第12話

恋をするといろんな気持ちが生まれる


わがままになることは悪いことだと、

子供の頃思ってたけど、

わがままになることは実は素直になること

なのかもしれない


「ただいま、愛美、来てたんだぁー」


「おかえり、バイトが早く終わったから、早速、合鍵使わせてもらいました!」


「ただいまぁー」

ギューッと抱きしめる彼


「クスクス、さっき、言ったよ?」


「いいんだよ」


そう、嬉しそうにしてくれる遼くんだったけど、やっぱり、疲れてる


ご飯が終わってソファで眠ってしまった。

いつ、彼の部屋に来てもほとんどがそんな時間の繰り返しだった


社会人になった遼くんと学生の私は

生活のリズムも違う。

私にはまだわからない大変さがあることわかってる...けど淋しかった


もっと彼に甘えたかった

ずっと、一緒にいて

ずっと、抱きしめていてほしかった


けど、いつもクタクタになって帰ってくる遼くんを見てると、喉の奥に詰まった言葉を吐き出せなかった


私達はお互いを思い過ぎてたんだね



バイト先の皆とご飯に行って遅くなった。


遼くんからの着信があったこと、駅に着いて気付いたのに、送っていくよって言ってくれた先輩と一緒にいることが後ろめたくて、すぐに架け直すことをしなかった


「ここでいいです」


「いいよ、家まで」



「愛美!」


「遼くん、どうしたの?」


「電話しても繋がらないから来た

誰?その人?」


「あっ、バイト先の先輩

送ってくれて」




「彼?...じゃ、おやすみ」


「ありがとうございました」




「遼..くん?」


明らかに怒ってる

怒るよね


「愛美にどうしても今日話したいことがあったから、来たんだけど...来なきゃ良かったな」


「ごめん...なさい

でも、別に私悪いことしてないし」


「そっか......」


「話したいことって?」



「転勤になった」


「転勤って...どれくらい?」


「まだわからない」


「いつから?」


「来週から...

愛美、別に俺、いなくても淋しくないだろ?大学生って、楽しいんだろ?」


「何よ、その言い方、淋しいに決まってるじゃない」


「......今日は帰るな...おやすみ」



淋しいよ......

それ以上の言葉は出なかった


ただ、彼の背中を呆然と眺めてた

頬を掠める真冬の夜風が

溢れてくる温かい涙を冷やしていった




愛美...ごめんな

ほんとはあんなこと言うつもりじゃなかった

でも、なんか...何となく

俺が愛美を窮屈にしてしまってるんじゃないかって、思ったんだ


ちゃんと、言えば良かったかな

うううん、言わない方がいい

たぶん、愛美はそんなことないよって笑うだろうから


淋しくたまらないのは俺の方だよ

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