クロス・ユニバースというオリジナルのカードゲームを扱った小説。
カードゲームを題材にした作品は他にも存在しますが、この作者の凄いところはカードを実際に作ってしまっているところ。ホームページへ行けばカードのデータが無料でダウンロードできて実際に遊べちゃいます。ルールやデッキレシピなども詳しく載っており、プレイ動画も見ることができます。これらをなんと作者含む二人でやっているというのだからすごい。
小説版の本作では、さながら販促アニメのようにカードやルールの説明を交えながら、様々なキャラクターたちが想いをぶつけ合って成長する姿が描かれます。
主人公・望美はカードなんてやったことのない、ごく普通の中学生の女の子。初めて目にしたクロユニの対戦をきっかけにその魅力に取り憑かれてしまうのだが、自分(と妹)にしか見えないカードの精霊のような謎の存在につきまとわれたり、初めて買ったカードの中に伝説の超レアカードがあったりと、シンプルに王道を行くスタイルで楽しい。伝説って? ああ!
カードのルールは遊戯王とMTGを足して2で割った感じ、に近い。世界観も「プレイヤー=魔術師」で魔力をコストに行動するというものなので、遊戯王やMTGをやったことある人なら馴染みやすいだろう。もちろん、ちゃんと話の中でルールを説明してくれるので、カードゲームはルールが難しそう……という人でも安心して読める。
それぞれの事情を抱えた人物たちがカードを通じて成長していく、というストーリーは、シンプルで分かりやすく、読みやすい。そしてアツい想いをカードに託してぶつけ合うキャラたちの姿に、純粋にゲームを楽しんでワクワクする気持ちが蘇ります。ワクワクを思い出すんだ……!
これからの展開にも期待大です。