7話ー5章 理由の在りか





----------------------《7ターン目》----------------------


  〈玉希 望美〉    〈天糸 美命〉●

  ドロシー Lv1    ミデン Lv0


   Lp 1000       Lp 50

   魔力1        魔力0→5

   手札3        手札4→5

  

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---------------------《フィールド》-----------------------

〈玉希 望美〉 

ドロシー Lv1/100/100

《至高の魔術師 オズ》Lv7/攻700/防600


〈天糸 美命〉

ミデン Lv0/0/0

《エナ》Lv1/攻0/防100

《ディオ》Lv2/攻0/防200

《トリア》Lv3/攻100/防200

《エナ》Lv1/攻0/防100

《ディオ》Lv2/攻0/防200


《連鎖召喚》 永続スペル

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「え、えっと……」


「私は《エナ》《ディオ》《トリア》の3体をリターン!!」


先程の言葉に戸惑う望美を無視し、美命は試合を進める。


宣言に合わせ、3体の機械天使が光に消えて魔力の玉に姿を変える。


『これで魔力が10を超える……。来るよ、マスター!!』



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〈天糸 美命〉魔力 5→11

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「さあ、終わりです。レベル10《テミス・エクス・マキナ》を召喚します 」


消費された魔力が空高くに昇って消える。


すると、まばゆき光が天より降り注ぐ。


その光の中、圧倒的存在感を伴った"それ"が天より降臨する。


"それ"は、神々しさと禍々しさを兼ね備えた、機械仕掛けの神。


巨大なそのユニットの登場に、誰もが息を飲む。




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《テミス・エクス・マキナ》

Lv10/攻撃300/防御700

タイプ:光,天使,機械,神話

●:???

●:???

●:???

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「《テミス》の第1の効果。その攻撃力はお互いのプレイヤーのライフの差だけアップします」


「っ!!………それが狙いでライフを払い続けて!!」


現在の望美のライフは1000、美命のライフは僅か50。


その差、実に950。



---------------------------------------------------------

《テミス・エクス・マキナ》 攻撃力300→1250

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「さらに、《テミス》の第2の効果。ユニット2体をコストにすることで、このターンの全体攻撃を可能にします」


フィールドに残されていた残りの機械天使たちも光となり《テミス》の中に消える。


「攻撃力1250で連続攻撃!?」


『……っ!!』


これにより《オズ》と《ドロシー》、その両方への攻撃が可能となった。


そう、このままでは1250の攻撃がパートナーを直撃し、望美の敗北が決定する。


「さあ、お終いです。《テミス・エクス・マキナ》の攻撃!!」


美命の宣言に合わせ、《テミス》の体が光る。


次の瞬間、無数の光線が《オズ》と《ドロシー》をめがけて放たれた。


「パ、《パリィ》!!」


「無駄です!!第3の効果により、《テミス》の攻撃は無効にできません」


「……そ、そんな」


《オズ》が光線に包まれ、消滅する。


そして、2発目が《ドロシー》に向かう。


「何か、何か手はっ!?」


『…………っ』


望美から目をそらすドロシー。


巻宮たちも、観客も、そして望美自身も、気が付いていた。


………もう、打つ手はないということに。




そして、2人は光に包まれた。






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〈玉希 望美〉Lp1000→0

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――――――――― 〈クロス・ユニバース〉「決着」 ―――――――――



―――――――――――― 勝者 「天糸 美命」 ――――――――――――







● ● ● ● ● ●




――――楽しい。


姉が語ったカードゲームをやる理由は、要約するとそれだけだった。


それ以外の言葉はただ後付あとづけのかざり、そう感じた。


楽しい、それ自体は結構なことだ。


だけど、勉学や運動やその他の時間を削ってまでやることじゃないと思った。


暇つぶしや息抜き、それなら理解できる。


だけど、そうじゃないのだ。


たかがゲームに、優秀な姉の貴重な時間が注がれることに理不尽さすら感じる。


こんな紙切れに、それほど価値が本当にあるのだろうか?




自分自身で確かめないと、そう思った。





● ● ● ● ● ●





「大丈夫ですの、望美さんっ!!」


膝をつきうつむく望美の元に、巻宮たちが駆け寄る。


「………う、うん。………………………はは、負けちゃった……」


少しの間をおいて、望美は顔を上げてそう笑う。


だが、その強がりにしか見えない笑顔を前に、誰も何も言えなかった。


皆、気づいていた。


これは望美にとって、初めての敗北なのだと。




「………………負けても、楽しいですか?」




そんな望美に対し、無情にも美命は問う。


「てめぇ、負けたばっかりの相手になに言って……!!」


「確かに勝ち続けられるのなら、楽しいでしょう。でも、現実は違います。どちらかは負けるんです。………負けても楽しいですか?」


あらためて投げられるその問いに、望美は答えられなかった。


今、自分の中にあるこの感情。


少なくても、それは楽しさではなかった。


「そして、たとえ勝ったとしても。それは持っている"カードの強さ"、必要なカードを引く"運"で決まります。………この程度の戦術なんて、ネットで簡単に調べられますからね」


レアカードを嫌うヤイチの姿を思い出す。


あの試合に勝てたのも運が良かっただけ、確かにそうだった。


「こんなものが、……楽しいんですか?………相手を打ち負かして勝ったとしても、所詮しょせんただのゲーム。………何も生まず、何の意味も価値もない」


美命の淡々とした口調の端々から、感情がれ出していた。


これは、怒りだ。





「もう1度聞きます。あなたは何故、このゲームをやっているのですか?」





望美は答えられなかった。









【第7話 つながれた少女  ―――終―――  】 







次回、【第8話 答えはいつもその手の中に】 to be cotinued



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