第107話 解決できる問題は、所詮、大した問題ではない

問題解決能力というものがある。言葉通り、問題に当たってそれを解決する能力のことである。人は生きていくに当たって色々な問題にぶち当たる。問題ばかりの世の中である。そんな中で、問題を解決する能力があれば重宝する。厄介事を片付けては、スムーズにストレスなく生きていくことができるわけだ。この問題解決能力を磨くために、各種の本が出版されていたり、セミナーが開かれたりしているわけで、それはそれで結構なことだとは思うけれど、がしかし、解決できるような問題というのは、所詮は大した問題ではないということを覚えておいた方がいい。解決しなくても、まあ、それはそれで、おそらくはどうにかなったのである。


解決できる問題は、解決できるという点において、実は大したものではないのである。その大したものではない問題を解決するために、一生懸命に、お金や時間やエネルギーを注ぎ込むというのは、これは、まあ、好き好きの話だから、お好きな人はどうぞということになるけれど、やめたほうがいいのではないか、とわたしなんかは思う。そもそもが、問題解決能力を磨くということは、問題ではないことまで問題だとみなしてしまうことにつながるような気がしてならない。打った刀を試し切りに使うようなもんである。まあ、被害者は自分自身だから、実質的な被害はないかもしれないけれど、逆に言えば、それこそが一番の害であるとも言える。


解決できるかどうかなんてやってみないと分からないじゃないかという異論もあるだろうけれど、そもそもがやってみようと思える時点で、すでに解決の糸口が見えているわけだ。まったく不可能なことについては、人はそれをやってみることの対象にすらできない。


解決できる問題、というか、そもそもが問題に立ち向かうのはそこそこにしておいた方がいい。もちろん、問題に立ち向かうことが好きな人は、それは好きでやっているわけだから別問題であり、無問題(モウマンタイ)、No problem.である。そういうわけではない人は、問題に立ち向かうのはそこそこにしておいて、自分の楽しみや好きなことに時間やエネルギーを注いだ方がいいのではないか。

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