第33話 後悔も反省もしない日々
頭痛がする。
昨晩飲み過ぎたのである。
遠い昔、子どもだった頃、アクション映画のタフガイが二日酔いの朝、ボサボサの頭をかきながら、相方役の女性に対して、
「ううっ、アスピリンをくれ……」
と言っているのを、カッコいいなあ、と憧れていたものだけれど、いざ自分がそうなってみると、憧れるべきものなど何もないことが分かった。ただ、アホなだけである。むろん、わたしが。
とはいえ、「ああ、飲み過ぎちゃったなあ……」という後悔とか、「次からは飲み過ぎないようにしよう!」という反省はしない。
「飲まなければよかった」なんていうのは、飲むときには無い視点である。無かったもののことを考えても仕方がない。
その「無かった」ということが大事な点で、後悔にしろ、反省にしろ、それは、「現にそのことが起こっているときにはそんなことは考えられなかった」ということをすっぽりと忘れてしまうからこそ、できることなのではないか。
ある出来事は、一回きりしか起こらなかったことである。それはその通り起きただけで、その一回きりというところを味わうことが大切なのではないだろうか。後悔や反省は、それを忘れて、もう一度その出来事を味わおうとするものである。食べ終えてしまったケーキの皿を、残ったクリームを求めて舐めるようなものだ、と言えば、下品に過ぎるだろうか。
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