7話ー4章 憧れと失望と
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私にとって、姉は自慢だった。
容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能。
賢くて、優しくて、完璧で。
周囲に頼りにされ、尊敬され、愛されていた。
そんな姉の妹であることが、私にとっての自慢だった。
…………あの日までは。
その日、名門校の寮に入っていた姉が、久しぶりに帰って来てこう言った。
「私ね、今このカードゲームに夢中なの!!」
そう言って、子供っぽいオモチャを笑顔で並べて見せる姉。
聞いてもいない説明を、喜々として始めるその姿にめまいがした。
それはまるで、同級生の頭の悪い男子たちのよう。
何かの冗談だと思った。
理解できなかった。
したくなかった。
完璧だった自慢の姉は、もうそこにはいなかった。
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《トリア》の拳が《サラマンドラ》を吹き飛ばす。
そんな状況で、望美はただ立ち尽くしていた。
頭の中は、先程の質問の事で一杯だった。
----------------------《6ターン目》----------------------
〈玉希 望美〉● 〈天糸 美命〉
ドロシー Lv1 ミデン Lv0
Lp 1000 Lp 250
魔力3→5 魔力3
手札3 手札6
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---------------------《フィールド》-----------------------
〈玉希 望美〉
ドロシー Lv1/100/100
《迅雷のボルテ》Lv3/攻200/防100
(《ブースト》付与)
〈天糸 美命〉
ミデン Lv0/0/0
《エナ》Lv1/攻0/防100
《ディオ》Lv2/攻0/防200
《トリア》Lv3/攻100/防200
《エナ》Lv1/攻0/防100
《ディオ》Lv2/攻0/防200
《連鎖召喚》 永続スペル
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《ディオ》の召喚と《トリア》の攻撃だけで、美命のターンは終わった。
『………マスターのターンだよ。………ドローしないと、ね』
ボーっと立ち尽くす望美をドロシーが促す。
試合に集中できないまま、望美は漫然とカードをドローする。
「……、あっ」
ドローしたのは、《至高の魔術師オズ》。
《オズ》を眺めながら、望美は考える。
自分の【クロス・ユニバース】への思いを。
キッカケは、憧れだった。
あの駅前広場で見た戦い、玖々理さんの美しくもかっこいい姿。
それに憧れて、わたしはこのゲームに興味を持ったんだ。
偶然手に入れた伝説のレアカード《オズ》。
佐神との戦い。
不思議な存在、ドロシーの出現。
様々な人との出会いと戦い。
これまでの全てが脳裏に浮かぶ。
最初から、答えは決まっていた。
「………………わたしはこのゲームが楽しい!!だから、やってる!!」
『………っ!!さあ、いこうよマスター!!』
「うん!!」
嬉しそうなドロシーの声に応え、望美は次の手を打つ。
「レベル3となっている《ボルテ》をリターンして《至高の魔術師オズ》を召喚!!」
地面の魔方陣から、七色の杖を構えた白いローブの老魔術師が現れる。
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《至高の魔術師 オズ》
Lv7/攻撃力700/防御力600
タイプ:光,闇,地,水,炎,風,氷,雷,魔術師
●:1度だけ、任意の魔力を払って発動できる。
払った分と同じLvのスペル1枚をデッキから手札に加える。
●:1ターンに1度、自分のユニット1体を選ぶ。
自身の持つタイプ1種をターン終了時まで与える。
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「さらに、《ドロシー》の効果を発動!!」
『【力の継承】で《ボルテ》の効果を使うよ!!』
薄い黄色の袴姿に変化したドロシーが、その手の弓から雷の矢を放ち《エナ》をつらぬく。
「さあ、《オズ》の攻撃!!【究・極・呪・文】」
七色の魔力の塊が《トリア》に向けて放たれる。
《トリア》のレベルは3。
《ミデン》の強制効果で復活する時、美命のライフは300減ることになる。
今の美命のライフは250。
つまり、この攻撃が通れば望美の勝利。
だが、―――――――
「………レベル0《バトル・グラビティ》を詠唱」
魔力の塊が直撃する直前、その進路を急に変える。
そして、狙ってもいないレベル2の《ディオ》にあたる。
『………攻撃対象を変更するスペル!?』
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《バトル・グラビティ》
Lv0 通常スペル
タイプ:重力
●:相手ユニットの攻撃時、攻撃対象を他のユニットに変更する。
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「なら、《ドロシー》の攻撃です」
『《ディオ》を倒した今なら、レベル1を倒すだけでも!!』
ドロシーは雷の矢で、先程弱らせた《エナ》を狙う。
「…………《
ピカッ!!
美命の宣言と共に眩しい光が望美たちをつつむ。
不意な光で眼がくらんだドロシーは、雷の矢を明後日の方向へ飛ばしてしまう。
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《一閃》
Lv0 通常スペル
タイプ:光
●:自分のタイプ「光」ユニットへの攻撃を無効にする。
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「そ、そんな………」
《オズ》と《ドロシー》の攻撃がかわされ、このターンに望美ができることはもう、ない。
そして、《エナ》の効果でライフを代償に倒したはずの機械天使は再び復活してしまう。
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〈天糸 美命〉Lp250→50
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あと一歩が、たった50がとどかなかった。
肩を落とす望美を、その前に立つ《オズ》を、淡々とした表情で見つめる美命。
「………そうですか、………楽しい、ですか」
望美の答えが理解できない、といった感じだった。
「う、うん。……………美命ちゃんは楽しくない、のかな?」
望美はためらいながらも、そう質問する。
答えはすぐに返ってきた。
「……ええ、最善手をとり続けるだけの、退屈なお遊びです」
心底つまらなそうに、そう言い切った。
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