9話ー5章 求めていたもの




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"勝利"は絶対だ。


それを求めることも、俺にとっては絶対だ。


だから、選んだ。


"勝利への道"を。


それは、次の"相手ターンをしのぎきる"道だ。


戦いの中で、佐神も気が付いていた。


認めざるをえなかった。




"玉希 望美"は、強い。





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「《分かれ道》の効果で手札に加えるカード。それは《詠唱妨害》!!」


スペルを無効にするスペル、《詠唱妨害》。


望美の逆転のを完全にむ、そのための選択だった。


「さあ、お前のラストターンだ!!」


ターンの終わりと共に、佐神が叫ぶ。


そう、《分かれ道》の効果で佐神のライフは次のターンで0になる。


どちらが勝つことになろうとも、望美のターンは次で最後なのだ。


『いくよ、マスター』


「うん!!」


渾身の思いを込めて、望美は最後のドローを手にした。




----------------------《7ターン目》----------------------


  〈玉希 望美〉●  〈佐神 魁〉

  ドロシー Lv1   ゲートデビルLv1


   Lp 100      Lp 100

   魔力0→4     魔力2

   手札0→1     手札2


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---------------------《フィールド》-----------------------

〈玉希 望美〉

ドロシー Lv1/100/100



〈佐神 魁〉

ゲートデビル Lv1/0/0

《煉獄剣士ボルグ》Lv6/攻600/防400

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望美はドローカードを掴み、それをそのままフィールドに出す。


「わたしはレベル1《創作者 アリス》を召喚!!」


羽ペンと本を持った、青いドレスの少女がフィールドに現われる。


「さらに、《ドロシー》の効果!!【力の継承】で《オズ》の効果を得ます!!」


ドロシーの体が光に包まれ、服は最上級魔導師のローブに変わる。


『その効果で、スペルを手札に加えるよ!!』


《オズ》の効果は払った魔力と同じレベルのスペルを手札に加える効果。


望美は魔力を1払い、レベル1スペルを手札に加える。


「わたしが加えるカードは、《ミラーマジック》!!」




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〈玉希 望美〉 魔力 3→2

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《ミラーマジック》

Lv1 通常スペル

タイプ:光

●:フィールド・捨て山の相手ユニット1体を選ぶ。

このターン、そのタイプと効果を自分ユニット1体に与える。

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「ちぃぃ、あれかっ!!」


それは以前、佐神との戦いに決着をつけた切り札。


忌むべきカードとして、彼の記憶には刻まれていた。


「……だが、俺の手札には《詠唱妨害》がある!!」


そう、いくら強力なカードでも使えなければ意味がない。


『だったら、詠唱しなければいいだけだよ。……ね、マスター♪』


「わたしは《アリス》の効果、【創作の具現化】を発動です!!」


望美は手札に加えたばかりの《ミラーマジック》 を、"捨て札にした"。


「レベル1《追影のシェイド》を召喚です!!」


「な、なんだとっ!!」


アリスの描いた絵が実体化し、影の精霊が召喚される。



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《創作者 アリス》

Lv1/攻撃 0/防御 0

タイプ:幻想,精霊,魔術師

●:1ターンに1度、Lv1以下のスペル1枚を捨てて発動。

同タイプのLv1ユニット1体をデッキから召喚する。

このターン、自身は攻撃できない。

●:1試合中に1度だけ発動できる。

このターン、使われた同タイプのユニット数×100だけ攻撃力をアップする。

他のユニットは攻撃できない。

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《追影のシェイド》

Lv1/攻撃0/防御100

タイプ:幻想,精霊

カードの効果でのみ召喚できる。

●:Lv1ユニットが召喚された時、自身を手札から召喚する。

●:1ターンに1度、自分・相手ターン中に発動できる。

同じタイプのユニット1体のLvと攻撃力をターン終了時まで得る。

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コストにする行為は、"詠唱ではない"。


《詠唱妨害》では止めようがない。


「さらに、《ドロシー》が持つ《オズ》のもう1つの効果!!」


『【力の伝授】により、《シェイド》に「闇」を与えるよ!!』


ドロシーが杖を振るうと、《シェイド》の周りを暗いオーラがつつむ。


これにより、《シェイド》にタイプ「闇」が加えられる。


そして《シェイド》には、同タイプのユニットの攻撃力をコピーする能力がある。


《煉獄剣士ボルグ》のタイプは、「闇」。


つまり、―――。


「《シェイド》で《ボルグ》を攻撃です!!」


『この時、《シェイド》の効果【影写し】で攻撃力をコピー』


《シェイド》の後ろから影が伸び、その形が《ボルグ》の姿となる。



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《追影のシェイド》攻撃力0→600 


         VS 


《煉獄剣士 ボルグ》防御力400 

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佐神の手札に対抗手段は……ない。


影でできた《ボルグ》の大剣が、本物の《ボルグ》を切り裂く。


「さあ、《ドロシー》の直接攻撃です!!」


『【爆裂の呪文】!!』


ドロシーの放った魔力球が、佐神とそのパートナーに迫る。


…………完全敗北、だな。


佐神をそう悟り、両眼を閉じて攻撃を受け入れた。


爆炎が、彼の全身を包んだ。






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〈佐神 魁〉Lp100→0

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――――――――― 〈クロス・ユニバース〉「決着」 ―――――――――



―――――――――――― 勝者 「玉希 望美」 ――――――――――――







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佐神は地面に倒れ、空を見上げていた。


―――敗北。


佐神の脳裏に浮かぶのは、そんな忌むべき言葉。


しかし、にもかかわらず。佐神の胸中は不思議と清々しかった。


答えは、何となく理解していた。


しかし、それを正確に表す言葉を佐神は持っていなかった。


ただ、口にできたのは一言だけ。


「玉希望美。………お前は強い」


「あ、ありがとうございます……」


返答は、意外と近くから聞こえた。


倒れたまま起き上がらない佐神を心配したのか、望美たちは彼のすぐそばに集まって来ていたのだ。


「あらあら、ようやく望美さんの強さを理解しましたの?」


「玉希さんは強いよ。もう、佐神が思っているような初心者じゃない」


友人の実力を認められてご満悦な巻宮と、その成長を誇る新地。


佐神はそれらには答えず、静かに1人立ち上がる。


そして空をしばらく見上げ、望美に向き直り言った。


「………だが、次は俺が勝つ」


玉希望美は強い。


だからこれは、"それよりもっと強くなる"という誓いだ。


「そして、その次はお前だ。……新地邦人」


佐神は新地に視線を合わせて、そう言葉を続ける。


それに新地も不敵な笑みで答えた。




あの日から、何度勝っても得られなかったもの。


やっとそれを見つけた、佐神はそう思った。





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「いや~、いい試合だったな~」


少し離れた木陰に隠れるように、学生服の地味な少年はいた。


その少年、"チーム・ペンタグラム"のリーダーこと不和染ふわぞめはじめは佐神たちを眺める。


「佐神君は、ウチに戻るつもりはなさそうだね~。……残念残念」


ちっとも残念そうでない口調でそう言う彼。


その表情は、




―――それはそれは嬉しそうな笑顔だった。










【第9話 勝利に飢えた男  ―――終―――  】 







次回、【第10話 交差する思い】 to be cotinued




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