8話ー7章 わたしの描く物語





----------------------《4ターン目》----------------------


 〈玉希 望美〉●    〈玉希 未菜〉

  アリス Lv1     ドロシー Lv1


   Lp 50        Lp 500

   魔力4        魔力2

   手札2→3       手札0

  

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---------------------《フィールド》-----------------------

〈玉希 望美〉 

アリス  Lv1/ 0/ 0


〈玉希 未菜〉

ドロシー Lv1/100/100

《至高の魔術師オズ》Lv7/攻700/防600

《水面のウンディーネ》Lv1/攻100/防0

《炎渦のサラマンドラ》Lv1/攻100/防0

《迅雷のボルテ》Lv1/攻100/防0

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ドローしたカードを見た瞬間、望美は笑う。


そしてそのまま、そのカードを使う。


「わたしはレベル0《魔法合成》を詠唱!!手札のレベル0《疾風怒濤》とレベル1《解呪》を捨てる」



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《魔法合成》

Lv0 通常スペル

●:手札のスペルカード2枚を捨て札にして、

その合計Lvのスペル1枚をデッキから手札に加える。

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「……この状況を逆転できるカードが望美さんのデッキに?」


巻宮は望美の戦いを思い返すが、この状況を逆転できるカードが想像できなった。


未菜も、影野もそうだった。


『……気づきましたね、マスター』


ただ1人、ドロシーだけが気がついていた。


望美はデッキから選び出した1枚のカードを手にして、ニヤリと笑う。



「このカードを使う前に、《創作者アリス》の第2の効果を発動!!」



「だ、第2の効果??」


思っても見なかった一手に未菜がとまどう。


「《アリス》の持つ、最後の切り札!!それは、これまで戦いを、旅路を、物語として1つに束ねる能力!!」


玖々理さんに貰った後、そのテキストを読んだ時から、望美はこの能力を使ってみたかった。


それはとても"ワクワク"する能力だった。



「その能力で、《アリス》はこの戦いで登場した全てのユニットの種類の100倍の攻撃力を得る!!」



未菜と望美、2人がこの戦いで使ったパートナー以外のユニットたち。


これらの姿がアリスの本にえがかれ、その姿が彼女の後ろに浮かぶ。


望美が使用したのは召喚された《ソール》《ルーナ》、そして効果でデッキから捨てられた《フラウ》と《ノーマ》。


未菜が使用したのは《サラマンドラ》《シェイド》《ウンディーネ》《ボルテ》《オズ》。


その合計は9種類。



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《創作者 アリス》攻撃力0→900

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「攻撃力900!!」


あの佐神の切り札にも匹敵する攻撃力に未菜は戦慄する。


《オズ》ですら易々と倒せる攻撃力だ。


「でも、それだけじゃあ逆転にならないよ!!」


未菜の言う通りだ。


たとえユニットを1体倒したところで、次のターンに《サラマンドラ》の効果でライフが50しかない望美は負ける。


《ウンディーネ》と《ドロシー》がいる以上は《サラマンドラ》を倒すことにも意味はない。


そう、《アリス》"だけ"では勝てない。


でも―――。


望美はここで、先ほど手札に加えたスペルカードを詠唱する。


「これがわたしの逆転の切り札!!レベル1スペル《ミラーマジック》!!」



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《ミラーマジック》

Lv1 通常スペル

タイプ:光

●:フィールド・捨て山の相手ユニット1体を選ぶ。

このターン、そのタイプと効果を自分ユニット1体に与える。

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「コピーするのは貴方よ、《ドロシー》!!」


《アリス》の前に巨大な鏡が出現し、そこに《ドロシー》の姿が映し出される。


見習い魔女の姿が消えると、そこにはドロシーのローブを着た《アリス》の姿が現われる。


《ドロシー》の能力、それは捨て山のユニットの効果をコピーするちから


「コピーするのは、《天日のソール》!!」



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《天日のソール》

Lv1/攻撃100/防御0

タイプ:光,精霊

●:相手ユニットの数までデッキを上から確認する。

同じタイプのユニットを全て捨て札にして、その数まで攻撃する。

他のユニットは攻撃できない。

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未菜のフィールドにはパートナーの《ドロシー》を含めて5体。


勝利する条件は確認したデッキのカード5枚が全てユニットであること。


成功確率は余りにも小さい。


それでも、望美は笑う。


望美はこの状況を、ギリギリの戦いを楽しんでいた。


紙一重の勝利と敗北。


運命の分岐点の上に自分がいる実感。


まるで世界の運命をかけたかの様な緊張感。


そんな物語のような状況に今、自分はいる。


その物語をつむぐのは自分自身だ。


かつてピアノを使い、自分の手で音楽を作り出した時にも感じた、あの快感。


望美は全て思いを込めて5枚のカードを掴む。


その手に掴んだ運命のカード。


それは―――



1枚目:《追影のシェイド》


2枚目:《魔導剣の使い手 ソラ》


3枚目:《フォーチュン・フェアリー》


4枚目:《守護精霊 イージス》


5枚目:《疾風のシルフィード》



「やったっ!!」


確認したカードはその全てが、精霊または光ユニット。


よって《アリス》は5回攻撃が可能となった。


「さあ、《アリス》の連続攻撃!!【グランド・フィナーレ】!!」


《アリス》の背後の幻影たち、この戦いに参加した全てのユニット達が総攻撃をかける。


戦いの中でつむがれてきた記憶、思いが、全てこの攻撃に集約する。


攻撃力900による全体攻撃、手札のない未菜には防ぐ手段はなかった。


攻撃の雨が未菜たちのフィールドのユニット、そしてドロシーに降りかかる。


「………やっぱりスゴイよ、お姉ちゃんは」


『さすがです、マスター』


未菜とドロシー、2人は満足げな表情で爆炎に包まれた。






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〈玉希 未菜〉Lp500→0

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――――――――― 〈クロス・ユニバース〉「決着」 ―――――――――



―――――――――――― 勝者 「玉希 望美」 ――――――――――――







● ● ● ● ● ●





「………わたし、やっぱりクロユニを続けたい。………わたし、このゲームが大好きみたいだから」


「……………ようやく、答えを見つけましたのね」


晴れやかな顔でそう言った望美を、巻宮は嬉しそうに見つめる。


『ホントにめんどくさい人ですね、マスターは』


ちょっと呆れた、でも嬉しそうな口調でドロシーも微笑む。


望美はようやく自分の本心を見つけたのだ。


「………」


未菜もまた、そんな姉の姿を眩しそうに見つめる。


好きなことに全力で、真っすぐ向き合う姉の姿がそこにはあった。


ふと、未菜は思う。


姉の心に傷跡を残した美命という少女のことを。


彼女が言ったという言葉を。


素朴な疑問が脳裏に浮かぶ。




彼女こそ、何故このゲームを続けているのだろうか、と。









【第8話 答えはいつもその手の中に  ―――終―――  】 







次回、【第9話 勝利に飢えた男】 to be cotinued

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