カードゲームのススメ！！【クロス・ユニバース】

2話ー４章 プライド

体育館裏、そこで望美たちと巻宮は対峙していた。

巻宮の腰には黒を基調とした豪華な装飾のホルダーが巻かれ、クロユニの起動画面が彼女の正面に既に浮かんでいる。

「さあ、貴女もさっさと用意なさい！！初心者がワタクシと戦えるなんて、なかなか無いんですわよ！！」

「あ、あの、その前に聞いておきたいのですが……。わたしは何で勝負を挑まれてるんでしょうか……？」

巻宮の剣幕に押されながら、望美は何とか聞きたかったことを聞く。

「それは、生意気だからよ！！」

一瞬の間もなく返されたその答えに、望美は困惑するしかなかった。

当然、身に覚えは全くなかった。

「なにそれ！？意味わからない！！」

晴香の抗議の声に、望美も完全に同意だった。

そもそも、このお嬢様と直接会話するのも今回が初めてなのだ。望美が彼女に生意気な態度をとるタイミングすらないはずだ。

が、巻宮は「何を今さら」とさらに怒りをあらわにした。

「知れたことですわ！！大した実力もないのに、偶然ブロンズランク上位になれたからって調子に乗ってることに決まってるでしょ！！」

そう言って彼女は地団太を踏んだ。

『マスター、調子乗ってたっけ……？』

ドロシーのその感想に、望美達は心の中で全面的に同意した。

そんな望美達を差し置いて、巻宮はさらに続ける。

「ゴールドランクのワタクシを差し置いて、チヤホヤと！！あまつさえ、"あの"新地様に直接指導していただくだなんて～」

漫画の様にハンカチを噛みそうな勢いで彼女は悔しがる。

そして、巻宮はさらに続けてこんなことを言い出した。

「ワタクシが勝ったあかつきには！！………ワ、ワタクシも"新地様"に直接指導していただけるように取り計らいなさい！！」

言うと同時に望美に向かってビシッと指をさしてきた。

「それ、わたしにどうこう出来る話じゃない気が……」

予想外の提案に、困惑するしかない望美であった。

が、晴香が「いいわよ」と事も無げに同意し、続けて提案する。

「その代わり、ノゾミンが勝ったらこっちの言うことを１つ聞く、くらいはするんでしょうね？」

「……いいでしょう！！この巻宮雅美が現実を思い知らせてさしあげますわ！！」

望美を差し置いて、どんどんと話が進められていく。

『理由はよくわからないけど、売られた勝負は買うしかないですよ、マスター！！』

「………そう、なのかな…？」

イマイチ釈然としなかったが、望美もホルダーを腰に巻きいてクロユニを起動する。

　――――――――　ニューロビジョン「接続完了」　――――――――

――――――――　〈クロス・ユニバース〉「起動開始」――――――――

視界にシステムメッセージが流れる。

同時に巻宮の隣に魔方陣が浮かび上がり、そこからパートナーとなるユニットが姿を現す。

現れたのは、魔法の杖を持った妖艶な魔女だ。

その姿に重なるように《大地の魔女 ナタリー》と名前が表示される。

望美の隣にはドロシーが降り立つ。

機械的な効果音と共にお互いのプレイヤーの前に５枚のカードが出現する。

-------------------《１ターン目》-------------------

　　〈玉希 望美〉　　 〈巻宮 雅美〉●

　 ドロシー Lv1　　　大地の魔女 Lv2

　　　Lp　　1000　　　　Lp　　1000

　　　魔力　0　 　　　　魔力　0→3

　　　手札　5　　　 　　手札　5

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「先行は勝負を提案したワタクシですわね！！」

そう言うと、巻宮は自分の手札に視線を走らせる。

「ワタクシはレベル１の永続スペル《大地の結界》を発動しますわ」

カードを1枚選択すると同時に、巻宮のパートナーの魔女を中心に地面に魔方陣が描かれる。

魔方陣の完成と共に、半透明の壁がその周囲に発生した。

「この結界の中ではタイプ地のユニットは全て防御力が100アップしますの。当然、《大地の魔女 ナタリー》もタイプ地ですわ！！」

勝ち誇ったようにそう言うと、高笑いと共に巻宮はターンの終了を宣言した。

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《大地の魔女 ナタリー》防御力100→200　

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-------------------《２ターン目》-------------------

　　〈玉希 望美〉●　 〈巻宮 雅美〉

　 ドロシー Lv1　　　大地の魔女 Lv2

　　　Lp　　1000　　　　Lp　　1000

　　　魔力　0→4　　　　魔力　2

　　　手札　5→6　　　　手札　4

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「わ、わたしのターン」

望美は宣言と共に目の前の何もない空間をつかみ、そこから１枚のカードを引き抜いた。

『マスター、まずは―――』

「待って！！」

手札を見たドロシーの言葉を望美は遮った。

予想外の反応に、ドロシーは戸惑う。

そんな彼女に、遮ってごめんね、とまず謝ってから望美は続けた。

「気持ちは嬉しいけど、出来るだけ自分の力だけでやりたいの。……………だめかな？」

そう言ってドロシーを見る望美。

頭にあったのは、先ほど晴香が話していた巻宮の噂だった。

親御さんの力で手に入れたランク、不当な高評価、そんな噂。

だけどそれは、"不思議な助言者"のおかげで勝利を手にしてランクを上げた自分も同じ、そう思えてならなかった。

だから、望美はそのアドバンテージを捨てることにした。

そう、決めた。

『………まあ、マスターがそうしたいなら、別にいいですけど…』

と言いつつ、ちょっと不満そうにむくれるドロシーであった。

ごめんね、ともう１度言ってから望美は自分の手札に向き直る。

そして、たった今ドローしたカードを見つめた。

そのカードは、《至高の魔術師 オズ》。

前回の時、勝利をもたらしてくれた超レアカード。

このカードを召喚出来れば、圧倒的に有利なことは間違いないはず、そう思った。

自分の手札を見つめ、考える。

思い出すのは前回の戦い、その逆転劇だ。

………………………よし！！

望美は自分の取るべき行動を決めると、１枚のカードを手に取った。

「わたしはまず、レベル０のスペル《疾風怒濤》を詠唱します。その効果でレベル１の《疾風のシルフィード》を召喚します」

宣言と同時に地面に魔方陣が現れ、巻き起こる風と共に小さな妖精がフィールドに現れる。

《疾風怒濤》の効果、それは１ターンに１度の召喚とは別にユニットを召喚できるというもの。

つまりはこのターン、望美はさらなるユニットの召喚が可能である。

そして、前回も活躍した《疾風のシルフィード》の効果は、捨て山のスペルカードの数だけ召喚に必要な魔力を減らせるというもの。

レベル１のユニットを召喚したことで、望美の魔力は残り３。

後３枚のスペルカードを捨て山に用意できれば、レベル７であるオズの召喚が可能となる。

なら、と望美は手札のスペルカードを１枚選ぶ。

「さらに、《魔法合成》 を詠唱します。このカードの効果によって、手札のスペルカード２枚を合成して新たなスペルを手札に加えます」

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《魔法合成》

Ｌｖ0　通常スペル

●：手札のスペルカード２枚を捨て札にして、

その合計Lvのスペル１枚をデッキから手札に加える。

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望美は手札からレベル０のスペル２枚を選ぶ。

当然、そのレベルの合計も０。

それらは捨て札として虚空に消え、デッキの中にあるレベル０のスペルカードが何枚か目の前に表示される。

その内の１枚、《ピンポイントバリア》 を選択して手札に加える。

（…………これで４枚！！）

望美は頭の中で確認し、手札に視線を走らせてカードを掴んだ。

「わたしは、《至高の魔術師 オズ》 を召喚します！！」

望美の宣言と共に、その魔力を全てを代償に、伝説の老魔術師が召喚される。

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〈玉希 望美〉魔力　3→0

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《至高の魔術師 オズ》

Ｌｖ7/攻撃力700/防御力600

タイプ：光,闇,地,水,炎,風,氷,雷,魔術師

●：１度だけ、任意の魔力を払って発動できる。

払った分と同じLvのスペル１枚をデッキから手札に加える。

●：１ターンに１度、自分のユニット１体を選ぶ。

自身の持つタイプ１種をターン終了時まで与える。

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「こ、これが、かの伝説のレアカード……《オズ》！！」

驚愕する巻宮のフィールドには、パートナーの《ナタリー》のみ。

ならば、当然――――

「《オズ》で《大地の魔女》を攻撃します！！…えっと、【究・極・呪・文】！？」

望美の攻撃宣言と共にオズの杖より魔力が放たれ、《大地の魔女》を襲った。

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《至高の魔術師 オズ》 攻撃力700　

　　　　　　　　ＶＳ

《大地の魔女 ナタリー》 防御力200

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〈巻宮 雅美〉　Lp 1000→500

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その強力な攻撃は、《大地の魔女》の防御を抜けて巻宮のライフを大幅に削る。

だが、煙が晴れた後に現れた巻宮の顔は涼しいものだった。

「これがアナタの実力？………超レアカードが泣いてますわよ」

「え！？」

巻宮の言葉に望美は困惑する。

これ以上ない程に上手くできた、そう思ったのに…？

後方で見ている晴香も「強がってるだけよ！！」と声を上げていた。

だが、横で静観してくれていたドロシーが口を開く。

『……今のはマスターのミスね。………………忘れてました？……同時攻撃のこと』

「同時……攻撃…」

指摘され、ようやく望美は気づく。

昨日、新地に教えてもらったばかりの事だった。

ドロシーとオズはともに"魔術師"。

同時攻撃を行って合計攻撃力800で《大地の魔女》に攻撃していれば、600のダメージを与えることが出来ていたのだ。

「これでは、あの佐神さんに勝ったのも偶然の様ですわね。………さあ、やることがないならターン終了の宣言をしなさい！！」

「………ターン……エンド」

望美は拳を握り、ターン終了の宣言をした。

「さあ、華麗なる反撃を見せてあげますわ！！ワタクシのターン！！」

宣言と共に、巻宮は優雅に手を天にかざす。

すると、その手にはいつのまにか1枚のドローカードが現れていた。

それをそっと宙に置き、続いて1枚のカードを掴む。

次の瞬間、対峙する2人の間の地面が割れる。

「な、な、な」

その割れ目から"それ"はゆっくりと姿を現した。

体育館と変らない程の大きさの"それ"を望美達は呆然と見上げる。

巻宮の召喚した"それ"、"土くれの巨人"は天に向かって咆哮をあげた。

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《不滅のクレイ・ゴーレム》

Ｌｖ5/攻撃力500/防御力300

タイプ：地,岩石,人形

●？？？

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