とか見当とかは大体外れているのを忘れたのかな?
「魔王の直感が外れるからこそ、なのだよ。魔王が示した方向とは逆に向かうのだ」
「おお」
「いや『おお』じゃないだろ、なに感心してんだよ」
「でもいい考えだと思いますよ?」
「そんなわけないだろ」
極限状態まで追い詰められた人間みたいに支離滅裂な考えだと思うんだけど。
「試してみる価値はあると思うのだがな」
あるわけないだろ。
……まあでも、万が一それで辿り着けるならその方が良いけど……気は進まないけど、気分転換がわりに試させてやるか。
ついでにその考えが間違ってることを証明してやる。
「じゃあ……こっちかな」
俺は奇跡の袋を空中に放り投げ、風に流されて落ちた方とは逆の方を指差す。
「よし、では向かうとしようか」
そう言って、エィンは砂の上に落ちた奇跡の袋を俺に投げ渡しながら歩き出す。
俺が指差したのと逆方向、つまり、奇跡の袋が落ちた方へ。
「…………」
いや良いんだけどさ、俺も賛成したわけだし。
でもなんだろう、
「すっげームカツク」
「まあまあ、きっと上手くいきますから」
「それはそれでムカツク」
上手くいかなくてもムカツクけど。
「はぐれても知らんぞー」
「だったら待てよ」
「そんな時間はないだろう?」
「そうですよ、魔王様」
なんで二人とも余裕そうなんだよ。もっと緊張感持とうぜ。
それから一分と歩かないうちに、俺達の目の前に突然砂色の布に覆われたナニカが現れた。
「……なにこれ」
「城だろう」
「城でしょう」
「やっぱそうだよな」
なんで布被ってんだろ。
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