6話ー3章 ただ勝利のために
----------------------《3ターン目》----------------------
〈玉希 望美〉● 〈須王 ヤイチ〉
ドロシー Lv1 鬼火 Lv0
Lp 200 Lp 400
魔力2→0→4 魔力5→3→2→1
手札3→4→3→4 手札3→4→3→2→3
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---------------------《フィールド》-----------------------
〈玉希 望美〉
ドロシー Lv1/100/100
〈須王 ヤイチ〉
鬼火 Lv0/50/0
《機動大砲塔 マキシマム》Lv7/攻0/防600
《指名手配書》(《オズ》宣言)永続アイテム
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「望美さん、ここが
巻宮が観客たちが望美に声援を送る。
それに応えるように、望美はふらつきながらも力を込めて新たなカードをドローした。
そして、自分の手札と場を見比べて考える。
ヤイチの場には防御力600の巨大砲台。
連続攻撃を行うこの砲台を倒さなければ勝ち目がない。
しかし、相手の場には《オズ》の召喚を制限する《指名手配書》。
望美のデッキで対抗可能な数少ないユニット、《オズ》は召喚できない。
そして、手札に他の対抗手段もない。
まさに、絶体絶命の状況だった。
『とにかく今は、次のターンを耐える手を打たないと!!』
ドロシーの言葉にうなずく望美。
今の手札に対抗手段がないなら、それを引くまで耐えるしかない。
「わたしはまず、レベル0スペル《ホーリー・ライト》を詠唱。ライフを200回復します」
淡い光が望美の体をつつみ、傷を癒やす。
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〈玉希 望美〉Lp 200→400
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「たった200の回復だぁ?…その程度、《マキシマム》攻撃の前じゃ焼け石に水さぁ」
ヤイチの指摘通り、この程度回復した所で次の一撃が決まればライフが0になることに変わりはない。
だけど、それでいいのだ。
「わたしはさらに、《復活》で捨て山からレベル1の《ノーマ》を召喚します」
魔法陣が光り、その中から眼鏡をかけた金髪の精霊が再びフィールドに姿を現す。
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《復活》
Lv0 通常スペル
●:自分または相手の捨て山のユニット1体を召喚する。
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〈玉希 望美〉魔力 4→3
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『これで、捨て山にはスペルが3枚!!』
「うん!!この瞬間、《ドロシー》の効果を発動【力の継承】。選択するのは、《疾風のシルフィード》!!」
ドロシーの体が一瞬だけ光に包まれ、彼女の服装が緑色のドレスに変わる。
「【風の導き】の効果により、捨て山に存在するスペルカードの数だけ召喚に必要な魔力を減らします」
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《疾風のシルフィード》
Lv1/攻撃力0/防御力100
タイプ:風,精霊
●:捨て山にあるスペルの数だけ、同じタイプのユニット
の召喚に必要な魔力を1度だけ減らす。
このターン、自身は攻撃できない。
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「それが…、あの佐神さんを倒したというコンボか…」
ヤイチは驚き、少し身構える。
「だがっ、《指名手配書》の効果で《オズ》は出せないはずさっ!!」
ヤイチの言う通りだ。
だから、今から召喚するのは《オズ》ではない。
望美は次のターンへの希望をこの1枚に託す。
「舞い降りて、聖なる守護者!!レベル6《守護精霊 イージス》 を召喚」
背中の翼を広げ、巨大な盾を構えた天使のような姿の精霊がフィールドに舞い降りる。
「これで準備は万全っ!!さあ、あなたのターンだよ」
----------------------《4ターン目》----------------------
〈玉希 望美〉 〈須王 ヤイチ〉●
ドロシー Lv1 鬼火 Lv0
Lp 400 Lp 500
魔力3→0 魔力5
手札4→3→2→1 手札3→4
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---------------------《フィールド》-----------------------
〈玉希 望美〉
ドロシー Lv1/100/100
《守護精霊 イージス》Lv6/攻200/防500
《砂塵のノーマ》Lv1/攻0/防100
〈須王 ヤイチ〉
鬼火 Lv0/50/0
《機動大砲塔 マキシマム》Lv7/攻0/防600
《指名手配書》(《オズ》宣言)永続アイテム
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「万全?そんな盤面、すぐに崩してやるよ」
望美の宣言を鼻で笑いながら、ヤイチはドローする。
そして、先ほど手札に戻した《写し身の鏡》を掴む。
「さあ、弾丸を再び準備だぁ!!」
再び4つの鏡がフィールドに現れ、4体の鬼火を出現させる。
「だが、
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《炎精の祝福》
Lv2 通常スペル
タイプ:炎
●:自分の「炎」ユニットの数だけデッキを上から可能な限り捨てる。
その中に「炎」カードがあれば、1枚を手札に加えることができる。
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ヤイチの場には炎ユニットがパートナーを含めて5体。
デッキのカード5枚がヤイチの前に出現する。
「僕はこの炎カード、《再生の炎》を選択するよ」
カードを1枚選んだヤイチは残りの4枚を全て放り捨てる。
「さあ、準備完了だ。弾丸を装填しろっ!!《マキシマム》」
その宣言と共に、フィールドの鬼火たちは次々と《マキシマム》の砲身に吸い込まれていく。
「ま、またユニットを"弾"に!?」
望美は顔を少し歪めると、次の攻撃に備えて身構える。
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《マキシマム》 攻撃力 0→900
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「喰らえ、連続砲撃4連打ァッ!!」
ヤイチの宣言と共に、再び大砲が火を噴き、燃える砲弾が次々と発射される。
「まず、その眼鏡娘からだ!!」
最初の砲弾が《ノーマ》を狙い迫る。
しかし、着弾する直前、盾をかまえた《イージス》がその間に割って入る。
次の瞬間、砲弾はその精霊天使を巻き込んで爆発した。
「これが《守護精霊 イージス》の効果!!味方への攻撃を代わりに受けることができます!!」
「だが、その防御はたった500!!《マキシマム》の一撃で粉砕だぁ!!」
ヤイチの言う通り、確かに普通ならひとたまりもない。
しかし、―――
爆発の煙が晴れた後には、変わらず存在する《ノーマ》と《イージス》の姿があった。
そしてその足元には、崩れ落ちた土くれの壁。
「な、ばかなっ!!」
「これが《砂塵のノーマ》の効果【大地の守護壁】!!他の精霊ユニットを1度だけ破壊から守ります」
これは、前のターンの様に《ノーマ》自身が攻撃されては使えない効果だ。
しかし今回、《イージス》の身代わり効果との組み合わせることでその真価を発揮したのだった。
「だが、2撃目は防げない!!」
そう、《マキシマム》の砲撃は4発。
2発目が間を空けずに《イージス》に着弾する。
だが、―――
「《イージス》の2つ目の効果です!!自身の破壊を1度だけ無効にします」
望美の宣言した通り、《イージス》は盾を失いつつも破壊されずその場に立ち続ける。
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《守護精霊 イージス》
Lv6/攻撃200/防御500
タイプ:光,精霊
●:1度だけ、戦闘による自身の破壊を無効にできる。
●:攻撃の対象を自身に変更できる。
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「ちぃぃ、なら3撃目だぁ!!」
続く3発目が《イージス》を襲う。
防御手段を使いつくした今、もう守る手段はなかった。
砲撃に耐えられず、《イージス》ついに消滅する。
「次は、その眼鏡娘だっ!!」
最後の1撃が《ノーマ》を襲い、その小さな体を吹き飛ばす。
望美とドロシーを守るユニット達は、これで居なくなった。
身をていして攻撃を防いでくれた2体に望美は心の中でお礼を言う。
でも、これで―――
『もう、このターンの攻撃は終わりだね!!』
そう、これで全ての攻撃を防ぎ切ったのだ。
「すごい…、すごいですわ、望美さんっ!!」
巻宮が、観客が、歓声を上げる。
誰もが思っていたのだ、もう負けてしまう、と。
悲しいけれど、悔しいけれど、応援したいこの子はここで負けてしまうのだと。
でも違った。
彼女は、玉希望美は、まだ戦いの場に立っていた。
「くぅぅぅ」
ギリギリと悔しそうに歯がみするヤイチ。
まだ、たった2回戦目。
この試合にここまで時間をかけるつもりのなかった彼は、苛立ちを隠せずにいた。
「だが、まだ次がある!!レベル1アイテム《再生の炎》!!ライフ100を払い、捨て山のカード1枚を手札に戻す」
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〈須王 ヤイチ〉
Lp400→300
魔力1→0
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「この効果で《廃品回収》を手札に戻す。だけど、《再生の炎》のデメリットで手札に加えたカードのレベル分の炎カードを手札から捨てる必要がある…」
《廃品回収》はレベル1、捨てるカードは1枚。
ヤイチは手札を1枚掴んで無造作に投げ捨てる。
「コストは《灼熱の報酬》。この効果は、覚えてるよな?」
バカにしたように笑うヤイチ。
それに対して苦々しそうな顔をするドロシーを横目に、望美は息を一つ吐いてから答える。
「100ダメージを受ける代わりに、捨てられた場合にお互いは1枚ドローでしたね…」
「大正解さ」
軽く拍手するヤイチの体を炎が一瞬つつみ、その後お互いの手札が1枚増える。
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〈須王 ヤイチ〉
Lp300→200
手札2→3
〈玉希 望美〉
手札1→2
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「これで僕の手札は再び3枚、《写し身の鏡》を手札に戻せる《廃品回収》もある。これで僕は、まだまだ弾を撃てるよぉ」
ふと、ヤイチの言葉に望美は引っかかるものを覚えた。
それは言いようもない、不快感。
彼がカードを投げるように捨てるたび、ユニットを弾代わりにするたびに、望美はそれを感じていたのだ。
これは、わたしが憧れたあの光景にはなかった感情だった。
そして、彼女は、それを言葉に出すことにした。
「………弾、ただの弾なんですか?……あなたにとって、ユニット達は…」
そんな突然の問いかけに、ヤイチは
このタイミングで、そんなことを言われるとは思ってもいなかったからだ。
少しの間をおいて、彼は腹を抱えて笑い出した。
心底おかしなことを聞いたとでもいう様に。
ひとしきり笑うと、彼はバカにするような目で望美を見ながら、言った。
「そりゃあそうさ。ゲームにおいてカードってのは、ようは自分が勝つための駒だろ?」
「………っ!?」
当然のように放たれたその答えに、望美は戦慄する。
「そもそも、これが《鬼火》を最も生かせる戦術なのさ。持てる能力を最大限に引き出してもらって、このカード達も本望なんじゃあないかなぁ?」
確かに、そうかもしれない。
勝つために、カードの特性を最大限に生かす。
それは何も
でもこれは、――――。
余りにも心がなさ過ぎる。
そう思った。
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