第16話 魂の下の平等

人間みな平等の現代社会において、しかし、わたしは、人間の価値が同じだなどということは全く認めない。世の中には、神のごとく美しい人もいれば、たとえようもないほど醜い人もいる。これは端的な事実ではないか。付き合う人を選ぶときに、誰しも実感できることだ。誰も、美しい人とはお付き合いしたいが、醜い人とはできるだけお付き合いしたくないものである。


その一方で、こう秋空の下をそぞろ歩きながら、道行く人を見るでもなく見ていると、みんなおんなじなのではないか、という気もしてくるのである。老若男女、貴賤職業、社会的成功の有無、障がいの有る無し、国籍文化民族、思想信条性格など、それらの属性の別なく、みな等しいという気もする。何において等しいのかと言えば、この世界に存在したという点においてである。この点においては、実は、人間であるかどうかということも問題ではなく、人間であれ、動物であれ、植物であれ、虫であれ、それはそれぞれがたまたまそのような形であったのではないかというような気にもなる。


では、「何が」そのような形だったのかというと、「魂」ということになるだろう。そう、魂。わたしはそんなものは見たことも聞いたこともないけれど、どうもそう言う他無いような気もする。万物に霊魂が宿るというアニミズムは、わたしにとっては、特別な信仰の対象ではなく、端的な事実であるように思われてならない。


とすると、人間は差別されるということと、人間(だけではなく、動植物も含めて)はみな同じだという矛盾する考え方が、同時にわたしの中に存在することになるのだけれど、それはわたしのせいではない。存在するにも関わらず無を認識できないという存在構造が、そもそも矛盾しているのであるから、わたし一個の考えが矛盾していても、やむをえない話だろう。

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