第115話 対人関係におけるチャンスは一度きりと考えて生きる

自動車の任意保険を変えた。


ずっと同じ保険を使っていたのだけれど、見直してみたのである。すると、同じ契約内容であるにもかかわらず、およそ以前の6割ほどの金額しか払わずに済むようになった。調べてみるものである。情報はあったのだ。しかし、活用しなかった。情報弱者とは、情報社会においては、情報が得られない者を指すのではなく、情報を活用する意志がない者を指す。


それは、それ。


どうして、保険を変えたのかと言うと、昨年、車の調子が悪くなったときに、保険のサービスを初めて使ってみたわけだが、対応してくれた担当者の感じがかなり悪くて、使い続ける気が失せたのだった。そこで、別のところがないか探してみて、変更に至ったのである。


思うのだけれど、もしも、その保険を利用したとき、担当者の感じが良く対応が早かったら、おそらくは、変更しようとは思わなかっただろう。「今年もお願いします」となったに違いない。仮に、保険について調べてみて他社の方が安かったとしても、いざというとき助かったわけだからということで、そのまま使い続けていたと思う。


初めて利用したときに対応が悪かった、だから、契約を打ち切った。一度対応が悪かっただけで、次のチャンスを与えないというのは、随分と狭量だと思われるかもしれないけれど、わたしには、彼らに対して、次回のチャンスを与える義理などないわけである。そうして、世の中の関係性というのは、家族などのごく一部の例外を除いて、みなそのようなものではないだろうか。


人と人の関係性において、一度だけその関係性を強めるようなチャンスが訪れる。そのチャンスを活用できれば、関係性は強まるが、そのチャンスを活用できなければ、関係性は切れる。今日のように、相手をいくらでも選択できる時代であればなおさらだろう。


これは人間関係というものをいかにも冷たくドライにとらえているものであるかのように思われるかもしれないが、決して悪いことではないと思う。人と人が関係を強めるチャンスが一度だけと考えておけば、そうそう迂闊なことはできなくなる道理であり、一挙手一投足に気を遣って、人と対峙するようになる。それは真剣勝負の時にも似た爽やかな緊張を、対人関係の中に生むことだろう。

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