第72話 あなたは何者なのか、語れない部分を探れ

あなたはどういう人ですかと問われたら、どのように答えるだろうか。


簡単なのは、あなたが持っている肩書きを答えることだろう。会社員、経営者、作家、エッセイスト、哲学者、絵描き、ミュージシャン、高校生、大学生。次に簡単なのは、性と年齢だろうか。男性、女性、LGBT、20代、アラサー、アラフォー。その次は、自分の嗜好や生き様といったところか。本が好き、サッカーが趣味、人を幸せにしたい、うつを患っている、文章を書いている、などなど。


会社員で、男性で、アラフォーで、文章を書いている。ま、こう書けば、どういう人ですかという問いの、一応の回答になる。さて、しかし――


そんな人は掃いて捨てるほどいる。


上のような自己紹介をする人は、自分が掃いて捨てられるような人間であるということを宣言しているに等しい。それは良いことだろうか。「それでいい、構わない、わたしはオンリーワンなんかじゃなくて、ワンオブゼムだ!」とはっきりと断言できるのであれば、それはそれで立派である。


しかし、もしもそうでないのだとしたら、オンリーワンを目指すなら、肩書きなり年齢なり嗜好なりで、安易に自分を語ってはならない。それらによって自分を語ることは、自分という広大な領域を、限りなく狭めてしまうことにつながる。


自分の中から、肩書きやら何やら、語ることができる部分を一つずつ引いていってみよう。一つずつ引いていって最後に残ったそれが、あなたのオンリーワンの部分である。

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