第5話

結局、俺には答えが出せなかった。欲しい物を買っても明日死ぬなら意味がない。何かをする。っていっても1万円しかないし、プチ旅行をしたとして…もう昼過ぎだし行ける範囲も限定される。根本的に一人行動だから…レジャー施設等にも行きにくい。そんな俺が行き着いたのは大型銭湯だった。俺は銭湯や風呂が大好きで時間とお金があれば週一とかで通っていた。ここの銭湯は休憩室もしっかりしていて漫画喫茶のように漫画も沢山あり、飲み物も飲み放題である。銭湯で身体を癒し仮眠を取り時間の許す限り漫画を読んだ。そして、夜は回転寿司でたらふくお腹を満たした。回転寿司が安い。といっても20皿食べれば単純計算2千円…お金がない俺には一日2千円の食費は死活問題である。でも今日は何の心配もなく食べれる。ウニやイクラといった値段の高い商品も。

そして俺は家に帰ることにした。決して今日という日が良かった。とは思えない行動だったが、悔いもない。後は家に帰って自殺の準備をして…最期の眠りにつく。そう思いながら家へ向かって歩き出した。

今日は競馬で数百万円馬券が出たらしい。俺も予想してたら当てれたのだろうか。もし当てれたのなら…死を回避できたんだろうな。

俺だけじゃない。宝クジにせよ、ほんの少しのことが人の運命を変えてしまう。そんな些細なことで変わってしまう運命って…つくづく人間とは儚いものなんだな。そんな事を考えながら俺は歩いていた。この後、些細なことで自分の運命が変わるとも知らずに…。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る