16% 研究所

 あらゆるデスクの至る所に小難しそうな書類たちが雑多に撒かれている. 研究開発部に配属になった僕の職場は掃除をする隙もないらしい. ただし, 部長がこの世のものは思えない程の美人なので僕はウキウキした.


『どうも。話は聞いてるよ。君一人だけなんだってね。でもまあサポクラ自体珍しいから歓迎するよ。私はかなどめ きらら。これからあなたの先輩になるから、よろしくね。』


 先程時雨部長から紹介を授かった京さん. 時雨部長程ではないにしても美しい顔立ちと漂う清潔感がとても好印象の女性だ. 図書館にいそうな清楚系タイプである. これからお世話になる先輩と上司が二人とも美人とはかなり恵まれているのではないだろうか.


『あとね。君の先輩の栗花落つゆりくんて人がいるんだけど今ちょっとトイレ行ってるからまた後で紹介するね。ちなみにこの部署のメンツはこれで以上。』


 ということは, 僕を合わせて4人ということか. かなり少ない感じもするがそんなものなのだろうか. 仕事量が恐ろしくハードな気がする.


『もう察してるとは思うけどここは立ち上がったばかり会社だから新人でも無慈悲に仕事が振られるから頑張って付いてきてね。』


 微笑とは今のこの人の表情を言うのだろう. だが僕は仕事量がかさむことは全くいとわない. バリバリ稼いでいこう. 取り敢えず僕は元気に返事をした.


『あ!ちょうど出てきたよ。ほらあれが君の先輩の栗花落つゆりくん。』


 トイレから脱出してきたように今にも倒れそうな貧相な男性がそこにいた. 僕は恒例の初対面挨拶をかます.


『……どうも…。これからよろしくね……。僕は栗花落つゆり 慶佐けいすけと言います。』


 栗花落さんはそのまま倒れるように自らのデスクに不時着した. 全員集合したところで時雨部長が立ちあがり, 号令をかけるように僕らに話しかけた.


『挨拶は済ませたようだな。新人の信楽くん、これからよろしく頼む。栗花落と京はよく世話をするように。』


 凛々しく発破をかけた部長に合図するように先輩二人は元気よく返事をする. 尊敬の念が見て取れる. 僕はこれから身を置く会社として少し安心した.


『早速部長命令だ。今からダンジョン申請して君たち3人で明日はパトロールに向かえ。最後の肩慣らし研修だな。』


 また!?いや, これから当たり前になるんだ. これも当然だな. と思いきや, 先輩御二方はげんなりしていた. 理由を聞いてみると,


『信楽くん…私達はね…研究者だから戦闘は不得意なのよ…』


『…信楽、あとは頼んだ………』



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