2話ー5章 不滅のクレイゴーレム






-------------------《3ターン目》-------------------


  〈玉希 望美〉   〈巻宮 雅美〉●

  ドロシー Lv1   大地の魔女 Lv2


   Lp  1000   Lp  500

   魔力 0     魔力 2→5→0

   手札 1     手札 4→5→4


------------------------------------------------------------------


---------------------《フィールド》-----------------------

〈玉希 望美〉 

ドロシー Lv1/100/100

《至高の魔術師 オズ》 Lv7/攻700/防600

《疾風のシルフィード》 Lv1/攻0/防100


〈巻宮 雅美〉

大地の魔女 Lv2/100/200

《不滅のクレイ・ゴーレム》Lv5/攻500/防300

《大地の結界》永続スペル

-------------------------------------------------------------------




地鳴りと共に現れた巨大なゴーレムが咆哮をあげる。


その振動が望美達の全身をピリピリと振るわせた。


「《不滅のクレイ・ゴーレム》もタイプ地のユニット、《結界》により防御力が100アップいたしますわ」


巻宮の宣言に合わせるように、戦いの場を包む《大地の結界》が強い光を放つ。


「さらに《大地の魔女 ナタリー》 の効果ですわ!!タイプ地のカード数だけ《ゴーレム》はパワーアップいたします」


《大地の魔女》が杖を振るい、《ゴーレム》の全身が淡い光に包まれる。


「ワタクシの場にある他のタイプ地のカードは2枚!!《ゴーレム》の攻撃力は200ポイントアップいたします!!」



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《不滅のクレイ・ゴーレム》

攻撃力500→700

防御力300→400

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「さあ、ワタクシの可愛い《ゴーレム》ちゃん。《至高の魔術師 オズ》を攻撃してしまいなさい!!」


主人である巻宮の命令に応え、ゴーレムはその巨大な腕を小さな魔術師に向かって振り下ろす。


《ゴーレム》の攻撃力700に対し、《オズ》の防御力は600と僅かに100低い。


圧倒的な質量による攻撃に、ゴーレムの膝丈ほどもない年老いた魔術師は振り下ろされるその腕に押しつぶされた、………かに見えた。


「あら?」


だが、老練な魔術師は健在だった。


ゴーレムの腕は彼に当たる直前でその動きを止められ、魔術師の体に傷1つ付けることはできていなかった。


老魔術師の眼前には複雑怪奇な魔法陣が描かれ、それが壁となって攻撃を防いでいたのだ。


「わたしはレベル0スペル《ピンポイントバリア》を詠唱しました。その効果で《オズ》の防御力は100アップです」



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《ピンポイントバリア》

Lv0 通常スペル

●:ターンの終わりまで、ユニット1体の防御力を100アップする。

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-------------------------------------------------------------------

《至高の魔術師 オズ》

防御力600→700

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『これで《オズ》の防御力は相手の攻撃力と同じ。破壊はされない』


望美は攻撃される瞬間、先ほど手札に加えていたスペルを使ったのだ。


防御上昇の力を持つスペル、《ピンポイントバリア》を。


『さあ、ユニットが戦闘で破壊されなかったから反撃が発生するよ』


「???反撃って?」


望美の疑問にドロシーが応えるよりも先に、《オズ》が動いた。


自らの魔力で宙に浮くと、《ゴーレム》の懐に潜り込み、杖の先に七色の魔力の塊を生み出し放つ。




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《至高の魔術師 オズ》攻撃力700 


        VS


《不滅のクレイ・ゴーレム》防御力400 

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その圧倒的な攻撃力に耐えられず、《ゴーレム》の巨体は爆発四散した。


『攻撃されたユニットが破壊を免れた場合、その場で反撃することが出来るのよ』


それを知らないで防御したの?、とドロシーは呆れた様に続けた。


望美は恥ずかしそうにしながらも、想定以上の成果に胸の中で拳を握った。


しかし、崩れ落ちるゴーレムの後ろで巻宮はその不敵さを崩さなかった。


「あらあら、思ったよりもやりますわね。……ちょっとビックリしましたわ」


そう言って、笑みすら浮かべている。


「余裕ぶっちゃってるけど、自慢の巨人が瞬殺されてるじゃないの。降参するなら今の内なんじゃない?」


背後から投げかける晴香の言葉に、巻宮は小馬鹿にしたように答える。


「瞬殺?いつ、どこの誰がですの?」


「いや、たった今アンタの土くれの怪物がやられ―――」


晴香は言葉を最後まで言うことはできなかった。


なぜなら、信じられない現象が目の前で起こったからだ。


巻宮の前の空間、そこへ向かって砕け散ったはずのゴーレムの破片が1つに集まりだしたのだ。


初めは小さな塊だったそれも、次々と集まる破片を取り込み、元の巨体へと戻っていく。


いつの間にか手足も再生され、十秒もする頃には元の形になっていた。


「そ、そんな…なんで……?」


「その疑問、お答えして差し上げますわ」


唖然とする望美達に、さも可笑しそうに巻宮は答える。


「これこそが《不滅のクレイ・ゴーレム》の能力、【無限再生】!!手札を捨てるだけで、破壊されてもすぐに再生する無敵の能力ですのよ!!」


勝ち誇ったような高笑いと共に、巻宮は手札のカードを1枚選んで捨てた。




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《不滅のクレイ・ゴーレム》

Lv5/攻撃500/防御200

タイプ:地,岩石,人形

●:破壊された場合、合計Lv5以上になるように手札を捨てる。

自身を捨て山から復活する。

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捨てたカード:《真理の塔》Lv5

巻宮の手札:4→3




「ワタクシのターンはこれで終了ですわ。さて、ワタクシの最強のしもべを相手にどこまで戦い続けられるか……、見ものですわね!!」


巻宮はそう言って笑いを堪えるかのように口元を押さえた。


このカードを余程信頼しているのだろう、その不敵な表情からは"負けるはずがない"という余裕が感じられた。


『………マスター』


「ううん。………大丈夫」


心配げな視線を向けるドロシーに首を振って答えると、望美はカードをドローして自分のターンを開始した。





----------------------《4ターン目》----------------------


  〈玉希 望美〉●   〈巻宮 雅美〉

  ドロシー Lv1    大地の魔女 Lv2


   Lp   1000     Lp  500

   魔力  0→4     魔力  0

   手札  0→1     手札  3


-----------------------------------------------------------------


---------------------《フィールド》-----------------------

〈玉希 望美〉 

ドロシー Lv1/100/100

《至高の魔術師 オズ》Lv7/攻700/防600

《疾風のシルフィード》Lv1/攻0/防100


〈巻宮 雅美〉

大地の魔女 Lv2/100/200

《不滅のクレイ・ゴーレム》Lv5/攻500/防400

《大地の結界》永続スペル

-------------------------------------------------------------------





「《オズ》でもう一度、《ゴーレム》を攻撃です!!」


宣言に応え、老練な魔術師が杖の先から再び七色の魔力放ち、巨大なゴーレムを破壊する。


が、当然の様に砕け散った破片が集まり再生を開始する。


「でも、これだとさっきと同じなんじゃ……」


晴香が呟く通り、瞬く間にゴーレムは再生し先程と同じ盤面に戻ってしまう。


……ただ一点、巻宮の手札が減ることを除いては。


再生を行うため、巻宮は手札を1枚選択し捨て札にする。


これにより彼女の残り手札は2枚、着実に彼女の手札は減っていた。


「どうです、巻宮さん。こうしていれば、いつかはあなたのゴーレムを倒すことが出来ますよ」


そう言って、望美は微笑する。


《オズ》の効果で防御カードを手札に加え、次のターン以降も攻撃に耐えて手札を削り続ける。


巻宮の手札全てが《ゴーレム》の再生に必要なLv5以上のカードとは限らない、いつかは再生が不可能になるはずなのだ。


ドローで手札が増えることを考えれば先は長いかもしれない、だが僅かな光明がそこにあった。


そう、思った。


「………え?」


望美は初め、それが理解できなかった。


再生したゴーレムの足元、その再生に使われた地面が抉れ、クレーターとなったそこに"それ"は現れていた。


………………宝箱??


"それ"はRPGなどでよく見る宝箱そのものだった。


何故そんなものが突然?、そう思う間もなくその宝箱はひとりでに口を開いた。


その中から現れたのは、――――1枚のカード。


宝箱が開き切ると同時に、そのカードは宙を舞い、巻宮の手札に加わる。


「たった今捨てた《財宝の発掘》の効果発動ですわ!!このカードが手札から捨てられた時、ワタクシはカードを1枚ドローできましてよ!!」


高笑いと共に、巻宮は続ける。


「ちなみに、ワタクシの手札にはもう1枚の《財宝の発掘》がありますわ。…………この意味がお分かりかしら?」


今のドローで巻宮の手札は3枚。


もう1枚、今と同じカードがあるということは実質………4枚!?


想定の倍の量だった。


望美の心に絶望感が広がっていく。


ただでさえギリギリの作戦、それが瓦解していくのを感じた。


「…………わたしは《オズ》の効果で魔力を2払い、Lv2の《攻防転換》をデッキから手札に加えます」


それで、望美のターンは終了だった。


「さすがはワタクシ!!さすがは最強のしもべの《ゴーレム》ちゃん!!その強さをしっかりと味わうといいですわ」


高笑いと共に巻宮はドローを行った。


「《ゴーレム》がいることで、《大地の結界》の維持に魔力を1払いますわ」


地面の結界が輝き、巻宮の魔力が吸い込まれていく。




----------------------《5ターン目》----------------------


  〈玉希 望美〉   〈巻宮 雅美〉●

  ドロシー Lv1    大地の魔女 Lv2


   Lp   1000    Lp  500

   魔力  4→2    魔力  0→3→2

   手札  1→2    手札  3→4


-----------------------------------------------------------------


---------------------《フィールド》-----------------------

〈玉希 望美〉 

ドロシー Lv1/100/100

《至高の魔術師 オズ》 Lv7/攻700/防600

《疾風のシルフィード》 Lv1/攻0/防100


〈巻宮 雅美〉

大地の魔女 Lv2/100/200

《不滅のクレイ・ゴーレム》Lv5/攻500/防400

《大地の結界》永続スペル

-------------------------------------------------------------------




「さあ、もう一度。ワタクシのしもべの力を味わいなさい!!」


巻宮は《大地の魔女》の効果を使って再び《ゴーレム》の攻撃力を上げると、再び攻撃を宣言する。


主の命令に応え、土くれの巨人はその腕を振り上げ老魔術師へ振り下ろした。




-------------------------------------------------------------------

《不滅のクレイ・ゴーレム》攻撃力500→700


        VS


《至高の魔術師 オズ》防御力600  

-------------------------------------------------------------------




このままでは当然、防御力の低い《オズ》が負ける。


望美は《オズ》を守るべく、先ほど手札に加えたカードを掴む。


「レベル2スペル《攻防転換》を詠唱です!!その効果により、《オズ》の攻守を入れ替えます」



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《攻防転換》

Lv2 付与スペル

●:付与ユニットが戦闘処理を行う場合、

攻撃力と防御力の値を逆にする。

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《至高の魔術師 オズ》

攻撃力700→600

防御力600→700

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《オズ》の身体を魔力のオーラがつつみ、《ゴーレム》の拳を止める。


「これで《オズ》の防御力は再び700!!これでまた反撃が………」


しかし、最後まで言い切る事は出来なかった。


《ゴーレム》の拳を止めていたオーラが、突如消えてしまったからだ。


止められていたはずの拳は勢いを取り戻して《オズ》を直撃し、断末魔と共に老練な魔術師はフィールドから姿を消す。


「あらあら、残念でしたわねぇ。ワタクシが《詠唱妨害》を発動していなければ、まだ耐えられましたのに」


巻宮の前に発動された《詠唱妨害》のカードが現れていた。




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《詠唱妨害》

Lv0 通常スペル

●:スペルが詠唱される場合に詠唱できる。

よりLvの高いスペル1枚を手札から捨てて、その詠唱を無効にする。

その後、自分は1枚ドローする。

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「コストにするのは先程も使いました《財宝の発掘》。《詠唱妨害》自体の効果も含めて2枚ドローさせてもらいますわよ」


望美のカードを妨害するのに2枚を使った巻宮だったが、2枚のドローを行ったため手札の差し引きはゼロ。


巻宮の手札は依然として4枚。


対する望美は頼りの《オズ》も失ってしまった。


状況は圧倒的に望美が不利。


ここから勝つ方法が、望美はどうしても浮かばなかった。


助けを求めるようにドロシーの方を向こうとして、やめた。


自分自身で決めたことなのだ、"自分の力で戦いたい"と。


たとえ、この勝負に負けてしまうとしても、最後まで自分の力でやるのだと。


ふぅー、と望美は大きく深呼吸をした。


視界に映るのは、上からこちらを見下ろす土くれの巨人、後方でそれを操る魔女、そして強力なしもべを従えて満足げな巻宮さん。


正直、勝てるビジョンなんか全く浮かばない。


でもそれは、前回も同じだった。


巨大な目玉と爪の化け物を前にして絶望していたあの時、傍らの魔法使いの少女は言った。




"無駄なんて誰が決めたの?"


"デッキの分だけ可能性は眠ってる"


"あきらめるのはドローをしてからでも遅くない"




(そうだ、わたしはまだ負けてない。負けるその瞬間まで、勝利を諦めない!!)


その思いと共に、望美はカードをドローした。




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