眠りの底

 落ちれば落ちるほど、ぼくは頻繁に夢を見るようになった。

 眠い。

 うつらうつらとスノウの背中にしがみついているけれど、ぼくはいつのまにかここじゃないどこかへと連れられていた。

 眠い。眠い。眠い。


 空凍みの季節だろうか。踏み固める地面には霜が降りていて、一歩歩く度にパリパリと音が鳴る。

 

 眠い。


 ぼくはどこかに向かって歩き続けている。遥か遠く、遠景の山々に滲むように建造物が見える。

 彼女がいる場所だ。


 眠い。


 より深い眠りに落ちたのか。景色は一転して、あの建造物の真下へと移っていた。

 神殿のように荘厳な造りをした柱が四隅に打ち立てられている。さらに、四方の山々の間を縫うように敷かれた水路には一滴の雫も存在しない。忰せた大地の中心。

 此処こそが、彼女のいる場所だ。

 だってほら、空を天蓋のように覆うあの金網の向こうには彼女が―――


 そこで目が覚めた。また、いつもの薄暗がりの青に戻ってきた。眠気でふやける感覚を、スノウのざらざらの背中を撫でて払う。

 夢は深く落ちれば落ちるほど、ページをめくるように物語が進んでいくようだった。そしてそれは、なんとなく、もう少しで終わってしまいそうな気がしていた。

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