17% LAST研修
というわけで, 栗花落さんと京さんと僕でダンジョンに参じた. 今回は洞窟のような場所に降りた.
部署内の先輩後輩同士で顔を馴染ませる目的もあるが, 僕個人的な目標は, 能力を自分に定着させることである. 先日, 僕の徳はまるで僕自身を拒絶するかの如く暴走してしまった. 原因は何となく分かっている. 今まで殺していた己の中の野性や粗暴な面を突如露出させようとしていることが, 許されないのだろう.
「そういえば、先輩の徳ってどんなのですか?」
『私のは音を通じて敵の位置や情報を獲得する感じの能力だよ。で、栗花落くんのは少し変わってるんだけど…』
『植物を……操れる。』
栗花落さんがぼそっと囁く. 植物全般何でも操れるらしいが操り方に限度があるらしい. そして京さんは索敵向けの徳. なるほど, 研究開発部はサポクラらしい非戦闘要員集団ということが分かった.
『信楽くんはあれだね、サポクラ志向なのにかなり戦闘チックな徳だよね。』
自分でもそう思う. ピュアクラのように謎解明のためでなければデバクラのように戦闘目的でもない. それでいて心の奥底で野性の塊が棲んでいる. そんな僕だからこそのこの徳なのだろう.
自己紹介のような会話を始めて間もない頃, 目の前の壁が凄まじい爆音とともに破砕された.
『……!京!信楽!戦闘態勢に入れ!バグだ!』
先程までとは別人かのような叫び声が洞窟内で轟く.
『前方に2体、ほかのバグの気配は無いよ。』
京さんの情報通り砂埃が落ち着くと目の前に得体の知れないシルエットが一つ現れた.
僕は初めて見るバグへの対応が遅れる. なぜなら, もっと小さいものだと勘違いしていたからだ.
猪のようなシルエットの方のバグがおよそ3mと, そのバグに乗っている騎士のようなシルエットをしているバグがおよそ2mほどありそうだ. 猪バグに跨ってる騎士バグはこちらへ突進を始めた.
僕が護華を咲かせようとする前に既に, 御二方は先程のスーツとは別の姿, つまりもう咲いていた.
『京、相手さんまとめて一体で駆除されやすいようにしてやがるよ。』
『任せたわよ、栗花落くん。』
トイレから出てきた時の人間とはそれはもう別物で, 僕は怖いぐらいの殺気を浴びた. このバグを軽んじる訳でも無いが, 栗花落さんが負ける気がしなかった.
次の瞬間, 栗花落さんの前の小さな雑草がバグを超える高さの檻となり, そこに猛突進したバグは止まった. そして檻からは無数の棘が生え, バグを飲み込んだ.
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