第9話

俺は昨日以上に何をしていいのか分からず、結局大型銭湯でゴロゴロしながら婆さんがかけた魔法について考えていた。

婆さんは、「命を粗末にするな」と言っていた。だから月曜日が来ないようにした。

それ正解。

でも、魔法が解ければ月曜日になる。

それも正解。

月曜日が来ればお金もないし会社にも行きたくない俺は自殺するしかないし、そう決めていた。

それ正解。

だから、婆さんがかけた魔法ってのは意味をなさない。

それ正解。

だか、婆さんはこんなことも言っていた。些細なことで運命は変えられるみたいなことを…。

どうやって?同じことが起き続けるんだろ?

ってことは結果も常に一緒ってことだよな…

じゃあ何も変わらないんじゃ…

悩み考え疲れた俺は、婆さんに会いに行って話を聞くことにした。場所は覚えてるが時間の記憶が曖昧だったから、その場所の近くで婆さんが現れるのを待った。

一人一人を鮮明に覚えている訳ではないが、自分の目の前を…街を行き交う人みんな、何となくだが記憶にあるような気がする。会話といい、表情といい…。

だが、いくら待てど婆さんは姿を現さなかった。不安になった俺は、婆さんがいた場所の横にあるコンビニの店員に婆さんのことを聞いてみた

「お婆さん?占い?横で?いつです?俺、だいたいこの時間のバイトしてるんですけど、そんな人見たことないですよ。場所違いじゃないですか?っていってもこの辺りでそんな占いしてる人自体見たことないですけど」

どういうことだ?あの婆さん自体が存在しないのか?あの婆さんがいないとなると、魔法がいつ解けるのか…とか全てが分からないままじゃないか。俺の頭はパニックになった。

ただ、今この場所にいても無意味ということだけは理解できたので、仕方なく俺は家に向かって歩き出した。そして家に着くと昨日同様に猛烈な睡魔に襲われ寝てしまった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る