目的
4人の中でアーベルだけがジャージ姿なことに、頭の上でクエスチョンマークを浮かべるボスと幹部達。その視線を全スルーして黙々とTシャツとデニムパンツに着始めたアーベルの存在など無いかのように、3人は横一列に並んでボスに礼をした。格好は4人とも似たり寄ったりだ、Xエリアに入っても悪目立ちしない服装だとボスや幹部達に判断させるための格好なのである。その思惑通り、新参組織のボスや幹部達は4人の連携がとれており状況を理解している、と受けとった。
「調査期間は地図を完成させるまでだ、敵の有無を確かめて、あの地域に上手く馴染んで地図を手に入れてこい」
「お任せ下さい」
フェルディナンを始め4人が了承の意を示
した、正しい地図など書くわけがないし、正しい報告もするわけがない。縄張り戦争のときに使う自分達の武器をどこに隠しておくかぐらいしか考えることは無いし、彼等4人は新参組織の情報をメリッサとゴーチェ達に報告することが急務だ。フェルディナン達は緊張感もそこそこにビルを後にした、先頭に立つフェルディナンの腰には短剣が装着されており、隣を歩くアーベルは毒入りの弾丸が
「あれ?そういえば、今って喋ってて良いんだっけ?」
「アーベル…せめてサインで聞けよなー、まぁまだ通信機ONになってないから良いけど」
「フェルディナン、どうする?情報持ってかねぇと行けねぇよな」
「僕とマルティーノで報告に行く、リベルとアーベルは地上の状態を見て新参に見せていい場所の見当をつけておいてくれ、メリッサに指示を仰いで良い」
「了解〜」
「はいよ」
「OK」
全員の承諾を経て暫く歩いていくと、ついに始まりの場所、Xエリアの鉄格子付近に辿り着いた。そして突然、ザザザッ──というノイズと共にメリッサ側の通信ができる状態になった。
「みんなっ!おかえりなさーいっ!いま鍵開けたから、入って大丈夫だよー」
元気そうな第一声が4人を安心させる、生まれ育った場所に帰ってきたという感覚を持ったからだ。無数の監視カメラに映るように手を振りながら、フェルディナンとマルティーノが地下通路への道を行き、リベラトーレとアーベルは地上で怪しくなさそうな場所を探しに行く。一見資料が散乱しているように見えるメリッサとゴーチェのスペースに、長い長い迷路をスイスイと迷うことなくフェルディナンがマルティーノを連れてやってきた。ヘラッと笑いながら振り返ったのは、ベビーフェイスのゴーチェだ。
「Hi!向こう側の空気はどうだった~?」
「僕が見たところでの範囲だけど、纏まりはハッキリ言って無かったな、ココを舐めてかかってるし力押しで戦うタイプが多い印象だった。纏まってる奴らも総じてこのエリアの性質を勘違いしてる」
「俺は殲滅戦にしても良いんじゃないかと思うけどねぇ…Xエリアの力は外に周知させる必要があると思うんだよな」
マルティーノの言葉に[それもそうだ]と頷く4人の元へ、地上へ出て爆弾魔メアとの打ち合わせをしていたリューヴォが戻ってきた。フェルディナンとマルティーノは、まだ幼い少女ではあるものの余りに落ち着いたオーラを見て、やはり自分達のボスなのだと再認識した。通信機で筒抜けの会話に、リューヴォはトレードマークのお団子頭を整えながら歳不相応な苦笑を浮かべて声を掛ける。
「アタシも、そのつもりよ。暗黒街全部に知らしめてあげましょ」
「アイサーッ!」
誰よりも早く元気の良い返事をしたのはメリッサだ、縄張り戦争の前とはいえいつも通りの変わらない遣り取りがあると、命を賭けてでもソレを守りたいと改めてリューヴォ以下いま通信機で繋がっている者達は思った。
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